STORY 03THE SHOT、2年目の挑戦
「THE SHOT」は発売から順調に出荷数を伸ばし、同年にはさらにコンセプトに沿ったものへ味をリニューアル。そして2020年秋に「鮮やかジューシー<純米>がラインナップに加わりました。
伊藤「『THE SHOT』発売日は本当にうれしかったですよ。でも、これで当初の『新たなターゲットに向けた日本酒』が完成したわけではありません。今の時代はお酒に限らずどんな商品でも消費サイクルが早く、お客様の嗜好もどんどん変わります。発売後すぐにプロジェクトのロードマップを引き、発売直後の前進気勢をさらに加速させたいと考えていました。そこで総合研究所にいい技術シーズがないかを相談した時、出てきたのが伊出の見出した酵母<GW-02>でした」
伊出「今度は純米でやりましょうという依頼があった時、最初に挙げたサンプルにいいものがなくて。その時私が、とてもよいテイストを醸すけど、異臭を放ってしまう蔵付き酵母の研究をしていて、その異臭をなくした酵母<GW-02>がちょうど完成したところでした。こんな技術シーズもありますよと駆け込みで提案したところ、『これはおいしい!』と即採用になりました。ただこの酵母は、通常使っている酵母とは発酵のクセが異なり、商品化は非常に難題でした。総合研究所は醸造部に技術シーズを渡すまでが一般的なのですが、<GW-02>のときは何度も現場に足を運び、どうすれば酵母の力を引き出せるのか、つきっきりで検討を重ねました。醸造部からもスケールアップや運用の場面でアイデアを出してもらい、そのおかげで『THE SHOT』の新ラインナップに加えることができました」
THE SHOTの新ラインナップの製造に、蔵付きの酵母を採用
月桂冠株式会社の総合研究所が、酵母に燻製様の劣化臭(オフフレーバー)を生産させない新たな育種技術を開発。これにより、日本酒醸造で一般的に用いられている酵母以外からも、酒造りに適した酵母を育種できるようになり、これまでにない香味の日本酒など新たな製品の創出につながる成果となった。
月桂冠の蔵付きの酵母について
前例のない挑戦で新たなラインナップが加わる中、2年目のプロモーションにも変化が。広告宣伝課吉川の主導の下、営業とも連携した動きを見せます。
吉川 俊也 吉川「1年目のプロモーションで認知は広まり、販売店の「面」は広がりましたが、一方で、販売本数としての「点」の伸びについての課題も見えてきました。その理由は斬新な商品であるがゆえに、それがどんな日本酒なのか、まだまだお客様への浸透や、商品理解の促進が十分でないためでした。そこで、2年目は新ラインナップの登場に合わせ、40代が『THE SHOT』を飲むシーンにスポットを当てました。ブランドコンセプトをさらに掘り下げ、『自分の趣味に寄り添いその楽しみを加速させるためのお酒』として訴求。お客様のライフスタイルを打ち出したテレビCM・WEBサイトへと刷新しました。同時に、お客様の支持を獲得するために各営業拠点と本社が一丸となって、同じ方向性での活動ができるようにプロジェクトチームを結成。商品をあるべき売り場へ配置するために、課題や成功事例を全社で共有することで商談や提案の質を高め、採用に繋げる流れを全社で構築することが狙いでした。提案のネタとして、伊出さんの酵母開発秘話をオンラインで配信したりしましたね。これらが功を奏して、売り上げがアップした得意先や、一度カットになった得意先で復活採用をいただけたケースもありました。また『THE SHOT』を陳列する場所もカップ売場から小容量ビンコーナー、冷蔵コーナー、さらには酒類売場外へと展開するなど、新たな動きも出てきました。お客様の支持を獲得していこうと、チーム一体となってアプローチできたことが一番の収穫でした」