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月桂冠ニュース(201203_04) 2012年3月21日
医薬品や食品に機能性を付与する「デフェリフェリクリシン」

世界初、麹菌による大量生産技術を確立

 

月桂冠総合研究所は、麹菌が作るペプチドの一種「デフェリフェリクリシン」を、大量生産する技術の開発に世界で初めて成功しました。「デフェリフェリクリシン」には抗炎症・抗酸化、美白作用があります。また、デフェリフェリクリシンと鉄との結合により生じる「フェリクリシン」には、貧血の改善・予防のほか、持久力向上などの機能性があることも確認しました。デフェリフェリクリシンの大量生産が可能になったことで、今後、医薬品や機能性食品、化粧品の素材など幅広い用途への活用が期待できます。これらの研究開発成果を、「日本農芸化学会2012年度大会」(京都市にて開催)で、3月23日(金)に発表します。


麹菌が作るデフェリフェリクリシンは、鉄イオンを包み込むようにして結合するキレート作用によりフェリクリシンを生じ、清酒を赤橙色に着色させることがあります。このような着色を防止するために、清酒醸造においてはできるだけ鉄を持ち込まないことが原則とされてきました。また、デフェリフェリクリシンをできるだけ生産しない麹菌の育種も進められてきました。このように、清酒業界ではデフェリフェリクリシンは不必要な物質ですが、鉄イオンとのみ選択的に結合する性質は、他分野において有用な用途となりえます。しかし、麹菌は微量の鉄の存在でデフェリフェリクリシンを生産しないため、これまで通常の培養方法では大量生産が困難でした。そこで、デフェリフェリクリシンを多く生産し、同時に鉄への感受性が低い麹菌株を育種しました。培養方法には独自の技術を導入しました。具体的には、培養の際に撹拌を強めることによって増殖に必要な酸素の供給量を上げる、その一方で、撹拌することで菌糸がせん断されないように菌体を粒状に誘導するなどの工夫を施しました。その結果、従来よりもその生産性が1000倍に向上しました。実際に、発酵槽を使って培養したところ、40キログラムのデフェリフェリクリシンを製造できました。


デフェリフェリクリシンとフェリクリシンは、医薬品・食品・化粧品などに機能性を付与するための素材として応用が可能です。マウスを使った実験によると、「デフェリフェリクリシン」は抗炎症・抗酸化効果により、消化器疾患を改善する傾向が見られました。また、表皮への作用として、美白に関係する抗酸化活性とメラニン抑制効果を有することを確認しました。一方の「フェリクリシン」は、鉄の供給剤として貧血予防食品や貧血症の医薬品に利用される可能性が考えられます。実験では、血液や筋肉に鉄を補給し、酸素の運搬や貯蔵の機能を高めて運動による疲労を軽減し、筋力の低下を防ぐ効果が見られました。  フェリクリシンは水溶性が高く、他の鉄補給剤との比較でも、色・香り・味において良好で、加熱にも強いなど優れた加工適性を持っています。麹菌は、清酒や酒粕として長年の食経験があることから安全性も高いと考えられています。デフェリフェリクリシンとフェリクリシンの応用分野を拡げるために、今回の学会発表をはじめさまざまな機会を通じて提案していきます。

学会での発表

学会名 日本農芸化学会2012年度大会
発表日時 2012年3月23日(金)10:49~、計5題を連続して講演
会場 京都女子大学(京都市東山区今熊野北日吉町35)
B校舎5F、B514号室「B18会場」
演題と発表者
(○印は演者)
【大量生産技術について】

(演題番号) 2B18a10
(演題) 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(1)
-デフェリフェリクリシン大量生産技術の開発-
(発表者) ○松村 憲吾、戸所 健彦、山中 寛之、福田 克治、入江 元子、秦 洋二(月桂冠総研)
(演題番号) 2B18a11
(演題) 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド (2)
-デフェリフェリクリシン高生産株の育種および培地の改良-
(発表者) ○戸所 健彦、福田 克治、松村 憲吾、入江 元子、秦 洋二(月桂冠総研)
【各種機能性について】

(演題番号) 2B18a12
(演題) 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(3)
フェリクリシンの摂取がマウスの体内の特異的な鉄分布と持久力向上に及ぼす影響
(発表者) ○鈴木 佐知子、福田 克治、入江 元子、秦 洋二、安井 裕之1(月桂冠総研、1京都薬科大・代謝分析)
(演題番号) 2B18a13
(演題) 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(4)
-デフェリフェリクリシンの抗炎症、抗酸化効果-
(発表者) ○入江 元子、福田 克治、秦 洋二、市川 寛1、内藤 裕二2 、吉川 敏一2
(月桂冠・総研、1同志社大学・生命医科学研究科、2京都府立医科大学大学院・消化器内科学)
(演題番号) 2B18a14
(演題) 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(5)
-培養細胞および皮膚モデルにおけるデフェリフェリクリシンの美白効果-
(発表者) ○大浦 新、堤 浩子、秦 洋二 (月桂冠総研)

月桂冠総合研究所について

1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般にわたる基礎研究を行うと共に、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで幅広い研究に取り組んでいます。
(所長=秦 洋二、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)

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