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月桂冠ニュース (200003_07)

2000年3月31日

有用タンパク質を高純度で大量に生産する技術を開発
月桂冠の麹菌研究成果、平成12年度日本農芸化学会大会で4月2日発表

月桂冠総合研究所は、酒造りに使用する微生物・黄麹菌(きこうじきん、学名Aspergillus oryzae=アスペルギルス・オリゼー)についての研究成果3題を、「平成12年度日本農芸化学会大会」(3月31日から「東京ビッグサイト」東京都江東区で開催)で発表、液体培養によるタンパク質生産技術について今回はじめて公開します。
麹菌の遺伝子レベルの解析により、本来固体培養でしか生産できなかったグルコアミラーゼを液体培養で高純度・大量に生産することを可能にしました。さらに、このタンパク質生産技術は、幅広く応用が可能で、醸造用の酵素だけでなく、工業用酵素や医薬品など商品価値の高いタンパク質の生産・開発に貢献するものと考えています。

研究の概要
今回開発した、麹菌を用いて有用なタンパク質を大量に生産する技術は、(1)非常に高い生産量と(2)高い生産物純度の両方を同時に達成できる画期的なものです。

(1)非常に高い生産量
清酒醸造において重要な酵素であるグルコアミラーゼは、米麹(こめこうじ)などの固体培養でしか生産することができませんでしたが、今回開発した技術を用いることにより、液体の培地で麹菌を増やす「液体培養」でも多量(1リットルの培養液中に最大約3.3g分泌)に生産することができます。麹菌の液体培養によるタンパク質生産については多くの報告がありますが、これらに比べても今回の生産量は非常に高いものです。

(2)高い生産物純度
生産されるタンパク質の純度が高く、グルコアミラーゼ生産の場合は、培地中に分泌されるのは目的の酵素だけで、他の夾雑酵素はほとんど含まれません(純度99%以上)。

このタンパク質生産技術のポイントは麹菌のチロシナーゼ遺伝子(melO)を用いることです。チロシナーゼ遺伝子は米麹の褐変現象に関与するもので、東北大学名誉教授の一島英治氏が単離されました。月桂冠では、この遺伝子に着目して研究を進めました。その結果、この遺伝子が液体培養で強く働いていることを明らかにし、遺伝子のプロモーター部分(遺伝子の中で、その発現を調節する部分)を利用することにより、液体培養でタンパク質を高純度で多量に生産させる技術に発展させました。

これまでの研究の背景
月桂冠総合研究所では、清酒の麹菌を遺伝子レベルで解析し、多くの機能を解明してきました。たとえば醸造工程の中で一番大切な麹造りを担う麹菌のグルコアミラーゼの遺伝子に関して、すでに見つかっていた遺伝子Aに加え、遺伝子Bが存在することを世界ではじめて発見しました。
また、この遺伝子Bが清酒麹のような固体培養で大量に発現し、液体培養では全く働かないことを遺伝子レベルで明らかにしました。さらに遺伝子Bは、「麹造り」のような環境(低水分、高温度)にしないと機能しないことも発見し、伝統的な「麹造り」が酒造りにとって適した方法であることを科学的に証明することにも成功しています。

平成12年度日本農芸化学会大会
発表はいずれも4月2日で、ポスターセッション(ポスターを掲示し来場者に説明)3題、 ワークショップ(OHPを使い講義形式で発表)1題です。

 

学会名 平成12年度日本農芸化学会大会
会場 東京ビッグサイト(東京都江東区有朋2-21-1)
開催期間 2000年3月31日から4月2日まで

※社団法人 日本農芸化学会
〒113-0032 東京都文京区弥生2丁目4番16号 学会センタービル内
TEL:03-3811-8789


月桂冠の発表演題
◆ポスターセッション(4月2日・終日)
A. oryzaeのチロシナーゼ遺伝子(melO)プロモーターによるタンパク質生産(1)
melOプロモーターの発現様式の解析>

○石田博樹、秦 洋二、川戸章嗣、安部康久、今安 聰、一島英治*(月桂冠・総研、*創価大工・生物工学)

A. oryzaeのチロシナーゼ遺伝子(melO)プロモーターによるタンパク質生産(2)
<液体培養によるグルコアミラーゼの高生産>

○松村憲吾、石田博樹、秦 洋二、川戸章嗣、安部康久、今安 聰、一島英治*(月桂冠・総研、*創価大工・生物工学)

A. oryzaeのチロシナーゼ遺伝子(melO)プロモーターによるタンパク質生産(3)
<グルコアミラーゼ生産の効率化>

○東田克也、石田博樹、秦 洋二、水津哲義、川戸章嗣、安部康久、今安 聰(月桂冠・総研)

◆ワークショップ(4月2日・AM11:48~PM12:00)
A. oryzaeのチロシナーゼ遺伝子(melO)プロモーターによるタンパク質生産(1)
melOプロモーターの発現様式の解析>

○石田博樹、松村憲吾、東田克也、秦 洋二、水津哲義、川戸章嗣、安部康久、今安 聰、一島英治*(月桂冠・総研、*創価大工・生物工学)


月桂冠総合研究所
創設は1909(明治42)年。月桂冠の11代当主・大倉恒吉は、それまで杜氏まかせだった酒造技術に科学的管理を導入する必要性を痛感し、大学卒の技術者2人を採用し、「大倉酒造研究所」を設置しました。以来、酒造り全般にわたる基礎研究を行うと共に、新規微生物の開発から醸造技術、製品開発まで幅広い技術開発や商品開発を行ってきました。 1990(平成2年)、名称を「月桂冠総合研究所」としました。
所長:川戸章嗣、住所:〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町24番地、TEL:075-623-2130。

麹(こうじ):
麹菌(糸状菌の一種)を穀類に生やし、酵素を分泌させたもので、日本酒、焼酎、しょうゆ、みそなど発酵食品の醸造に使われます。清酒造りでは、蒸した米に黄麹菌を繁殖させた米麹を使います。

グルコアミラーゼ:
米のデンプンを分解して、酵母のアルコール発酵に必要なブドウ糖をつくる重要な酵素です。特に吟醸造りに用いる麹では、グルコアミラーゼをたくさん生産するものが求められています。

酵素:
生き物の体内でつくられるタンパク質の一種で、物質を分解したり、くっつけたりする仲立ちをするものです。

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