新商品ではなく、“新カテゴリ”を創造した月桂冠の『糖質ゼロ』。

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営業推進部 マーケティング課 課長 杉本宏治

Phase1 商品開発

発酵時に「糖」が発生する日本酒で、『糖質ゼロ』を実現。

営業推進部 マーケティング課 課長 杉本宏治

「糖質ゼロ」の開発は、どのような経緯ではじまったのでしょうか。

杉本:十数年前にビール市場で糖質オフ商品が登場した当時は、業界内でも「味が薄いので売れないだろう」という意見が大勢を占めていました。しかし、その後売れ行きは伸び、ボリュームゾーンと呼べるまでに成長したため、日本酒でもそのニーズを調査することにしました。日本酒の愛好家である紙パックのお客様にインタビューしたところ、「低糖質商品はおいしくない」と毛嫌いされるお客様がいる一方、「あるなら買いたい」という方も一定数いらっしゃいました。兆しのような小さなニーズしかなくても、数年後にはさらに広がっていくのではないかという予感から、開発をスタートしました。

開発の中で、最も苦労したポイントはどこですか?

杉本:「糖質ゼロ」を謳うためには、製品に含まれる糖質を100mlあたり0.5g未満に抑える必要があります。他の飲料では配合する原材料を調整することで比較的簡単にこの条件を達成することができますが、発酵産物である日本酒では非常にハードルが高い。日本酒の発酵過程で徐々に出てくるお米に含まれる「糖」を、必ず生物である酵母の力を借りて変化させる必要があります。それが達成できなければ、商品として出荷することはできないし、得意先に商品を供給できなければ信頼を失いかねません。特に『糖質ゼロ』は発売に際して、非常に多くのお得意先様にご採用いただいたので、供給責任を果たせるよう、次善の策をいくつも考慮した生産プロセスを設定しました。

非常にリスキーなチャレンジでしたが、日本酒市場では他社に先駆けて発売しなければ商品が生き残れません。リスクを恐れて手をこまねいていては、後れをとってしまいます。とはいえ、上層部もよく許してくれたものだと思います。その点は、月桂冠ならではの懐の深さかもしれませんね。

近畿営業部 近畿第1支店 小平知佳

Phase2 リニューアル

さらなる「日本酒らしさ」の追求で、トップシェアを維持。

近畿営業部 近畿第1支店 小平知佳

その『糖質ゼロ』を2014年にリニューアルされた理由は?

小高:リニューアル前の『糖質ゼロ』のお客様へのインタビュー調査で、「酸味が強い」というご意見がありました。『糖質ゼロ』は、糖分がほとんどないので、どうしても酵母が生み出す酸味を感じやすいのだと思いました。酵母を改良することによって酸味だけでなく味も改良できると考え、現場テストを経て実用化。今回のリニューアルに至りました。

一方で、『糖質ゼロ』の醸造をより安定させるとともに、増産を可能にする必要もありました。そこで、醸造現場へのヒアリングを重ねて問題点を明確にした結果、大幅に仕込み配合を変更することによって、できあがりの酒質を変えることなく増産に対応できました。

味、増産体制、いずれの課題も、研究所ですでに開発されていた技術を採用することで改善できました。「こういう技術がほしい」と言われてから開発したのでは遅きに失するため、実際に採用されるかどうかは問わず、研究所では常に新技術の開発に取り組んでいます。

商品リニューアル後、売れ行きに変化はありましたか?

小平:リニューアルをきっかけに、それまで『糖質ゼロ』の取扱いがなかったお得意先様に再度提案をおこなったところ、反応は非常に良好でした。放映されていたCMの効果もあるかと思いますが、機能性日本酒という市場を開拓していた商品であるという点も大きかったように思います。中には「これからは、『糖質ゼロ』のような特長ある商品が必要だ」と太鼓判を押してくださる方も。やはり日本酒愛好家には高齢の方も少なくないので、そうした方に安心して長く楽しんでいただける商品を届けていくこと、それにお客様の幅を広げるという意味でも評価していただきました。

杉本:2008年のデビュー以降、競合他社の参入も相次ぎ、機能性市場が大きく成長し続ける中でもトップシェアを維持できているのは、リニューアルが功を奏した部分も大きいと感じています。先発商品のアドバンテージはあっても、改良し続けなければ王座を守りぬくことはできないでしょう。『糖質ゼロ』であっても日本酒らしさを最大限に表現するというのは、私たちが努力しているポイントです。

総合研究所 小高敦史

Phase3 販売戦略

野菜ジュースと『糖質ゼロ』のカクテルなども提案。

総合研究所 小高敦史

『糖質ゼロ』を広めるために、どのような施策に取り組まれましたか?

小平:店頭で目にする機会が増えれば増えるほど、印象に残りやすくなりますから。棚割りを任せていただいているお得意先様などでは優先的に採用を提案しましたし、より優位な場所で展開できるように積極的にレイアウトを組みました。これは『糖質ゼロ』が機能性市場を牽引していたからこそ、できた提案だと思います。競合商品が登場していたことも、売り場を作りやすいというメリットにつながりました。

また、顧客層拡大を図るために飲み方や食べ合わせの提案も実施しました。同じ糖質ゼロのサイダーと『糖質ゼロ』を組み合わせた「ゼロ×ゼロ」企画や、野菜ジュースと糖質ゼロで作るカクテルなども提案しました。意外な組み合わせかもしれませんが、『糖質ゼロ』がすっきりとした飲み口なので意外と相性が良いのです。高齢な日本酒愛好家だけを追っていては消費が落ち込む一方なので、若いお客様にも飲みやすい提案をおこなっていきたいと考えています。

その他食べ合わせでは、TV-CMにポテトサラダが登場していたので、それを想起させるようなPOPを作成して惣菜売り場に掲出しました。『糖質ゼロ』には食事中の飲酒により口の中をすっきりさせるウォッシュ効果があるので、「ポテトサラダのマヨネーズを『糖質ゼロ』ですっきりと!」と。

杉本:実は『糖質ゼロ』のお客様を分析していくと、お酒をよく飲む方が多いことがわかってきました。それもどちらかというとプレミアムビールなどの味の濃いお酒よりも、第三のビールのようなすっきりとした飲み口を求めている方々です。それまで日本酒は、小平の言うウォッシュ効果のイメージから遠かったのですが、『糖質ゼロ』がそれを変えてくれました。また、若い方からの評価も非常に高いので、新しいお客様の開拓という意味でも期待を寄せています。

Phase4 これから

味の改良、市場の拡大、まだまだ広がる『糖質ゼロ』。

『糖質ゼロ』の今後の展望を聞かせてください。

小高:『糖質ゼロ』の歴史は浅いので、まだまだ改良の余地はあります。ポイントは、お客様満足の向上と製造課題の解決です。味についてインタビュー調査を通してさらなる課題を見いだし、引き続き対応していくと同時に、糖質を確実に減らせるような技術開発さらに推進していき、醸造現場をサポートしていければと思います。すでに試作品も多数作っていますし、市場のニーズに合わせてふさわしい味を取り入れ、さらに進化させていければと考えています。

小平:他社の糖質ゼロ商品によって、『糖質ゼロ』のシェアが少なからず奪われている現状を打破していきたいと考えています。機能性商品の取り組みは、今後アイテム選定の段階に移ると思われるので、そこで生き残るだけの売り込みは欠かせません。営業として、採用店舗増加はもちろん、引き続き飲み方・食べ合わせ提案を続けていくこと、さらに病院食調理やスーパーの惣菜調理への採用等、新たなルートも発見・開拓していきたいですね。これだけ健康志向が進んだ現在では、料理酒についても『糖質ゼロ』を採用していただける可能性があると考えています。

杉本:女性の社会進出が進む現在では、家事をできるだけ簡便化したいというニーズがあり、その行き着く先が惣菜購入者の増加だと思われます。そこで健康に配慮した惣菜の市場拡大に、月桂冠が寄与していければ幸いです。日本酒には糖分が多いと感じておられるお客様は多いので、糖質ゼロ市場はまだまだ成長するでしょう。味わいの改良や認知向上に向けた広告プロモーションなど、今後も地道な活動を続けていきます。マーケティング課としては、今後も『糖質ゼロ』のように新しいカテゴリを創造できるような商品を世の中に送り出していきたいですね。そのためにも市場のニーズを見極め、研究所で開発されたシーズと組み合わせていきたいと思います。

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