京の日本酒と和菓子

VOL.16「大吟醸」と「したたり」

「大吟醸」と「したたり」

暑い季節がやって来た。例年なら祇園祭でさらに熱くなる京都だが、今年は山鉾の巡行が中止となり、家で静かに冷酒の盃でも重ねたい。そんな人におすすめのお酒が、月桂冠の「大吟醸(生詰)」だ。すっきりとさわやかな味わいのあと、フルーティな香りが華やかに続く。冷やすことで、香味はさらに引き立つ。酒質もパッケージも、今年2月にリニューアルされ、新しく発売された。

「通常の日本酒は出荷前に加熱して殺菌します。生詰のメリットは、加熱による香りの劣化を防ぐこと。この大吟醸の華やかな香りをそのままお届けしたいんです」と語るのは月桂冠技術部技術課の塩田和功さん。醸造後の酒の風味を維持し、安定した品質で出荷にもっていく品質管理のプロだ。びん詰の際に加熱殺菌しない生詰では、クリーンルームで酒をフィルターに通すことが必須だ。精密フィルターを用いたろ過で菌を完全に取り除き、その後、菌検査を行った上で、ようやく出荷。月桂冠オリジナルの新酵母を採用した青リンゴや洋ナシを思わせるフルーティな香り。この香味が華やかに、長く続くのは、この「生詰」のなせる技なのだ。

造り手 技術部 塩田 和功

造り手

技術部
塩田 和功

さて、今回、この酒に合わせる和菓子として選んだのが、老舗、亀廣永(かめひろなが)の「したたり」だ。年中味わえる寒天菓子で、祇園祭の菊水鉾のお茶席で出す菓子として、約30年前に考案された。菓子通も絶賛する銘菓は、透明な琥珀色で、見るからに涼やか。沖縄の波照間産の黒糖を用い、コシのある丹波産の糸寒天で固めた。黒糖の素朴な味と香りをシンプルに楽しめる夏にぴったりの菓子だ。

「したたり」/亀廣永

京都市中京区高倉通蛸薬師上ル和久屋359
TEL:075‐221‐5965

「したたり」/亀廣永

この「したたり」をつるりと一口食べ、「大吟醸」を口に含む。黒糖の甘い風味がさらりと喉を通り、冷やした「大吟醸」のフルーティな香りが爽やかにあとを追う。口さみしくなったら、また滑らかな食感の「したたり」を楊枝で口元へ。菓子の涼感と冷酒の冷たさは、祇園囃子の音とともに、あたりに涼風を吹き渡らせる。

今夏は「したたり」をアテに「大吟醸」を味わいつつ、来年の祇園祭にも思いを馳せたい。

大吟醸(生詰)

大吟醸(生詰)

月桂冠が独自に開発した新酵母を使用。フレッシュでフルーティな香りと、すっきりとした口当たりの良さが特徴の大吟醸酒。

甘辛=中位、濃淡=やや淡麗

※2022年9月にパッケージデザインをリニューアルしました。最新の情報は商品ページでご確認ください。

月桂冠オンラインショップ
ハンケイ500m

(VOL.056)2020年7月10日発行

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