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鮮度感を楽しむ夏の冷用酒「生酒」
冷用酒発売80年 常温流通生酒発売30周年

2014年7月24日

月桂冠「冷用酒」昭和初期チラシ

月桂冠株式会社は、「冷用」を謳ったびん詰清酒を1934年(昭和9年)6月1日に発売して以来80年となりました。また、1981年(昭和56年)に、火入れを一切しない生酒をチルド(保冷)流通で発売しました。さらに1984年(昭和59年)、日本酒で初めて常温で流通可能な「生酒」を新発売して30年周年となりました。

【生酒・生貯蔵酒の需要が増加】

夏の暑さの中、涼を取るためのアイテムとして現在、日本酒では生酒や生貯蔵酒、発泡性を持つものなど、さまざまな冷用の酒が販売されています。中でも生酒はフレッシュでフルーティーな香味を、和食を始めとする料理とあわせて贅沢に味わうことができる酒として選ばれています。生酒は、酒もろみをしぼった後、火入れと呼ぶ加熱処理を全くしないお酒です。超精密ろ過技術など鮮度感を保つための高度な技術の導入によって、蔵元でしか味わえなかったしぼりたての生酒の風味や鮮度感を楽しめるようになりました。

生酒・生貯蔵酒の上位銘柄出荷量を調査した資料(日刊経済通信社「2013年上位銘柄の出荷動向」『酒類食品統計月報』2014年2月号)によると、2012年、2013年と連続して前年の出荷量を上回っており、2013年には同上位40社のうち19社が増産し、生酒類の飲用意向が高まっています(月桂冠は前年比115%と上位20社の中では伸び率が1位)。

【80年前に冷用酒発売】

月桂冠が1934年(昭和9年)、「冷用」を謳ったびん詰清酒を発売した当時、一升びん、7デシリットルびん、3デシリットルびんの3種類を商品化しており、同年度の『壜詰積送簿』には「冷用月桂冠7dl壜詰1/2打(6本)入10函」と記帳されています。

冷用酒をアピールする当時のチラシには「冷用美酒月桂冠は、最新式冷凍装置の昭和蔵で、月桂冠イースト(酵母)によって新たに夏向きのお酒として醸出せられた純粋の生一本。実に待望久しき冷用酒、美味芳烈…」と熱のこもったコピーが見られます。「召し上がり方」は「井戸に釣るか、冷蔵庫へ」とし、「御下物(酒肴)は別に要らないが、果物などは結構でございます」と斬新な楽しみ方も紹介されていました。別のチラシには、床几(しょうぎ)の上で冷酒を楽しむ様子が描かれています。

月桂冠:冷酒販売用冷蔵庫(左写真)「冷用」をうたったびん詰め清酒が売り出された当時、冷酒販売用の冷蔵庫が、小売店や料飲店の店頭に置かれた。外側は槇材で囲われ、内側は真鍮板で保護されており、中に10リットルほどの酒が入るホーロー製の容器が据え付けられている。

【常温流通可能な生酒の発売30周年】

生酒、生貯蔵酒のできるまで日本酒の需要は冬季に高まり、多彩な商品が市場に出揃います。一方で、夏場に合った味わいの日本酒飲用の意向に応えることができる商品として、「生酒」(なまざけ)や「生貯蔵酒」(なまちょぞうしゅ)といった商品が1980年代頃から発売されるようになりました。

日本酒では通常、貯蔵する前と、貯蔵を終えて容器詰めの際に、60度ほどの熱をかけて「火入れ」と呼ぶ加熱処理を行います。「生酒」は火入れを全くしない酒であり、それに対して「生貯蔵酒」は生酒の状態で貯蔵し、容器詰めの際に1度だけ火入れを行います。加熱殺菌しない「生酒」の商品は、冬期に期間を限定して販売されているものがありますが、夏向けの冷酒としては品質管理がしやすく技術的にもハードルの低い生貯蔵酒が多く商品化されています。

月桂冠では、1981年(昭和56年)、火入れを一切しない生酒(当時の酒質は生酒の原酒)を、チルド(保冷)流通で地域・業態(飲食店)を限定して発売、翌1982年(昭和56年)には地域を拡大して販売し始めました。さらに1984年(昭和59年)、鮮度感を保つための高度な技術の導入により、常温で流通可能な「生酒」を日本酒で初めて新発売しました。

【生ビールに相当するのは生酒?生貯蔵酒?】

ビールの場合、「生ビール」と表示できるのは、熱処理をしていないものに限られ、「ビールの表示に関する公正競争規約」では<熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない>と定められています(日本国外では、樽から注いだビールを「生」とするなど異なる定義も見られます)。

日本酒では「生ビール」に相当するものとして「生酒」があり、「清酒の製法品質表示基準」には、<一切加熱処理をしない清酒>とされており、一方、「生貯蔵酒」は<加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒>とされています。

ビール 生ビール
及びドラフトビール
熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない。(ビールの表示に関する公正競争規約)
日本酒 生酒 製成後、一切加熱処理をしない清酒である場合に表示できるものとする。(清酒の製法品質表示基準)
生貯蔵酒 製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒である場合に表示できるものとする。(清酒の製法品質表示基準)

【生酒の常温流通を可能にした技術】

常温で流通可能な「生酒」は、超精密ろ過により酒中の麹を由来とする酵素を取り除くことで、酒質の変化を少なくし、しぼりたての鮮度感を保持しています。酒をしぼったままの状態で火入れをせずに貯蔵すると、麹の酵素の働きにより酒中の糖分、タンパク質が分解され、時間が経つにつれて大幅に酒質が変化していきます。 たとえ冷蔵保存をしていても酵素は働き、酒の中の糖分、タンパク質などがさらに分解され、甘味が増して「甘ダレ」となったり、不快な「ムレ香」が生じるなどの変化が生じます。通常の酒の場合は、火入れを行うことでこの酵素の働きを停止させます。生貯蔵酒の場合も、容器詰めの際に1度だけ火入れを行うことから、酵素による変化を止めています。

一切火入れを行わない生酒の場合には、超精密ろ過技術(限外ろ過)により、酒中の酵素を90パーセント程度まで取り除き、酒質の変化を少なくして鮮度感を保持することで常温流通ができるようにしており、賞味期間も8カ月としています。さらに、酵母や火落菌の除去にはミクロ(100万分の1ミリ)フィルターを活用した高度なろ過技術を用い、容器詰めはクリーンルーム(無菌室)の中で行います。この技術と生酒普及の業績に対して、月桂冠は1986年(昭和61年)、日本醸造協会の「石川弥八郎賞」を受賞しました(受賞タイトル「生酒の常温流通に関する技術の開発と普及」)。

生酒の超精密ろ過を行う限外ろ過機(右写真)生酒の超精密ろ過を行う限外ろ過機。縦のパイプの中に、何本も束になった細いチューブ状の膜があり、これで酒中の酵素を取り除きます。

【「贅沢に味わいたい」という意向が最多】

生酒生酒や生貯蔵酒の容器として主流となっている小容量びんの日本酒を飲用される方を対象にした月桂冠の調査によると、「贅沢に味わいたい」という意向が市場規模の約半数を占めることがわかりました。このような意向を受け、蔵元でしぼったまままの本格的な味わいを常温でお届けできる「生酒」(280ミリリットルびん)を、今年3月に新たに発売しました。流線形を取り入れた多面カットの洗練されたデザインのボトルに、フレッシュな香味の生酒を詰めています。 食事と共に、少し贅沢に小容量びんに詰めた日本酒を味わいたいという、お客様の「プチ贅沢」な晩酌シーンに合わせて、このクラスの生酒では珍しい、洗練されたイメージの多面カットボトルに詰めて商品化しました。びんの正面には「生酒」の文字を毛筆調で書き表し、和の雰囲気を醸し出しています。その背景に は、金色で描いた「月桂冠」の文字と月桂樹の冠をかたどった円形のローレルマークを配すると共に、「鮮度際立つ」と表記しています。

月桂冠では、1984年(昭和59年)に、超精密ろ過技術の応用により日本酒で初めての常温流通が可能な「生酒」を発売したのち、1992年 (平成4年)に「生貯蔵酒」を発売、以来、小容量びん詰めでレギュラークラスの生酒と生貯蔵酒を並行して販売してきました。今年3月の「生酒」(280ミリリットルびん)の新発売を機に、レギュラークラスの生酒・生貯蔵酒を「生酒」に一本化し、しぼりたての鮮度感が味わえる点を訴求しています。

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