検索
メニュー
 

展示場・展示品

酒まわりの用具類

発酵を終え、しぼられた酒は、貯蔵により調和のとれた香味に熟成させ、樽やびんに詰め出荷します。樽を保護するために巻いた菰(こも)や、酒びんを運搬するための木箱には、商標や酒質を表示しており、金型を用いて塗料を刷りこんだり、版木で朱印を押すなど意匠を凝らした装飾が見られます。現在の商品券に当たる「酒切手」とその版木など、江戸期の酒商いに用いられた用具類も展示しています。

菰冠樽詰

酒樽を包む藁菰(わらごも)は、印菰(しるしごも)と呼び、商標や酒質など表示しています。もともと酒を輸送する際に木樽を保護する目的で、藁を編んだ筵(むしろ)に屋号のしるしを刷り込んだものを巻いたりしていました。それが次第に装飾性を帯びるようになりました。

各部分の名称

【印前(しるしまえ)】
菰を巻いた樽の正面の商標などを記した部分。

【まくら】
印前の上部。品評会や博覧会などでの受賞メダルが金色でデザインされ、その両側に「登録商標」であることが表示されています。

【銅判】
印前の向かって右側。「有功賞」など受章名を中心に、細かな文様を銅判機を使って表示しています。

【うた】
印前の左側上部。朱印用の版木を使って、「名声布四海」などの文字や、歌様の短い文句を表示することが多かったことから、この名で呼ばれています。同下部は「うた下」と呼び、「吟醸」など酒質を示す意匠が施されています。

【すて場】
向かって左側の後ろの部分。酒質や受賞のアピールを表示します。

【御印(ごいん)】
向かって右後ろの部分。醸造元や、寒造りした逸品であるとアピールする「極寒」などの文字を表示しています。

(参考文献)
・京都市文化観光局文化観光部文化財保護課『伏見の酒造用具』京都市文化財ブックス第2集(1987年発行)

昔の帳場

手押し焼印

酒樽を包む藁菰(わらごも)、酒びんを運搬するための木箱に、商標や酒質、級別、醸造元などを表示するための焼印。中央の焼印は「至」という文字を象形化したもので、「この上ない」「きわみ」など最上であることを意味しています。右の「生」は、「まじりけのない」「純粋な」などを意味していました。
鉄製の焼印は、直径は15cm前後、柄は40cm、重さは5キロ以上あります。二人一組で、一人が焼印を押して、もう一人が菰をめくるというように作業しました。炭火で30分ほど熱した焼印で、藁菰4枚に押していきます。位置を気づかい、熱した直後は焦げ付かないように、冷めてくると柄に体重をかけるなどの工夫で、焼き付けが一定になるようにしました。このような加減ひとつひとつに職人技が求められました。
この焼印は印菰の右後ろの「御印」や、左後ろの「すて場」のスペースに押されました。

(参考文献)
・京都市文化観光局文化観光部文化財保護課『伏見の酒造用具』京都市文化財ブックス第2集(1987年発行)

手押し焼印

機械押しの焼印

手押しだった焼印に、機械が使われるようになります。「京都府伏見町大倉恒吉精醸」と表示した焼印(縦28cm、横17cm)は板状で、機械にセットして藁菰(わらごも)に押されました。この焼印は印菰の右後ろにあたる「御印」のスペースに押されました。
大倉恒吉は1886年(明治19年)13歳で11代目の当主となり、1927年(昭和2年)には個人商店を株式会社化、1945年(昭和20年)まで社長を務めました。その間、明治期には自社に研究所を創設、酒造りへの科学技術導入を志し、樽詰酒全盛の時代に防腐剤の入らないびん詰酒の商品化に力を入れるなど、日本酒の品質向上に力を尽くしました。

(参考文献)
・京都市文化観光局文化観光部文化財保護課『伏見の酒造用具』京都市文化財ブックス第2集(1987年発行)

機械押しの焼印

刷り込み用型紙、金型

酒樽を包む藁菰(わらごも)、酒びん運搬用の木箱に、商標や酒質、級別、醸造元などを表示するためのもの。
型紙は、柿渋で加工されたことから渋紙とも呼ばれ、文字や図柄が切り抜かれたものです。2枚を組み合わせて、文字をふちどりし、丸刷毛を使って彩色していきます。明治時代には銅版機を使って刷り込むようになりました。
上は「芳花」、中央は「芳醇」の型紙(縦20cm、横30cm)と、その刷り見本。
下は、明治・大正期頃、東京方面に出荷した高級酒「鳳麟正宗」の酒銘を木箱に刷り込むために用いた金型(縦20cm、横45cm)。

(参考文献)
・京都市文化観光局文化観光部文化財保護課『伏見の酒造用具』京都市文化財ブックス第2集(1987年発行)

刷り込み用型紙、金型

朱印用版木

朱印用の木製印判。写真左は「名声布四海」、右は「名酒」と彫られ蔵の鍵をデザインしています。酒樽を包む藁菰(わらごも)に押して表示するためのもので、菰冠の意匠の一つになっています。版木は縦24.5cm、横11.5cm、厚さ7.8cm。
これらの朱印は、樽正面の左側上部、「うた」と呼ぶ部分に押されました。ベンガラ(赤色の顔料)を水に溶いて版木の版面に刷毛でのせ、万力型の銅判機で菰と版木をはさんで締めつけることで朱印が押されました。

(参考文献)
・京都市文化観光局文化観光部文化財保護課『伏見の酒造用具』京都市文化財ブックス第2集(1987年発行)

朱印用版木

酒切手とその版木

酒切手は、現在の商品券の役割を果たしていたもので、券面に記された酒と交換できました。版木には朴材(ほおざい)が使われ、墨を吸いこんで黒光りしています。版木は縦15cm、横9cm、厚さ1.8cm。
写真上の酒切手には、江戸期の酒銘「玉の泉」と「壱桝」の文字が刷られており、当時の銘柄「玉の泉」の徳利入りの酒と引きかえられていました。
写真下のものには「酒」「壱桝」と刷られています。中央の「稲玉」を表す朱印の左上には、「入れ物は持参くださるべく」と添え書きされていることから、計り売りの酒と交換されたようです。毛筆で「相すみ」と記すことにより、酒との交換が済んでいると判別できるようにしていました。

酒切手とその版木
ページのトップへ