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稲穂

口噛み酒
中南米・南太平洋・台湾・沖縄・大隅半島で醸された

酒の産業を知る - 世界の酒

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口噛み酒は、穀物やイモ類などデンプン質の原料を噛んで壺やヒョウタンなどの容器に貯め、自然発酵を促して造られる酒です。原料のデンプンは唾液中のアミラーゼという酵素の働きで糖に分解されます。その糖分を自然界に存在する酵母がアルコール発酵することで酒ができます。口噛み酒は、中南米や南太平洋のほか、東アジアでも台湾、沖縄、大隅半島など世界各地で造られていました。日本酒など米麹を利用して造る酒とは、その起源を異にしていると考えられています。

世界各地の口噛み酒

米飯を時間をかけて噛んでいると、次第に甘くなってくるのは、唾液に含まれるアミラーゼによって、米の澱粉が糖にまで分解されるからです。これを利用して穀物やイモ類を口で噛み、澱粉を糖化して酒をつくるという口噛みの方法があみ出され、有史以前から世界各地で行われていました。
例えば、メキシコからアンデスにいたる中南米ではトウモロコシを、アマゾンではマニオクを、また台湾の山岳民族はアワや米を、それぞれ原料として「口噛み酒」をつくっていました。これらは環太平洋文化の一つと考えられています。
とくに有名なのはインカのチチャです。クスコに現存する堅牢な石造りの神殿では、その昔、美しい巫女マクーニャ達が茄でたトウモロコシを噛んで酒を造り、神に捧げていたといわれています。現在のチチャは、ほとんど麦芽を用いて造られていますが、一部のインディオによって口噛みのチチャも造られていると伝えられています。

日本の口噛み酒

日本でも、8世紀の「大隅国風土記」に「口噛み酒」が記録されていますが、すでに当時の都では、その姿は消えていました。しかし、つい半世紀ほど前まで、沖縄やアイヌの人々の間で、祭の行事として実際に行われていたため、その詳細な記録が残っています。
現在の日本酒のルーツである稲作複合文化の一つである「米麹利用の酒」と、こうした「口噛み酒」とは,その文化パターンをまったく異にしていると考えられています。

【参考・引用文献】
  • 栗山一秀 「世界の酒―その種類と醸造法、歴史と本質と効用―」 『アルコールと栄養』 光生館 (1992年)
    ※本文は著者の了承を得て、敬体の文に変え掲載しています。
  • 吉田集而 「口噛み酒の恍惚剤起源説」 『論集 酒と飲酒の文化』 平凡社 (1988年)
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