月桂冠総合研究所
清酒酵母がリンゴ酸を高生産する機構を解明

2019年09月09日

月桂冠株式会社(社長・大倉治彦、本社・京都市伏見区)の総合研究所は、7つの遺伝子「GID1」「GID2」「GID3」「GID4」「GID5」「GID8」「GID9」のいずれかが欠損した清酒酵母がリンゴ酸を多く生産することを確認しました。これらの遺伝子の欠損により、リンゴ酸を生成する酵素が細胞内に蓄積することで、リンゴ酸をより高生産するという機構を、大阪大学大学院との共同研究により初めて明らかにしました。

さわやかな酸味を持つリンゴ酸は清酒の味わいに寄与する成分であり、月桂冠では様々なリンゴ酸高生産酵母を育種してきました。これまでに、育種したリンゴ酸高生産酵母について解析を行い、遺伝子「GID4」が機能しなくなることがリンゴ酸の高生産をもたらす要因であることを明らかにしました。今回、「GID4」と連動して働く他の遺伝子の影響を調べた結果、遺伝子「GID4」のほか「GID1」「GID2」「GID3」「GID5」「GID8」「GID9」のいずれかが欠損し正しく機能しない株でも、元の株に比べて、リンゴ酸の生産量が多く、リンゴ酸生成酵素を細胞内に蓄積することでリンゴ酸を高生産していることを確認しました。

今回の研究では、リンゴ酸高生産に関係する遺伝子は「GID4」だけでなく、他にも多数存在することを明らかにしました。これら遺伝子解析の情報を参考にして、リンゴ酸高生産酵母を効率的に育種することができれば、さわやかな酸味の清酒の開発や、甘酸っぱくフルーティな清酒の製造などへの応用が期待できます。

この研究成果は、「出芽酵母におけるGID複合体遺伝子の変異がリンゴ酸生成とタンパク質発現に与える影響」と題して、「第71回 日本生物工学会大会」(主催:日本生物工学会)で、9月17日に発表します。

●学会での発表
学会名:第71回 日本生物工学会大会(主催:日本生物工学会)
発表日時:2019年9月17日 13:54~14:06
会場:岡山大学 津島キャンパス(岡山県岡山市北区津島中)
演題:出芽酵母におけるGID複合体遺伝子の変異がリンゴ酸生成とタンパク質発現に与える影響
発表者:○根来 宏明1, 松村 憲吾1, 松田 史生2, 清水 浩2, 秦 洋二1, 石田 博樹11月桂冠・総研, 2阪大院・情報)(○は演者)

●月桂冠総合研究所について
1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般の基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいます (所長=石田 博樹、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)。

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