ニューロマーケティングでひもとく「日本酒×炭酸」

~炭酸が感性と「おいしさ」に与える影響を検証~

2026年10月02日

月桂冠株式会社(社長・大倉治彦、本社・京都市伏見区)総合研究所は、日本酒に炭酸を加えたときの感性や好ましさの変化を、脳波等の生理指標と主観評価を組み合わせて検証しました。2025年に発表した、アルコール度数や香味の違いが日本酒飲用時の感性に与える影響に関する研究の続報です。

月桂冠総合研究所×静岡県立大学 低アルコールが引き出す、日本酒の吟醸香 香りの感じ方の変化を嗅覚受容体レベルで解析(ニュースリリース:2025年9月24日)
> https://www.gekkeikan.co.jp/company/news/detail/597/

 
今回、特性の異なる2種類の日本酒について炭酸の有無を比較したところ、酒質によって異なる感性の変化や生理反応が見られ、炭酸が日本酒の「おいしさ」や心地よさを引き出す可能性が示されました。

背景
日本酒のおいしさは、味や香りだけでなく、飲んだときに感じる心地よさや気分の変化など、さまざまな感覚が重なって形づくられます。一方、こうした無意識の反応や瞬間的な感性の変化は、アンケートなどの主観評価だけでは十分に捉えにくい場合があります。

月桂冠総合研究所では、脳波などの生体反応と主観評価を組み合わせ、飲用時の無意識の反応や感性を客観的に捉える「ニューロマーケティング」の手法を用いた研究を進めています。前報では、アルコール度数の異なる日本酒を飲用した際の脳波を測定し、主観評価と生理指標を組み合わせることで、日本酒の「おいしさ」を多角的に評価できる可能性を示しました。
今回は、日本酒メーカーと流通業者の任意団体「日本酒需要創造会議」による「サケハイ」提案の潮流も踏まえ、炭酸割りという新しい飲み方に着目し、科学的に検証、訴求することを目指しました。

日本酒×炭酸が感性に与える影響を検証
アルコール度数5度の甘口・濃醇タイプと、アルコール度数7度のやや辛口・やや淡麗な純米酒の2種類を用い、それぞれ炭酸あり・なしの条件で飲用時の反応をintercross415(インタークロス社製 脳波、心電図、呼吸などの計測を行うミニチュアDAQターミナル)を用いて生理反応を捉えました。加えて「おいしさ」「飲みやすさ」などの主観評価も行い、炭酸による飲用体験の変化を多角的に解析しました。
今回もお酒や炭酸飲料に親しみのある「ライトユーザー(日本酒を含むアルコール飲料を時々飲用する層)以上」を対象に、酔いや体位の影響を受けることなく安定した計測を行いました。

飲用したサンプル

各試料の飲用量15mL、飲用順序はランダム化(炭酸・非炭酸は交互に提示)して実施しました。

解析指標
・脳波データ(左右前頭部の脳波活動のバランス等)
左右前頭部の活動バランスを表す指標*を用い、飲用時の「心地よさ」や「気分の変化」を客観的に推察しました。
・自律神経データ(心拍・心拍変動)
心拍数やその微小な変化(揺らぎ)を解析し、身体のリラックス状態や自律神経への影響を評価しました。
・多角的なデータによる検証
飲んだ後のアンケート(主観評価)に、脳波や自律神経の生体データ(客観指標)を組み合わせることで、炭酸による飲用時の変化を総合的に検証しました。
*左右前頭部の脳波活動の偏り、バランスから感性変化を推定する指標

被験者
20代の男女13名

脳波等の生体データによる感性評価で見えた日本酒×炭酸の「おいしさ」の正体
炭酸で変わる「おいしさ」と「心地よさ」等を検証した結果、炭酸を加えることで感性の変化や生理反応がより明瞭に現れ、その現れ方は日本酒の酒質によって異なることがわかりました。

アルコール度数5度、甘口・濃醇タイプの清酒
脳波解析から、炭酸刺激が「リラックス」した状態から「すっきりリフレッシュ」した状態へと感性・生理状態を切り替えるきっかけとなることが示唆されました(図(A))。また、炭酸入りの条件では「おいしさ」「飲みやすさ」の主観評価も高く、この酒質と炭酸の相性の良さがうかがえました。

アルコール度数7度、やや辛口・やや淡麗な純米酒
炭酸を加えることで味わいが立体的に感じられ、脳波等の生理指標から、非炭酸で見られた味のぼやけが解消され、身体面をリラックス方向へ導く傾向も確認されました(図(B))。味わいへの馴染みの違いから主観評価は二分したものの、生理的には心地よく受け入れられている可能性が示唆され、5度の甘口・濃醇タイプとは異なる感性や生理反応の現れ方が確認されました。

図:炭酸の有無による脳波の生理指標の変化

主観評価と生理指標から見える「日本酒×炭酸」の可能性
主観評価に脳波等の生理指標を組み合わせることで、日本酒の「おいしさ」や心地よさを多角的に捉えられる可能性が改めて示されました。特に炭酸入り日本酒は感性の変化が現れやすく、エントリー層にも親しみやすい、従来の日本酒イメージを刷新する飲用スタイルとして期待されます。
近年、さまざまなアプローチで日本酒の楽しみ方が再評価されています。今回得られた日本酒×炭酸の科学的・客観的な知見を、日本酒文化全体の盛り上がりや新たな飲み方の提案の一助とするとともに、今後も多角的な評価手法の探求を続けていきます。さらに、多様な飲用シーンや嗜好に寄り添う商品開発・提案につなげることで、より多くの方に日本酒の魅力をお届けしていきます。

学会での発表

本研究成果は、2026年開催の日本醸造学会若手シンポジウムにて発表します。

学会名:日本醸造学会 第18回 若手シンポジウム
日時:2026年10月7日
会場:北とぴあ(東京都北区)
演題:日本酒×炭酸の「おいしさ」をニューロマーケティング的手法で評価する
発表者:〇大塚郁子、小高敦史、石田博樹 (○印は演者)

月桂冠総合研究所

1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から業界に先駆けて設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般の基礎研究、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで、幅広い研究に取り組んでいます(所長=石田博樹、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)。

※ニュースリリースに掲載している情報は、発表日現在のものです。最新の情報とは、異なる場合があります。