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月桂冠総合研究所
研究内容
お酒の研究

酒粕レジスタントプロテインの正体とは?
~血中コレステロール低減に寄与、にごり酒でも摂取可能~

脂質異常症は、わが国の死因の第2位である虚血性心疾患の危険因子であり、特に総コレステロール及びLDLコレステロールの高値は日米欧いずれの診療ガイドラインでも、脂質異常症の各検査項目の中で最も重要な指標とされています。平成22年度の厚生労働省「国民健康・栄養調査」(40~79歳、服薬者含む)では、LDLコレステロール160mg/dl以上の者の割合が男性8.3%、女性11.7%とされています。健康日本21(第二次)では、平成34年度にむけて、高コレステロール血症者の割合に関する目標値を平成22年度比で25%減と設定しています。

胆汁酸は肝細胞でコレステロールから生成され、腸管で脂質をミセル化して消化・吸収を助ける成分です。胆汁酸がタンパク質や食物繊維に吸着され、体外に排出されると、新たな胆汁酸の生成が促進され、結果として体内のコレステロール濃度が低下します。
芦田らは、酒粕が胆汁酸吸着能を有し、酒粕の経口摂取がin vivoで血中コレステロールを低減することを報告しましたが1)、その有効成分の同定には至りませんでした。本研究では、酒粕に含まれる胆汁酸吸着能の有効成分を特定し、有効成分を摂取する手段の一つとして「にごり酒」に着目し、その胆汁酸吸着能を評価しました。

「にごり酒」の胆汁酸吸着機能を評価

[1]食物繊維の働きをもつ酒粕レジスタントプロテイン

はじめに、酒粕の胆汁酸吸着能を他の食品と比較しました。その結果、酒粕は他の食品と比較して、胆汁酸吸着能に優れた食品であることが分かりました(図1)。

図1 酒粕とその他食品の胆汁酸吸着能比較
図1 酒粕とその他食品の胆汁酸吸着能比較

次に、酒粕の胆汁酸吸着能を示す有効成分の特定を試みました。酒粕をプロテアーゼやセルラーゼ等の酵素剤で消化試験した結果、その不溶性残渣の胆汁酸吸着能に変化はありませんでした。また、酒粕から溶媒分画により可溶性タンパク質を除去しても、その不溶性残渣の胆汁酸吸着能に変化はありませんでした。これらの結果から、有効成分は難消化性かつ不溶性のタンパク質(レジスタントプロテイン)と推察しました。SDS-PAGEの結果、酒粕を酵素により人工消化処理した不溶性残渣で、分子量10 kDaから15 kDaの範囲に、3本のタンパク質バンドが確認できました(図2)。

図2 酒粕レジスタントプロテインのSDS-PAGE
図2 酒粕レジスタントプロテインのSDS-PAGE

3本の各タンパク質バンドのN末端アミノ酸配列を決定し、NCBIのタンパク質データベースを検索した結果、いずれも米由来のプロラミンというタンパク質でした(表1)。酒粕の胆汁酸吸着能を示す有効成分は、分子量10 kDaから15 kDaの米タンパク質であることが明らかとなりました。

表1 酒粕レジスタントプロテインのN末端アミノ酸配列

バンド 分子量
(kDa)
N末端アミノ酸
配列
相同性のあった
アミノ酸配列
タンパク質の形態
14.97 RFDAL(62%)
RFDPL(38%)
13 kDa prolamin precursor Mature protein
B 14.37 RFDAL(65%)
RFDPL(35%)
13 kDa prolamin precursor Some residues of the C-terminus were deleted
C 8.32 IXTMQYFP 10 kDa prolamin precursor Mature protein

※AとBは、2種類のアミノ酸配列の混合バンドであった

酒粕の胆汁酸吸着能を示す有効成分は、米由来のプロラミンと相同性があった

月桂冠では、酒粕レジスタントプロテインについて、物質特許を取得しました(日本国特許第4673357号、登録日:平成23年1月28日(2011.1.28)、発明の名称:コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質、脂質代謝改善剤および食品素材)2)

[2]にごり酒で酒粕レジスタントプロテインを摂取

次に、効率よく酒粕レジスタントプロテインを摂取できる飲料として、にごり酒の評価を行いました。市販されている4種類のにごり酒について、レジスタントプロテインと食物繊維含有量について調べました。その結果、市販にごり酒には、レジスタントプロテインと食物繊維が含まれていることが明らかとなりました(図3)。

図3 にごり酒のレジスタントプロテインと食物繊維含有量
図3 にごり酒のレジスタントプロテインと食物繊維含有量

また、にごり酒の固形分の胆汁酸吸着量は、固形分のレジスタントプロテイン、食物繊維およびそれらの和と強い相関を示しました(図4)。したがって、にごり酒において、レジスタントプロテインと食物繊維の両方が胆汁酸吸着能に寄与していると考えられました。

図4 にごり酒の固形分のレジスタントプロテインと食物繊維の胆汁酸吸着能への寄与
図4 にごり酒の固形分のレジスタントプロテインと食物繊維の胆汁酸吸着能への寄与

にごり酒の固形分を人工消化試験した不溶性残渣にも胆汁酸吸着能が残存し、SDS-PAGEで酒粕レジスタントプロテインとして確認された同じサイズの3本のタンパク質バンドが確認できました(図5)。

図5 にごり酒のレジスタントプロテイン
図5 にごり酒のレジスタントプロテイン

以上の結果より、にごり酒の飲用によって、酒粕の胆汁酸吸着能を示す有効成分を摂取可能であることが示唆されました。これらの成果は月桂冠(榊原ら)により、2013年度日本農芸化学会大会で発表しました3)

参考文献

  • 1) 芦田ら, 農化, 71, 137-143 (1997)
  • 2) 日本国特許第4673357号、登録日:平成23年1月28日(2011.1.28)、発明の名称:コメ由来またはコメ原料醸造食品由来のタンパク質、脂質代謝改善剤および食品素材
  • 3) 日本農芸化学会2013年度大会 要旨集
    「にごり酒の胆汁酸吸着能とその有効成分の同定」
    ○榊原舞子、小高敦史、鈴木佐知子、芦田優子、松村憲吾、石田博樹、秦洋二
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