酵母・染色体数の醸造特性への影響を
月桂冠総合研究所が確認

2019年03月05日

月桂冠株式会社(社長・大倉治彦)では、清酒酵母の「染色体」が一般的な2本とは異なる異数性を持つ場合に、醸造特性への影響が生じることを確認、一部の染色体を重複させ3本にした株は、有機酸の一つであるリンゴ酸の生産が低くなり、淡麗辛口ですっきり飲みやすい酒造りに適していることがわかりました。月桂冠総合研究所(所長・秦 洋二)が確認したもので、染色体の種類と本数の組み合わせから絞り込むことで、科学的な裏付けをもとに、目的とする酒質の醸造に適した酵母を選抜する指標とできる可能性を見出したものです。

生物の染色体は通常、2本が一対となって存在しますが、清酒酵母の場合、増殖する際に染色体の不分離が起こりやすく、染色体が3本存在する異数体となりやすいとされています。月桂冠では昨年、このような異数性を持つ酵母に醸造特性の違いが特徴的にみられることを発表しており、今回、染色体の異数性がどのような影響を与えるのかを明らかにするために研究を進めました。各染色体に名付けられた番号で、2番目の染色体を重複させた実験用酵母を用いて醸造試験を行ったところ、リンゴ酸の生産が低く推移しました。清酒酵母についても同様の傾向が見られ、2番染色体の異数性がリンゴ酸の生産に影響を与えることがわかりました。

今後さらに、他の成分の消長についても、染色体の異数性との関係を見出すことで、これまでは実際に醸造してみなければわからなかった酵母の個性を、容易に判定できるようになればと考えています。
この研究成果は、「酵母の染色体異数性が清酒醸造に与える影響」と題して、「日本農芸化学会2019年度大会」(主催:公益社団法人日本農芸化学会)で、3月26日に発表します。

●学会での発表
学会名:日本農芸化学会2019年度大会(主催:公益社団法人日本農芸化学会)
発表日:2019年3月26日
会場:東京農業大学 世田谷キャンパス(〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1)
演題:酵母の染色体異数性が清酒醸造に与える影響
発表者:○堀田 夏紀1,小高 敦史1,松村 憲吾1,杉山 峰崇2,笹野 佑3,原島 俊3,秦 洋二1(1月桂冠・総研、2大阪大学大学院・工学研究科、3崇城大学・生物生命学部)(○印は演者)

●月桂冠総合研究所について
1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造りの基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいる。

※ニュースリリースに掲載している情報は、発表日現在のものです。最新の情報とは、異なる場合があります。