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井戸

女酒と男酒、軟水と硬水 
鉄分が少なく、きれいな水で醸される酒

京都・伏見を訪ねる - 酒造りと水

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伏見(京都)の酒は、カルシウムやマグネシウムなど硬度成分をほどよく含んだ中硬水を用い、比較的長い期間をかけて発酵させています。このことから、酸は少な目、なめらかで、きめの細かい淡麗な風味を産み出してきました。灘(兵庫)の酒は酵母の栄養源となるミネラル分が多い硬水を用いるため、比較的発酵期間が短く、やや酸の多い辛口タイプの酒でした。酒造用水に含まれる成分や、酒の造り方によって生まれる酒質の特徴をとらえ、伏見の「女酒」に対して、灘の「男酒」とも呼ばれてきました。

水の成分で酒の味は決まるか?

酒造技術の発達した現在では、硬水・軟水のいずれを用いても、発酵の進め方などによって辛口・甘口の酒を造り分けられるようになりました。今日のお客様がお求めになる多彩な酒質を醸すことも可能になっています。
水の成分だけでなく、産地の食文化も酒質に大きな影響を及ぼしてきました。伏見の酒は「宮廷料理から発展、派生した京料理に合う酒」として洗練されていったのに対し、灘の酒は江戸の人々の嗜好に合う「江戸送りの酒」としてそのタイプが次第に形づくられました。

軟水と硬水

ミネラル分を多く含む水を硬水、少ない水を軟水と呼び、硬度を目安に区分しています。硬度は、水1リットル(L)に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を、炭酸カルシウム(CaCO3)の重量(mg)に換算した数値(mg/L=PPM)で表し、その測定法はJIS(Japanese Industrial Standards、日本工業規格)に定められています。
水域を分類するための一般的なガイドライン(米国地質調査所)によると、軟水は「硬度0~60mg/L」、中硬水は「硬度61~120mg/L」、硬水は「硬度121~180mg/L」、非常な硬水は「硬度181mg/L以上」としています。
硬度による水の特徴は、地下水が通過する地層のちがいによって表われます。京都・伏見の地層は花崗岩(かこうがん)でできており、この層からほどよい量のミネラル分が水に溶けだしてくるため、硬度60~80mg/Lの中硬水となっています。これに対して、灘(兵庫)の宮水の場合、地層に貝殻層があるのでカルシウムなどの溶出量が多く、比較的硬度の高い水になると言われています。

【参考文献】
  • 堀池昭「伏見の酒造水」『日本醸造協会誌』第87巻、第1号(1992年)
  • 米国地質調査所(U.S. Geological Survey)ウェブサイト

立石の井戸場

醸造用水としての条件

伏見の地下水の主流となり、桃山丘陵から酒蔵の集まる西南方向へ流れ出る水は、鉄分が0.006ppmと極端に少なく、酒造りに適したきれいな水であると評価されています。鉄分は、麹菌がつくるデフェリフェリクリシンという物質と結びついて、赤橙色のフェリクリシンという物質になり酒を着色させるため、できるだけ少ない方が良く、酒造用具にも酒が触れる部分は鉄を使わないようにしているほどです。

醸造用水としての条件は、水道水の水質基準よりも厳しく、鉄分の場合、水道水では0.3ppm以下となっていますが、醸造用には0.02ppm以下の水でなければならないとされています。

<醸造用水としての条件>

( )内は水道水の水質基準

0.02ppm以下で、含まれないことが最適(0.3ppm以下)
マンガン 0.02ppm以下で、含まれないことが最適(0.05ppm以下)
亜硝酸性窒素 検出されないこと
有機物
(過マンガン酸カリウム消費量)
5ppm以下であること(10ppm以下)
アンモニア性窒素 検出されないこと
細菌酸度 2mL以下
色沢 無色透明であること
臭気 異常でないこと
異常でないこと
醸造用水としての条件は日本醸造協会『清酒製造技術』、水道水の水質基準は厚生省令第69号から

水は清酒の成分の8割以上を占め、その成分が酒質に大きく影響します。特に原酒の割水においては、びん詰め直前に製品としてのアルコール度数に調整するため、水を3割以上加えます。そのため水の成分の良し悪しが酒質に直接影響します。 製造現場では、仕込用の水は活性炭フィルターを通し、調合や割水、製品ライン用には、有機塩素、鉄、マンガンを除去する装置や、数ミクロンという精密な濾過フィルターを重ねて通すなど、念には念を入れた処理の上に地下水が使われているのです。

【参考文献】
  • 野日喜久雄、好井久雄、小崎道雄・編『醸造学』講談社(1982年)
  • 堀池昭「伏見の酒造水」『日本醸造協会誌』第87巻第1号(1992年)
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