京の日本酒と和菓子

VOL.02「生酒」の冷酒と「夏柑糖」

「生酒」の冷酒と「夏柑糖」
「切子皿小玉」「切子杯しずく」(西眞り子作)/
器協力 くらしの器と切子ガラスの店「結」 
京都市中京区尾張町212の1 TEL:075-334-5821

夏といえば冷酒。搾りたての風味が味わえる「生酒」は冷酒に最適だ。もろみを搾ったまま火入れをしない生酒は、酵素が働き時間が経つにつれて酒質が変化してしまう。1984年、月桂冠は超精密ろ過技術で酵素の除去に成功し、常温流通を実現。春夏秋冬、日本全国で搾りたての風味が楽しめるようになった。
「生酒は香りと酸味のバランスが命」と語るのは、醸造部生産技術課長の阪本充さん。かつて、伝説の研究者・芦田晋三さんが生み出した、バナナのような香りをつくる酵母。阪本さんは5年前、その酵母によって、爽やかな酸味を加味する研究を進め、現在の素晴らしい風味が生まれた。

醸造部生産技術課長 阪本 充

造り手

醸造部
生産技術課長

阪本 充

これに合う和菓子はなんだろう?昭和初期の月桂冠の生酒チラシ、「果物に合う」のコピーをヒントにたどりついたのが、知る人ぞ知る京の銘菓、上七軒・老松(おいまつ)の「夏柑糖(なつかんとう)」だ。山口県原産、昔ながらの夏みかんの果汁に寒天を加え、皮の中で固める。毎年4月1日から作り始め、原料がなくなる頃、グレープフルーツを用いた「晩柑」を同じ手法で作る。

季節限定「晩柑」/老松

夏柑糖が終わると店頭に並ぶ菓子。グレープフルーツの酸味がほどよく生酒との相性がまたいい。

京都市上京区北野上七軒
TEL:075-463-3050

季節限定「晩柑」/老松

口に入れると広がる、ほのかで自然な果実の酸味と甘味。そこに「生酒」を含む。両者が溶け合いつつ、菓子の味は濃くなり、生酒のさわやかさは増す。驚きの一体感だ。リンゴ酸、乳酸をはじめとする日本酒の酸味に、柑橘のクエン酸があいまって、絶妙のバランスが生まれるのだろう。
プルプルの夏柑糖を匙(さじ)ですくい、冷えた生酒をちびちびと口に運ぶ。阪本さん曰く、口の中に上質な果実酒が生まれるかのよう。蒸し暑い季節、一服の涼風が吹き渡る。

「生酒」
「冷用月桂冠」

搾りたての鮮度感が味わえる冷用酒。通常は蔵元でしか味わえなかった生酒が。1984年以来、超精密ろ過技術により流通ルートに乗った。
なお、冷やして飲む夏の酒として、昭和9年に発売した「冷用月桂冠」の広告には床机で酒を酌み交わす浴衣姿の人物のイラストがある。別のチラシでは「召し上がり方」として「特別の酒肴はいらないが、果物などには合う」と斬新な楽しみ方を紹介している。

「生酒」

生酒

フルーティな香りが贅沢に際立つ本格的な生酒。

甘辛:やや辛口 濃淡:やや普通

※2023年3月にパッケージデザインをリニューアルしました。最新の情報は商品ページでご確認ください。

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ハンケイ500m

(VOL.038)2017年7月10日発行

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