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「カーボンカタボライト抑制」の機能が欠損した麹菌に
吟醸酒造りに適した性質、月桂冠総研が発見

2018年11月12日

酒造りにおいて、蒸米のデンプンの分解によりブドウ糖が多量に生産された環境下で、その分解酵素の生産を制限する「カーボンカタボライト抑制」の機能が欠損した麹菌(こうじきん)は、吟醸酒造りに適した性質を持つことを、月桂冠株式会社・総合研究所が発見しました。カーボンカタボライト抑制の機能が欠損した麹菌によりつくられた麹は、デンプンを分解する酵素「アミラーゼ」の活性が高く、タンパク質を分解する酵素「プロテアーゼ(カルボキシペプチダーゼ)」の活性が低いという性質があることを確認したものです。今回の研究は、東北大学大学院・五味勝也教授より提供された、カーボンカタボライト抑制の機能が欠損した麹菌を用いて実施しました。 

酒造りでは、麹菌のつくる酵素による米デンプンの分解で生成したブドウ糖を、酵母菌が代謝して、アルコールに変えていきます。特に吟醸酒造りでは、その過程でデリシャスリンゴやバナナの香りを思わせるフルーティーな香りの生成により、特有の香味が形成されます。デンプンを糖に分解するアミラーゼの働きが弱ければ、それらの香りの生成が不調に終わってしまいます。また、米のタンパク質を分解するプロテアーゼの働きが強ければ、コクや旨味のもとになるアミノ酸が多量に生産され、淡麗さや繊細さを持ち味とする吟醸タイプの酒として見合わない香味となります。これらのことから、吟醸酒造りに適した麹菌は、米のデンプンを分解する酵素「アミラーゼ」を多くつくり、タンパク質を分解する酵素「プロテアーゼ」をつくりにくい性質を備えていることが必要とされており、その性質が、カーボンカタボライト抑制の機能が欠損した麹菌にあることを、今回、見出しました。

今後、カーボンカタボライト抑制の機能が欠損した麹菌をベースにして、吟醸酒の製造により適した株の開発や、その応用にも着手しやすくなり、高品質で多彩な酒造りにつなげることができればと考えています。この研究成果は、「カーボンカタボライト抑制関連遺伝子破壊株を用いた米麹の特性」と題して、「第18回 糸状菌分子生物学コンファレンス」(主催:糸状菌分子生物学研究会)で、11月16日に発表します。

【学会での発表】
学会名: 第18回糸状菌分子生物学コンファレンス(主催:糸状菌分子生物学研究会)
発表日時: 2018年11月16日 13:00-14:30
会場: シティホールプラザ「アオーレ長岡」(新潟県長岡市大手通1丁目4-10)
演題: カーボンカタボライト抑制関連遺伝子破壊株を用いた米麹の特性(ポスター発表)
発表者: ○村上直之,小高敦史,松村憲吾,秦洋二(月桂冠・総研)(○印は演者)
【月桂冠総合研究所について】

1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般の基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいます (所長=秦洋二、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)。

※sニュースリリースに掲載している情報は、発表日現在のものです。最新の情報とは、異なる場合があります。