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月桂冠ニュース(201009_01) 2010年9月7日

清酒麹菌を活用
ガン細胞を死滅へ誘導する糖を海藻から生産

 

月桂冠総合研究所は、清酒麹菌(こうじきん)使って、海藻由来の多糖類から、ガン細胞を死滅へと誘導するアポトーシス効果を持った「キシロオリゴ糖」を効率的に生産できる新技術を開発しました。本研究は、文部科学省が運用する平成20年度・科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成 ― バイオプロダクション次世代農工連携拠点」に関わる研究で、神戸大学(大学院工学研究科・近藤昭彦教授)と共同で実施したものです。この研究成果を「日本応用糖質科学会 平成22年度大会(第59回)」(静岡市にて開催)で9月15日に発表します。また「第62回日本生物工学会大会」(10月27日から29日、宮崎市にて開催)でも発表の予定です。

「キシロオリゴ糖」は、多糖類の「キシラン」を分解して生産されます。「キシラン」は自然界に豊富に存在しており、構成する分子の結合部位の違いからは、「β-1,3-」や「β-1,4-」の符号をつけて呼ばれます。海ブドウ(クビレズタ)や海苔など海藻のみに含まれる「β-1,3-キシラン」に、酵素「β-1,3-キシラナーゼ」を作用させれば、「β-1,3-キシロオリゴ糖」が生産できます。この「β-1,3-キシロオリゴ糖」は、ガン細胞へのアポトーシス誘導効果のある有用な物質です。「キシラン」の中では、草や木に多く含まれる「β-1,4-キシラン」に作用する酵素「β-1,4-キシラナーゼ」を生産させる例が多く報告されています。一方、酵素「β-1,3-キシラナーゼ」を微生物に分泌させ、有用な「β-1,3-キシロオリゴ糖」を生産させることについての報告は少数です。原核生物を培養して「β-1,3-キシラナーゼ」の生産が試みられましたが、その生産量は少量でした。そのため現在、産業面で生産・利用されていません。

本研究は、超好熱菌から見出された「β-1,3-キシラナーゼ」を作る機能を付与した麹菌を育種することで、同酵素を大量に生産させる新技術の開発に成功したものです。麹菌はもともと酵素などのタンパク質を分泌する能力が高く、酒造りの工程では、米のデンプンやタンパク質を分解する酵素を多量に生産します。そこで、この性質を利用すると共に、目的のタンパク質を量産できる機能を付与した麹菌を用いました。この方法によって麹菌に生産させた「β-1,3-キシラナーゼ」は、「β-1,3-キシラン」にのみ作用し、キシロースが2から3個程度結合する「β-1,3-キシロオリゴ糖」を生成したことから、酵素活性を有することが明らかになりました。この酵素の反応に適した条件として、至適水素イオン濃度(pH)は6.5付近(pH 3から10で安定)、至適反応温度は85度付近で、10分間の熱処理でも85度まで安定性を示しました。このような性質から、「β-1,3-キシラナーゼ」は安定して取り扱うことができる酵素であり、産業面での生産・供給にも有用であることが示唆されました。

海藻由来の多糖類を分解して得られる「キシロオリゴ糖」は、抗ガンの生理活性を持つことが報告されています。科学雑誌『Nature』(Vol.464、908-912ページ、2010年)では、日本人の大腸には寒天など海藻由来の多糖を分解する腸内細菌が生息し、一方、北米人にはこの腸内細菌が発見されないことが報告されました。海藻類を比較的多く摂取する日本人の長寿に、海藻由来の多糖オリゴ糖が関与すると推測されるもので、その生理活性が注目されています。
今後も引き続き神戸大学との共同研究により、麹菌に生産させた酵素「β-1,3-キシラナーゼ」の性質の解明、「β-1,3-キシロオリゴ糖」の生理活性の探究などの研究開発を継続していきます。

学会での発表

学会名 日本応用糖質科学会平成22年度大会(第59回)
発表日時 2010年9月15日(水)17時台の予定
発表会場 静岡県コンベンションアーツセンター/グランシップ 9階910号室
(〒422-8005 静岡県静岡市駿河区池田79-4)
演題と発表者
(○印は演者)
(演題番号) <Bp1-13>
(演題) 超好熱菌Thermotoga neapolitana由来耐熱性β-1,3-キシラナーゼの発現および諸性質
(発表者) ○岡﨑 文美1, 仲島 菜々美1, 久田 博元3, 荻野 千秋2, 石田 博樹3, 秦 洋二3, 近藤 昭彦2(神戸大・研究環1, 神戸大院・工・応化2, 月桂冠3)
(演題番号) <Bp1-14>
(演題) 麹菌(Aspergillus oryzae)を宿主とした超好熱菌Thermotoga neapolitana由来耐熱性β-1,3-キシラナーゼの 分泌高生産
(発表者) ○久田 博元1, 岡﨑 文美2, 石田 博樹1, 荻野 千秋3, 秦 洋二1, 近藤 昭彦3(月桂冠1, 神戸大・研究環2, 神戸大院・工・応化3)


<2010年9月17日に情報追加>

学会名 日本生物工学会大会(第62回)
発表日時 2010年10月29日(金) 10:00~15:30(ポスター掲載時間)
発表会場 ワールドコンベンションセンターサミット フェニックス・シーガイア・リゾート
(〒880-8545 宮崎市山崎町浜山)
当該発表会場=ポスター第1会場(4Fサミットホール天瑞)
演題と発表者
(○印は演者)
(演題番号) <3P-1048>
(発表時間) 14:30~15:30
(演題) 麹菌による超好熱菌Thermotoga neapolitana 由来耐熱性β -1,3- キシラナーゼの高分泌生産
(発表者) ○久田 博元1, 岡﨑 文美2, 石田 博樹1, 荻野 千秋3, 秦 洋二1, 近藤 昭彦3(1 月桂冠・総研,2 神戸大・自科研究環,3 神戸大院・工・応化)
(演題番号) <3P-1049>
(発表時間) 13:30~14:30
(演題) 超好熱菌Thermotoga neapolitana 由来耐熱性β -1,3- キシラナーゼの機能解析
(発表者) ○岡﨑 文美1, 仲島 菜々実1, 久田 博元2, 荻野 千秋3, 石田 博樹2, 秦 洋二2, 近藤 昭彦3(1 神戸大・自科研究環,2 月桂冠・総研,3 神戸大院・工・応化)

月桂冠総合研究所について

1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般にわたる基礎研究を行うと共に、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで幅広い研究に取り組んでいます。
(所長=秦 洋二、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)

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