生ビールは、発酵と貯酒のあと、精密ろ過機でろ過して酵母や酵素を取り除くだけで、熱殺菌をしていないビールのことです。商品には、「生」の表示と共に「熱処理していません」「非熱処理」と併記されています。
欧米には生ビールに相当する言葉はありません。日本では生ビールを「ドラフトビール」とも呼んでいますが、ドラフトのもともとの意味は樽詰ビールをさす言葉で、熱殺菌の有無とは関係ありません。ドラフトビールの定義は国によってさまざまです。壜や缶に詰めたもので熱殺菌しないビールを生(ドラフト)と呼ぶのは日本とアメリカだけです。また、熱殺菌をしていても、樽に詰めたものは生(ドラフト)ビールとする国もあります。
パスツールの低温殺菌法の発見(1876年)以来、ビールは壜や缶に詰めて熱殺菌するのが普通でした。その後、微生物学の発達や精密ろ過技術の開発に伴い、壜詰や缶詰の生ビールが発売されるようになりました。
日本では1960年代後半から、各社が壜詰め生ビールを本格的に発売し始めました。その後、生ビールの比率は伸び続け、1977年には10%台、1987年には50%台となり、1993年には70%を超えました。1996年、大手ビールメーカーがラガービールを生に切り替えて以来、日本における生ビールの比率は99パーセントを占めるまでになっています。
生と熱処理ビールの味覚の差については、生の方がのどごしがよいということが一般的に言われています。ビール各社では「(生と熱処理は)酵素の働きを止める手法の違いにすぎず、味覚に影響はない」「基本的には変わらない」「(熱処理によって)『軽み』が消え『重み』が加わり、色度が上がる」などとコメントしています。
生(ドラフト)ビール 国による定義の違い(○印は「生ビール」)
| 容器 |
日本 |
アメリカ |
オランダ・イタリア スイス・ベルギー デンマーク・イギリス 西ドイツ |
ニュージーランド カナダ・メキシコ |
| 熱殺菌する |
樽 |
× |
○ |
○ |
× |
| 壜・缶 |
× |
× |
× |
× |
| 熱殺菌しない |
樽 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 壜・缶 |
○ |
○ |
× |
× |
(参考文献)
・日本農芸化学会・編『お酒のはなし』学会出版センター(1994年)
・日経流通新聞「国産ビールの生比率−3月99.6%に急伸」(1996年4月16日付)
(関連記事)
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