折り紙を深める
自分だけの作品づくりに挑戦する、
試行錯誤の先に大きな喜びが待っている。
創作折り紙は、人によって仕上がりのデザインにとても個性が出ます。リアルさを追求している作家さんもおられますが、僕の場合はできるだけシンプルに。そのモチーフの「特徴を抽出して、デフォルメする」ことにこだわっています。チワワだったら手足が短くて、おでこが出ていて、全体的にツンと澄ました雰囲気に仕上がるように。この作品は海外で小説の装丁にもなりました。
また猫も、細かなところをつくり込み過ぎず、フォルムを似せることで猫らしさを表現。ナマケモノは手が長くて、爪も長い、ちゃんと木などに引っかけられます。さらに首を傾げている「仕草」もナマケモノらしさを担う大切なポイントになっています。
実際、僕は動物を折るときに写真だけを参考にするのではなく、動物園や公園で動物たちの仕草を観察しています。植物も同じで、実物を平面ではなく立体的にとらえることを大切にします。フォルムや仕草などの特徴を自分なりに発見することで、自分だけの創作折り紙を完成させることができるのです。いつも目指しているのは、誰もが「ツルの折り紙といえばあのカタチ」と定番の作品を思い浮かべるように「あの動物といえば僕の作品」と思ってもらえる折り紙をつくることです。
創作したいモチーフの特徴や仕草を発見し、ある程度の完成イメージが固まったら、次は「折り方」を考える段階になります。僕の場合は、既存の折り図を見ないので、自分で方法を見つけ出すようにしています。とはいえ最初から頭の中に全体の設計図ができている訳ではなく、まず考えることは、表現したい特徴部分をカタチにするために、紙のどの箇所を使おうかということ。長い尻尾が特徴の動物であれば、折り紙のいちばん長い部分である「対角線」をそのパーツとして確保しようと考えます。
また、今までに折った作品の中から、目的のフォルムに近いものを見つけ出して、それを応用すれば完成できるんじゃないかと考えることもあります。ベースの知識量が増えると、創作力がぐんと高まっていきますので、みなさんもぜひ多様な作品づくりに挑戦して引き出しを増やしてください。手を動かしているうちに、思いもよらなかった作品が完成することもあって。すでに折り方が出来上がっているモチーフを制作中に、あれ?これ別のものに似てないか?と気づき、アレンジを加えていくのです。
たとえば犬のパグは、コアラに発展しました。顔を可愛く見せるために工夫した目を応用したんですね。さらにその目を活かしてインコも創作。これらは途中まで折り方が同じで、仕上げに向かってプロセスを変えています。こうすることで作品のキャラクターデザインが似てきて、シリーズ感が生まれます。
創作活動は試行錯誤の連続で、新しいことに挑戦するたびに新しい折り方を発見できるのがとても楽しいです。カメの甲羅のラインを綺麗に合わせたり、数学的に美しいと言われているアンモナイトの渦巻にある節の位置を整えたり。先人の方々が開発した折り方もあるのですが、それらを参考にせずに、発想を変えながら根気よく手を動かしているとピタリと収まる折り方にたどり着きました。自分の折り方を自分で見つけて完成させるって、めちゃくちゃ気持ちいいですよ。
さらに誰も折っていない腕時計をつくろうとして、まず既存の作品を画像検索で調べると、どの時計作品にも文字盤に針がありません。後からペンで描き足しているものばかりです。「ようし、だったら自分は針まで紙で折ってやろう」と挑戦したら、その先に新しい折り方が生まれました。初めてのことを目指すと、自分で工夫を重ねざるを得なくなるので、必然的に発見につながるのです。そんな探求に満ちた世界だから何年やってもまったく飽きずに、好きを楽しみ続けることができているのだと思います。むしろ腕が上がっていくほど、モチベーションが増幅していきます。正方形の一枚の紙の中には、まだまだ見つけられていない折り方が隠れているはず。その可能性の数だけ、折り紙の世界を広げていきたいです。
僕の代表作のひとつであるパンダの折り紙は、家族でパンダの番組を見ている時に生まれました。娘からリクエストされて、2時間の番組中に完成させたのです。またロボットの折り紙は、ブロック遊びでつくるロボットに夢中だった息子を振り向かせたくて創作。僕の折り紙づくりは、子供たちを喜ばせたいという思いが原点なのですが、それは作品の中に思い出としてずっと残っています。
そんな子供たちへの気持ちをさらに発展させたのが、折り紙の本にストーリーをつけたことです。動物なら「ペットパーク」という架空の動物園を描いて、その中では誰もが折り紙で好きな動物を増やしていけるという設定に。またロボットのシリーズ「オリロボ」も息子のリクエストで、敵キャラをつくったことから物語を膨らませていきました。
一部ご紹介しますと、登場するオリロボたちはペーパーAIという知性を持つ紙から生まれた存在で、最初は人間に役立っていたのですが、やがては暴走を始めて敵キャラが生まれたというお話です。折り紙に世界観をつくることで、自分の子供だけでなく、多くの子供たちが想像力を膨らませ楽しんでくれるコンテンツになったと思います。とはいえ本で紹介している作品は少しむずかしいので、あえて子供向けにはしませんでした。親が子供に折ってあげる、もしくは子供が親に聞きながらトライするなど、そこから親子のコミュニケーションが生まれてほしいと考えたからです。
THE SHOTを夫婦で飲んでみて、日本酒からは想像できない個性的な風味にふたりで驚きました。どれも飲みやすくておいしかったです。あえて順位をつけるとなると、夫婦ともに1位は黒の華やぐドライ〈大吟醸〉で一致。お酒は量を飲むタイプではないのですが、グビグビいきそうになりますね。そして僕の2位が艶めくリッチ〈本醸造〉。とろっと甘い風味が気に入りました。妻は爽やかホワイト〈うすにごり〉が2番だったみたいです。白はお酒とは思えないほど華やかなので、このあたりで好みが分かれるのかもしれません。僕は夜に創作活動をおこなっているのですが、時にお酒を飲みながら手を動かしています。お酒は創作のイメージを自由に膨らませてくれるんですよね。THE SHOTの「今までの日本酒の壁を超えていく」という志にはとても共感が持てますし、1本の量もちょうどいいので、これからは創作のパートナーにしていきたいと思います。
※両作品とも動画のチャプター箇所までが同じ折り方のシリーズ作品です。
【折り方の詳しい解説動画はこちら】