1.戦前(第二次世界大戦以前)までの活動
1.火災、水害時の活動
(1)消防署を誘致
江戸時代には、「応龍水」(おうりゅうすい)と呼ぶ手動式消防ポンプを用意して、近隣火災のたびに出動していました。1921年(大正10年)には消防自動車(平井式消防ポンプ)を購入しました。昭和初期、当時の伏見市で消防署設置が持ち上がった際、市に土地を寄付し、現在の伏見消防署・南浜消防出張所が置かれました。
(2)濠川氾濫のたび近隣へ非常食を舟で配る
宇治川の上流に天ヶ瀬ダムができるまで、月桂冠本社周辺(京都市伏見区)はたびたび洪水に見まわれました。その際に、にぎり飯を総動員で作り、2隻の舟で冠水した家々に配って回ったと伝えられています。
2.京都府立医大伏見分院(旧伏見町立病院)を設立のため土地や資金を寄付
1923年(大正12年)、11代目の大倉恒吉は、伏見に病院をつくるための土地(1,228坪)と資金(10万円)を当時の伏見町に寄付、これをもとにして伏見村上町、西大手町、周防町にまたがる土地に、1924年、伏見町立病院が建設されました。その後も恒吉は土地や資金の追加寄付を続けました(1943年からは京都府の施設となり、1997年に閉院)。
3.御香宮境内に参集館(地域公会堂)を建設
1934年、伏見地区の集会所として御香宮神社境内に参集館が建設されるにあたり、その費用を寄付しました。
2.現在の活動
1.地域活動
(1)酒蔵コンサート(1986年~)、酒蔵寄席(1988年~)
「月桂冠酒蔵コンサ-ト」(主催・月桂冠株式会社)は1986年から開催、これまで京都交響楽団のメンバーによる演奏や、ウィーンフィルハーモニー首席ヴァイオリン奏者、フーベルト・クロイザマー氏らを迎えました。また、ジャズピアニスト・山本恵理(ピアノ)さんのトリオをニューヨークから迎えジャズコンサートを行いました。幕間には吟醸酒などのきき酒を実施しています。
「伏見酒蔵寄席」(主催・伏見観光協会)は、1988年から開催。これまで、桂米朝、桂文枝、桂春団治らが来演されました。
(2)「濠川クリーンアップ活動」(1987年~)
毎年1~2回 約500名の社員が集まり、濠川(ほりかわ)堤の清掃を行ってきました。月桂冠が創業350年を迎えた1987年春、記念事業として始めました。地元団体、住民の方々の参加も見られ、年々広がりを見せるようになっていきました。こうした活動がきっかけとなり、行政の環境整備計画が促進され、濠川河畔の遊歩道の設置などにつながりました。
2003年9月からは、京都市まちの美化市民総行動実行委員会(会長・大倉敬一・月桂冠会長)が主催する、市民あげての美化活動に合流する形で、地元自治会や女性会、老人クラブなどと共に実施するようになりました。
伏見城の外濠だった濠川は、宇治川、淀川へとつながっています。
伏見城築城(1594年)の際、宇治川の水を引き込み、外濠として構築されました。月桂冠大倉記念館や隣接する内蔵酒造場のある南浜一帯は、かつては水陸交通のターミナルとして、三十石船が発着していました。明治以降、川沿いの大名屋敷跡に酒蔵が次々と建てられました。現在の月桂冠昭和蔵(京都市伏見区片原町)は紀州藩、北蔵(同・下板橋町)は尾州藩、大賞蔵(同・東堺町)は薩摩藩の伏見屋敷でした。
(3)景観の保全と整備
・本宅(1828年、文政11年)、旧本社(1919年、大正8年)の保存
・景観に配慮した新本社(1993年、平成5年9月)の建設
月桂冠の本社一帯は、現在でも古い建物をそのまま残し、江戸、明治、大正、昭和、平成と各時代の建物が並んでいます。
月桂冠大倉記念館の公開(1982年)に先立って、周辺の整備をしました。この一帯は、「京都美観風致賞・特別賞」受賞 (1987年)、「京都市・都市景観賞・市長賞」 (1994年)を受賞、市民が選ぶ「京都百景」(1983年)、「重要界わい景観整備地域」(1997年)にも指定されています。
環境省の「かおり風景100選」に「伏見の酒蔵」として選ばれました(2001年)。「豊かな香りとその源となる自然や文化などを将来に残し、伝えていく」ことを目的に全国から公募され、とくに優れた「かおり風景」として選ばれたものです。「伏見濠川の柳並木」が「京都市自然100選」(2000年1月)に、さらに、「遊歩百選(行ってみたい、歩いてみたい、日本の100か所)」のひとつに京都市伏見地区が選ばれました(主催・読売新聞、後援・総務省、環境省、国土交通省、農林水産省ほか、2002年8月)。
2002年には京都市による景観整備の一環として、記念館に面した市道から旧本店にかけての電柱を地中化し、土色に近い色彩でカラー舗装が行われました。
また、経済産業省が認定する「近代化産業遺産」として、月桂冠から「月桂冠大倉記念館」と同館所蔵の「伏見の酒造用具」、「内蔵酒造場」「月桂冠旧本社」「月桂冠昭和蔵」「旧・大倉酒造研究所」の6件が2007年11月に選ばれました。近代化産業遺産は、幕末から昭和初期にかけて、地域の産業近代化や技術発展に貢献した施設を認定するもので、月桂冠の施設は「日本酒製造の近代化を牽引(けんいん)した灘・伏見の醸造業の歩みを物語る近代化産業遺産群」のひとつとして紹介されています。
「近代産業遺産」に認定 月桂冠大倉記念館、内蔵酒造場、旧・大倉酒造研究所など6件 (月桂冠ニュース2008年1月18日)

これらの建物のうち月桂冠旧本社では、NPO法人・伏見観光協会が「おくつろぎ処・おみやげ処・あんない処 伏見夢百衆(ふしみゆめひゃくしゅう)」(TEL:075-623-1030)として、喫茶、土産販売・観光案内所を運営しています。
また、旧本社に隣接する明治時代の旧酒蔵(1906年築)は、2002年8月から2005年3月まで、バイオベンチャー企業を支援する「京都市酒蔵バイオVIL」(VIL=ベンチャービジネス・インキュベーション・ラボラトリー)に貸し出し、 バイオインフォマティクス(生命情報科学)関連のベンチャー企業が活動していました(現在は「月桂冠酒蔵オフィス」として運営、いくつかの企業が引き続き入居しています)。 大正時代の旧酒蔵(1914年築)は、飲食施設(「居食屋 京の台所 月の蔵人」TEL:075-623-4630)として利用されています。
(4)災害時の支援
古くは関東大震災(1923年)の際には、東京、横浜両市に義援金を贈ると共に、救援物資や清酒を届けたり、救援用米の精米も行いました。
阪神淡路大震災(1995年)の際には、伏見酒造組合の救援活動として、大型タンクローリー車を派遣、病院や近隣住民向けの給水を行いました。雲仙普賢岳噴火(1990年)の際には義援金を、有珠山噴火(2000年)の際には避難住民に缶入り甘酒を届けました。
新潟県中越地震(2004年)の際には、特に被害の大きかった地域に対してタンクローリー車による給水支援を行いました。
東日本大震災(2011年)の際には、タンクローリー車による給水支援のほか、物資の提供や義援金の寄付、エコカップ震災復興支援キャンペーンなどを実施しました。
東日本大震災:被災地への支援 義援金寄付の報告(月桂冠ニュース:2011年6月3日)
1998年には、京都市が掲げた「災害に強いまちづくり」に呼応し、伏見区の南浜、板橋、下鳥羽の各学区の自主防災会と「大規模な災害発生時における地域協力についての覚書」に調印しています。大規模な災害が起こった際に、近隣学区の人命救助や給食給水の活動支援、機材の貸出しを行うというものです。さらに2000年には、京都市と伏見酒造組合の間で「災害時の水の供給に関する覚書」を交わすなど、地域の方々と酒造会社の取り組みを行っています。
(5)山城テニス選手権大会(月桂冠カップ)
スポーツを通じた社会・地域貢献活動。京都府の宇治、城陽、伏見の6会場で開催。高校生から壮年まで、幅広く参加いただいています。
2.事業関連
(1)インターネットホームページで酒に関する情報を提供(1997年~)
http://www.gekkeikan.co.jp/
酒の種類、製造工程、飲み方・使い方、歴史、統計など酒に関する情報を閲覧できるコーナー「お酒の博物誌」を掲載。酒情報のデータベースとして、酒をお求めになるお客様や学生の皆様などに広く利用されています。同コーナーは平成9年度(1997年)、「消費者教育教材資料表彰・優秀賞」(財団法人・消費者教育支援センター)を受賞しました。
(2)「月桂冠大倉記念館」の開設(1982年~)
1987年(昭和62年)、創業350年を記念して、酒蔵の一部を酒の博物館として一般公開しました。来場者は年間11万人(2003年度)です。「京都市有形民俗文化財」(1985年、昭和60年)に指定された酒造用具6,120点のうち、約400点を展示しています。1997年(平成9年)、四季醸造のミニプラント「月桂冠酒香房」を、隣接する昔ながらの酒蔵内に開設、年間を通じて酒造りを見学いただけるようになりました(月桂冠酒香房のご見学は前日までに要予約)。2004年3月には施設を改装、酒器展示を追加しリニューアルオープンしました。
(3)酒造りに関するビデオを寄贈(1997年)
現在の酒造工程を紹介した製造編『おいしいお酒のできるまで』、伏見の酒造りと月桂冠の歴史を紹介した『大倉治右衛門が語る月桂冠の360年』、お酒の正しい飲み方を漫才でわかりやすく説明する『日本酒のそれ、ほんま?』、学校教材用の『伏見の酒づくり』の4本の月桂冠PR映画を1997年制作。
学校教材編『伏見の酒造り』は、社会科教材として京都市小学校社会科教育研究会の監修により制作、京都市内の小学校や博物館、図書館に寄贈しました。 製造編、企業紹介編は、ハングル版、中国(北京)語版、英語版、フランス語版も制作しました。
『大倉治右衛門が語る月桂冠の360年』は、1998年、「第36回日本産業映画・ビデオコンクール」で「日本産業映画・ビデオ賞」を受賞(日本産業映画協議会・主催、文部省と通商産業省、毎日新聞社が後援)。同作品は、カナダのケベック州で開催された「国際農業ビデオコンクール」でも「銀賞」(プロモーションビデオ部門30作品のうち第2位)を受賞しました(1998年)。
(4)酒造り唄の保存
酒造りの作業時に歌われた酒造り唄を保存し、記録することで、日本の酒造り文化を広く知ってもらうことを目的に「月桂冠酒唄保存会」を結成しました(1975年)。イベントや祝賀行事などに出演、1992年にはアメリカ・ボストンで開かれた「ジャパンフェスティバル」で酒唄を披露しました。
(5)酒造塾(1986年~)
日本酒のサービス、販売に携わる方を対象に、泊まり込みで吟醸酒造りを体験していただくものです。月桂冠の杜氏や技師が指導。ソムリエ、海外の方にも参加していただきました。
(6)地下水保存活動
伏見の酒造技術者の集まり「伏見醸友会」の一員として地下水保存活動を行っています。

