紅葉も深まり、朝晩の冷え込みを感じる季節になってきた。少し手ごたえのある日本酒が欲しくなる。今回選んだのは「山田錦特別純米」。酒米の王様とも称される品種、「山田錦」を100パーセント用いて、伏見の名水で仕込んだ純米酒だ。食卓に置くのにふさわしい、スタイリッシュな黒いボトルの720mL瓶と、手軽な300mL瓶入りが発売されている。
口に含むと、華やかな香りと、ふくよかな味わい、そしてバランスのよい酸味が舌に心地よく、あと味はすっきりとさわやかだ。この製品の酒造りを担ってきた森下恒二さんによると、ふくらみのある味は山田錦の特徴で、酸味やさわやかなあと味は、酵母の特徴によるものだそうだ。原材料は米と米こうじのみで、自然な味わいを醸し出している。

造り手
醸造部
森下 恒二
このお酒にベストマッチとなったのは、実りの季節の栗を使った甘泉堂の「栗羊羹」。祇園の甘泉堂といえば、知る人ぞ知る路地中の老舗。春夏の「水羊羹」、秋冬の「栗蒸し羊羹」が看板商品だが、通好みは「栗羊羹」だ。北海道産小豆と丹波産寒天を用い、丸ごとの栗の歯触りと違和感のないよう、ようかんとしては軽い練り具合で、あっさりとした歯ごたえに仕上げてある。砂糖はざらめを使っている。
季節限定「栗羊羹」
(10月~3月限定/要予約)/甘泉堂
京都市東山区祇園町344-6
TEL:075-561-2133

この「栗羊羹」を咀嚼(そしゃく)しつつ、「山田錦特別純米」を口に含む。すると、お酒に溶けたほどよい甘味が心地よく口中の隅々にまで広がる。山田錦のふくらみのある味と酸味、そしてざらめを使っているがゆえか、こっくりとした栗ようかんの甘味という二つの特徴が、まさに絶妙のコンビネーションを生む。
早くも燗酒のシーズンに入りつつある。秋の夜長、窓越しにライトを浴びる庭の紅葉を眺めながら、常温か少し冷やした「山田錦」を楽しみたい。個性と個性の出会いを堪能しながらゆっくりと盃を重ねると、身も心もほっこりと温まってくること請け合いだ。

(VOL.040)2017年11月10日発行
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