月桂冠総合研究所×ニチレイ共同研究

口から鼻孔へ抜ける香気「レトロネーザルアロマ」が
日本酒の美味しさへ与える影響

アルコール濃度が低いほど、吟醸香を感じやすくなる傾向を発見

2022年08月19日

月桂冠株式会社(社長・大倉治彦、本社・京都市伏見区)総合研究所は、株式会社ニチレイ(社長・大櫛顕也、本社・東京都中央区)との共同研究により、日本酒に含まれる華やかな香気成分(吟醸香のひとつ酢酸イソアミル)がアルコール濃度の違いによって、飲酒時に口腔内から鼻孔へ抜ける香り「レトロネーザルアロマ」にどのような影響を及ぼすかを確認しました。その結果、日本酒のアルコール濃度が低いほど、吟醸香の感じやすさが高まることを発見しました。今回の研究成果は、「日本酒のアルコール度数がレトロネーザルアロマに与える影響」と題して、日本味と匂学会第56回大会(会期2022年8月22日~24日)で発表します。

日本酒のアルコール濃度を変えて香気成分を定量
ヒトが匂いを感じる経路は2種類あり、1つは鼻先から入ってくる香り「オルソネーザルアロマ」の経路、もう1つは飲食物を喫食して、口腔内から鼻腔へ抜ける香り「レトロネーザルアロマ」の経路です。中でも、「レトロネーザルアロマ」は喫食中の美味しさへの寄与が大きく重要であるものの、日本酒ではこれまで定量的な検討がなされてきませんでした。
そこで、「レトロネーザルアロマ」の独自分析装置MS Nose®(エムエスノーズ)を有するニチレイと共同研究を行い、月桂冠が日本酒の醸造と官能評価を、ニチレイが飲酒時の「レトロネーザルアロマ」測定と分析を担当しました。
飲酒時には日本酒から様々な香気成分が口腔内で揮発することにより、「レトロネーザルアロマ」として感知されます。今回の実験ではアルコール濃度と揮発の関係に着目し、試験を行いました。MS Nose®で実際に口腔内において揮発した酢酸イソアミルやイソアミルアルコール*を測定したところ、アルコール濃度が低くなるにしたがってイソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比率が高くなり、吟醸香を感じやすくなる傾向があることがわかりました。人が酒の香味を確かめる官能評価試験でも、アルコール濃度が低い方が酢酸イソアミルをより感じやすくなるという結果となりました。
日本酒飲酒時におけるアルコール濃度と香気成分との関係を定量的に明らかにした今回の成果は、飲酒時により吟醸香を感じる日本酒の開発につながるだけでなく、吟醸香の高い日本酒と相性の良い食品の開発にもつながる成果と言えます。

*:日本酒醸造中に、酵母がつくる香気成分。酵母によってさらに吟醸香のひとつである酢酸イソアミルに変換される。イソアミルアルコールは日本酒らしさに寄与する成分であるが、多すぎると酢酸イソアミルを感じにくくなる。

学会での発表

学会名:日本味と匂学会 第56回大会(主催:日本味と匂学会)
日時:2022年8月22日~24日 ポスター発表
会場:仙台国際センター
演題:日本酒のアルコール度数がレトロネーザルアロマに与える影響
発表者:〇竹内美穂¹, 根来宏明¹, 石田博樹¹, 本田莉絵², 浅野紀子², 石井寛崇², 亀井誠²(1月桂冠・総研, 2ニチレイ)(○印は演者)

日本味と匂学会
味と匂に関する科学の広範な研究の進展をはかることを目的とした学会で、1967(昭和42)年に開催された「味と匂のシンポシアム」が前身。米国のAChemS(Association for Chemoreception Sciences) および欧州のECRO(European Chemoreception Research Organization)など関連のある国際的学術団体と共同して、味および匂に関する研究の進展に寄与しています。

月桂冠総合研究所

1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から業界に先駆けて設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般の基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいます(所長=石田博樹、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)。

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