京の日本酒と和菓子

VOL.05「上撰 樽酒」と「黄檗」

「上撰 樽酒」と「黄檗」

祝いの席のお酒といえば、鏡開きの樽酒がある。菰樽(こもだる)の蓋を開いての祝い酒は格別だが、それと同じ杉の樽香をいつでも楽しめるのが、びん詰の「上撰 樽酒」。月桂冠の最もスタンダードな清酒「上撰」を杉樽貯蔵した、風味あふれる酒だ。
実は「上撰」は月桂冠の造り手のあいだで「昭和のやさしいお父さん」なる愛称で呼ばれる。なぜならこの酒は長年にわたり月桂冠のスタンダードとして認識され、特に昭和時代には絶大な人気を誇ったから。受け継がれてきた「上撰」は、月桂冠の歴史を知るといっても過言ではない。
「樽酒の香りは、杉の樽に短期間入れることでつけます。香りには杉の成分が含まれ、テルペン系の芳香が食べ物の味を引き立てます」と語るのは醸造部の清水威暢さん。樽に入れ過ぎると杉の香りが立ちすぎる。お酒の風味を生かしてこその樽香だ。杉樽は、出来立てを使用し、数度使ったら役目を終える。もったいないほどの贅沢な、香りづけである。

醸造部 清水 威暢

造り手

醸造部

清水 威暢

この香りを生かすため、「上撰 樽酒」を常温か少し冷やす程度で口に含む。爽やかで繊細な杉のアロマが、まろやかな味わいに絶妙に調和する。この風味に合う和菓子として今回選んだのが、百万遍交差点にある「かぎや政秋」の「黄檗(おうばく)」。三角形に切り分けた粟羊羹(あわようかん)にきな粉をまぶした唐菓子(からがし)の古風を残す和菓子だ。

「黄檗」/かぎや政秋

京都市左京区吉田泉殿町1番地
TEL:075-761-5311

「黄檗」/かぎや政秋

粟羊羹の素朴で控えめな甘みと口触りに、きな粉の香りが香ばしい。そこに「上撰 樽酒」を口に含む、粟菓子の繊細さが際立ち、樽酒はさらにやさしい味わいとなる。品格のある甘さと格調ある杉のアロマがごく自然に馴染み、引き立て合う。粟羊羹に用いられる味甚粉(みじんこ)は米粉、それゆえの相性もあるだろう。「黄檗」に別添えの黒蜜をかけると、樽酒が蜜の旨みを口中に広げ、また別の風味も楽しめる。
エメラルドグリーン色の一升瓶に詰められた、香りも姿も祝いの席にふさわしい「上撰 樽酒」。この古風な粟菓子を添えれば、「通好み」の心憎い組み合わせになる。

上撰 樽酒

上撰 樽酒

伝統のまろやかなお酒の味わいと、爽やかな杉の香りの調和が絶妙な樽酒。

甘辛:中口 濃淡:普通
月桂冠オンラインショップ #ハレノヒ飲み #杉の香り #木香 #繊細なアロマ #通好み
ハンケイ500m

(VOL.041)2018年1月10日発行

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