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米から酒へ、原料米の精米、洗米、浸漬、蒸米 そして麹づくり、仕込み工程へ

米から酒へ、原料米の精米、洗米、浸漬、蒸米
そして麹づくり、仕込み工程へ

清酒を知る - 酒造り

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酒造りには、日本晴やコシヒカリなど食用に供される米もよく使われますが、酒造用として特別に栽培された品種が酒造好適米として指定されています。
酒造好適米は大粒でやわらかく、米粒の中心に心白(しんぱく)と呼ぶ白くうるんだ部分があります。米粒の中へと麹菌を繁殖させやすく、発酵の途上では低温でも芯まで溶け、米洗いや蒸米など各工程での調整がしやすいといった特徴があります。成分としては、タンパク質・脂肪・無機質・ビタミンが少ないという点です。これらの成分は、多すぎると麹菌や酵母の生育が過度になり、香りや味に影響し調和をくずしてしまいます。特に、淡麗で繊細な香りを楽しむ吟醸酒を醸すときには、精米によってタンパク質・脂肪・無機質・ビタミンなどの成分を少なくした白米を使います。

酒米の稲穂▲酒米の稲穂。右から、酒造好適米の祝(いわい、京都産)、五百万石、山田錦、一般米のコシヒカリ、日本晴、京の輝き。酒造好適米では山田錦や祝のように、一般米よりも稲穂の背丈が高く倒れやすいなど栽培が難しい品種もある。価格についても食用米より高めである

精米

食用の米は、玄米を重量で1割程度を精米されます(精米歩合90パーセントほど)。酒造りの原料米の場合は、食用の白米よりもさらに2割以上多く精米します。一般酒・普通酒では3割(精米歩合70パーセント)ほど、吟醸酒では4割以上(精米歩合では60パーセント以下)、最高で7割近くを磨き(精米歩合30パーセント近くにして)酒造りに用います。
吟醸酒のように、香りが高く、雑味が少なくすっきりした風味の日本酒を醸す場合、原料米としては、もともとタンパク質の少ない品種が選ばれています。米のタンパク質は、発酵の途上で麹の酵素(プロテアーゼ)によりアミノ酸に分解され、それが酒の味の主成分になりますが、多すぎるとくどい味になってしまいます。また、脂肪が分解してできる不飽和脂肪酸は、吟醸香の一つ、酢酸イソアミルの生成を妨げます。

米の胚芽(はいが)や、米粒の外表面に近い層(表層部)ほど、タンパク質・脂肪・無機質・ビタミンなどが多く含まれています。精米により、これらの成分を少なくしていきます。精白度を上げることにより、くどさが少なく上品な味わいの酒を醸すことができ、さらには鉄やマンガンなど酒質を劣化させる成分も少なくなります。

月桂冠大手蔵▲目的とする酒質、用いる米の品種、米の作柄、精米歩合にとって、精米にかける時間などを調整してから丁寧に磨いていく(月桂冠大手蔵)

精米歩合とは

精米歩合とは、玄米に対する精米後の白米の重量パーセントをいいます。精米歩合60パーセントとは、玄米の40パーセント分の重さを削り取ったことを表しています。吟醸酒・純米酒・本醸造酒など特定名称の商品には、精米歩合を1パーセントきざみで原材料名の近接する位置へ表示することになっています。

左から、玄米、精米歩合70パーセントの白米、同50パーセントの白米▲左から、玄米、精米歩合70パーセントの白米、同50パーセントの白米

洗米と浸漬(しんせき)

白米についている糠(ぬか)分を水で洗い落します。ご飯を炊く前に、米を研ぐのと同じです。水に浸す時間は、米の品種や年による作柄、成分や硬さのちがい、精米の程度によって異なります。数分から長いもので数時間をかけて適量の水分を含ませ、水切りをして翌日の蒸米に備えます。高度に精白した米は、吸水のスピードが速いため、秒単位で洗米と浸漬の時間を細かく計りながら調整します。

米の浸漬と水切り▲米の浸漬と水切り

蒸米

適量の水分を吸わせた米を蒸します。米の生のデンプン(ベータ型)は蒸されると、のり状デンプン(アルファー型)になります。のり状デンプンにすることで、麹の酵素による糖化作用を受けやすくします。さらに、蒸して熱をかけることで殺菌効果も生じます。
蒸しの方法には、釜の上にのせた昔ながらの甑(こしき)による方法と、米がベルトコンベアの蒸気層を移動するうちに蒸しができる連続蒸米機による方法があります。蒸し上がった米のおよそ4分の1は約30度まで品温を下げて麹づくり(こうじづくり)に用い、4分の3は約5度まで冷却して発酵工程へと送り、モロミの仕込みに用います。

甑(こしき)による蒸米▲甑(こしき)による蒸米。蒸し上がった米を取り出し、適温まで冷まして、麹づくりやモロミ仕込みに用いる

【参考・引用文献】
  • 『増補改訂 最新酒造講本』 財団法人・日本醸造協会(1996年)
  • 『増補改訂 清酒製造技術』 財団法人・日本醸造協会(1998年)
  • 大内弘造『なるほど!吟醸酒づくり―杜氏さんと話す』技報堂出版(2000年)
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