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月桂冠ニュース(201003_06) 2010年3月18日

清酒麹菌を活用、抗HIVペプチドをバイオ合成

生産効率向上の技術を日本農芸化学会で発表
 

月桂冠は共同研究により、清酒麹菌(こうじきん)を活用して抗エイズウイルス(HIV)作用のあるペプチドのバイオ合成に成功、生産効率向上など実用化に向けた研究の成果を「日本農芸化学会2010年度大会」で3月28日に発表します。微生物の活用により、化学合成に比べ低コストで生産を可能にする技術です。
科学技術振興機構(JST)の平成18年度育成研究課題「ペプチド性新興・再興ウイルス膜融合阻害剤の大量生産法の確立と創薬展開」により、JST研究成果活用プラザ京都(松波弘之館長)、京都大学大学院薬学研究科(藤井信孝教授)、京都大学ウイルス研究所ウイルス制御研究領域(松岡雅雄教授)と月桂冠総合研究所の4機関が共同研究を行った成果です。

麹菌(Aspergillus oryzae)は、日本酒・醤油・味噌などの醸造に長年用いられている微生物です。月桂冠では麹菌を用いて有用なタンパク質やペプチドを生産させる技術を開発してきました。本研究では、京都大学大学院薬学研究科がHIVの増殖を効率的に阻害するペプチドの分子配列を人工的にデザインしました。月桂冠では、このペプチドに対応する遺伝子を麹菌に組み込み、抗HIV作用のあるペプチドをバイオ合成し、その生産効率を向上させる研究を行いました。京都大学ウイルス研究所とJSTでは、抗HIV活性を確かめる手法を確立し効果の検証を可能にしました。
今回の学会では、ペプチドの生産効率を向上させる技術について発表します。目的とするペプチドに対応する遺伝子に、麹菌由来のエンドグルカナーゼと呼ばれる酵素の遺伝子を付加することで、菌体内で作られたペプチドを酵素と共に菌体外へ分泌させるようにしました。これに加え、遺伝子に目印となるタグを付けることで、ペプチドを容易に回収できます。これらの工夫により、目的とするペプチドを培養液1リットル当たり10ミリグラムまで生産することができました。

同様のペプチドを化学合成する場合、生産の過程で発生する不純物の除去などで工程が複雑になり、生成する量も限られます。バイオ合成の場合は微生物により物質を作らせることから、化学合成の10分の1から100分の1の低コストで生産が可能です。この研究成果を実用化できれば、新たな治療薬として、HIV感染が深刻な国々に低コストで抗HIV薬剤を供給することも期待できます。
さらに、バイオ合成に成功したペプチドは、既存のペプチド薬剤に対して耐性を持つようになったHIVにも作用します。また、HIVと類似のメカニズムで、ヒトや動物に疾病を引き起こす新興ウイルスに対しても、ペプチド配列のデザインを変えることで本技術を応用できます。
本研究の成果を技術移転し実用に供すべく、現在、JSTを中心に連携先を検討しています。

学会での発表

学会名 「日本農芸化学会」2010年度大会
発表日時 2010年度3月28日(日)11:00~
会場 国立大学法人東京大学 駒場キャンパス (東京都目黒区駒場3-8-1)、AT会場
演題 「麹菌A. oryzaeによる人工デザイン抗HIVペプチドの効率的分泌発現」
研究・発表者 ○坂東 弘樹、堤 浩子、梶原 一美(1)、大石 真也(2)、松岡 雅雄(3)、藤井 信孝(2)、秦 洋二
※月桂冠総研、(1)JST、(2)京大院薬・医薬創成、(3)京大 ・ウイルス研、○印は演者

月桂冠総合研究所について

1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般にわたる基礎研究を行うと共に、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで幅広い研究に取り組んでいます。
(所長=秦 洋二、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)

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