梅も盛りを過ぎて、間もなく桜の時期となる。開花情報に心はずむこの季節にぴったりなのが「京(みやこ)しぼり 祝米 大吟醸」だ。京都産の名高い酒米『祝(いわい)』と伏見の名水「伏水(ふしみず)」で仕込んだ大吟醸。膨らみのあるまろやかな口当たりと華やかな吟醸香は口中でほどよく重なり、余韻を残す。風味を体現する美しい瑠璃色のボトルは花見席に華を添えること間違いない。
「『祝』は京都生まれ・京都育ちの品種。くせがなく料理にも合い、誰にも愛されるお酒になります」と語るのは生産管理部資材課長の嘉屋正彦さん。数ある酒造好適米の中でもバランスの良さが『祝』の特徴だという。
「ただ、『祝』は水を吸うのが早いので、製造過程では気を使うんですよ」と醸造部一号原料発酵グループ・チームリーダーの熊田裕次さん。繊細な性質ゆえに、米を洗い、水に漬ける工程から気をつけなければならない。水を吸いすぎると、発酵過程で米が溶けやすくなり、酵母が働きにくくなって、この酒の持ち味であるまろやかな風味をじっくりと醸すことが出来ないからだ。そのため、「限定吸水」と呼ぶ方法を用いる。手間のかかる分、生産量は限られるのだという。

造り手
(写真左から)
生産管理部
資材課長・嘉屋 正彦
醸造部
熊田 裕次
今回、このお酒に合わせて選んだのは、利休・秀吉の時代に名を馳せた駿河屋の伝統を受け継ぐ、創業1934年「二條駿河屋」の「松露(しょうろ)」。粒あんを白い糖蜜で包み、トリュフのようなキノコ(松露)をかたどった上品な和菓子だ。
「松露」/二條駿河屋
京都市中京区二条通新町東入大恩寺241-1
TEL:075-231-4633

ひと口かじると、粒あんの小豆が大きいのに驚く。そこに「京しぼり 祝米 大吟醸」を含むと、そのフレッシュな口中香とともに甘味が溶け合い、見事なマリアージュができあがる。丹波産小豆の旨味を、このまろやかな酒が引き出し、シャリシャリとした外側の砂糖と相まって、口の中にほどよい甘さが広がる。冷やした「京しぼり 祝米 大吟醸」と「松露」。京都でも知られていない隠れ桜名所に持参して、気の合った仲間と静かに花見を楽しんでみたい。

京しぼり 祝米 大吟醸
口当たりはなめらかでありながらボディ感のある味わい、上品かつ華やかに広がる吟醸香が特徴。近畿地区限定商品(月桂冠オンラインショップでも購入可)。


(VOL.048)2019年3月10日発行
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