朝晩は秋風も感じられるようになり、中秋の名月も待ち遠しい。この時期、冷酒でも常温でも、燗酒でも楽しめるのが、月桂冠の「特撰」だ。優雅な香りと上品な風味の本醸造酒で、長年親しまれてきている。今年、国際的な品評会IWC2018(*)のsake部門ではゴールドメダルを獲得。同時に世界からコスパに最も優れた価値ある逸品としてのチャンピオンにも認定された。
「特撰には自社酵母を使っていますが、酵母はしゃべってくれないので、常に泡の状態やデータを見て調整しています」と語るのは醸造部二号原料発酵グループの小嶋良次さん。軟らかく吸水が早い米質の原料米を使用するため、発酵途上での調整がむずかしいという。5年先輩の尾高文夫さんも「相手は生き物だから常に状態が違う。モト(酒母)、もろみの温度管理にはかなり気を使います」と口を揃える。
低温でじっくり醸してから搾り、その後、半年の熟成で香味を整える。比較的生産量の多い定番の酒を、決められた期間でクオリティの高い味まで持っていくのは月桂冠の造り手の力。ダブル受賞の秘密が、原材料の品質の高さとともに、この匠の技にあることは間違いない。
*IWC2018:国際的な酒類品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジTM(IWC)2018」のこと。
造り手
(写真左から)
醸造部
尾高 文夫、小嶋 良次
さて、このお酒に合う和菓子として選んだのが、文化3(1806)年の創業以来、西陣の和菓子屋として親しまれる老舗「かま八」のどら焼き「月心」。NHK朝ドラ「あすか」にも登場した菓匠のこのどら焼き。初めて食べた人が驚くのは、何と言っても一口目の生姜の風味だろう。北海道産小豆の餡が、しっとりした生姜味のカステラ風生地で包まれている。これを一口かじり「特撰」を流し込む。酒が際立たせる、ピリッとした生姜の風味と、後からふくらんでくる「特撰」の香り。両者が混然一体となり、口の中で和風ブランデーケーキが生まれるかのようだ。
西陣のどらやき「月心」
/かま八老舗
京都市上京区五辻通浄福寺西入ル一色町12
TEL:075-441-1061
風情ある月見酒を好むなら、まさに辛党好みの心憎い組み合わせ。「月心」というどら焼きの銘もこの時期にふさわしい。派手さこそないが、月夜にずっと飲める穏やかな酒。東山から昇る月を眺めながら、今年は「特撰」と「月心」で、宵のひと時を過ごしてみたい。
特撰
優雅な香りと、上品でふくらみのある風味の本醸造酒。
(VOL.045)2018年9月10日発行
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