月桂冠総合研究所
研究内容
美と健康の研究

腸活するなら、「酒粕タイプ」甘酒?

甘酒に含まれる成分である、酒粕と米麹を比較したところ、酒粕にはレジスタントプロテインだけでなく、“レジスタントスターチ”と呼ばれる難消化性デンプンが多く含まれることが分かりました。この酒粕由来レジスタントスターチには、ビフィズス菌を増殖させる傾向があることが分かりました。腸内環境を気にされる方には、酒粕タイプの甘酒や酒粕と同様の成分を含むにごり酒がおすすめです。

甘酒は、「米麹タイプ」と、酒粕を主として含む「酒粕タイプ」のものに大別されます。米麹も酒粕も、ともに日本酒醸造でできる発酵食品ですが、どちらが腸内環境にとって良いのかといった研究はなされてきませんでした。

(1)酒粕と米麹の成分を比較

酒造用に精米した白米、米麹と酒粕の成分分析を行ったところ、白米や米麹と比較して酒粕にはレジスタントスターチが多く、米麹の約10倍量含まれていること分かりました(図1)。

図1 酒粕と米麹のレジスタントスターチ含有量
図1 酒粕と米麹のレジスタントスターチ含有量

また、酒粕にはアスパラギン酸、アルギニン、アラニンなどのアミノ酸が多く含まれていることも明らかとなりました。特にアルギニンには血流改善効果が知られており、酒粕を摂取することで体が温まる効果が得られる一因となっていることが考えられました。

(2)酒粕由来のレジスタントスターチの乳酸菌増殖促進効果

ビフィズス菌は腸内で乳酸や酢酸を生産してpHを下げ、有害菌が増殖しにくい環境を作ることが知られています。そこで、腸内環境に近い模擬的な培地に、酒粕由来のレジスタントスターチを加え、ビフィズス菌(Bifidobacterium infantisBifidobacterium longum)の培養を行い、pHの変化と乳酸および酢酸の生産量をそれぞれ測定しました。
米麹と比較して酒粕のレジスタントスターチを添加した場合は、pHが低下し、乳酸および酢酸の生産量が高くなる傾向があることがわかりました。

このように、酒粕には米や米麹よりも多くのレジスタントスターチが含まれ、よりビフィズス菌を増殖させる傾向があったことから、酒粕甘酒や酒粕を含むにごり酒を摂取することにより、腸内環境が改善され、結果的に美肌などの改善に繋がる可能性があります。

発表

  • 「酒粕甘酒の機能性成分の探索 ~アミノ酸とレジスタントスターチの機能性~」、日本農芸化学会大会(2019)
    ○冨田麻理絵、根来宏明、堤浩子、秦洋二

(掲載日:2019年8月8日)