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最先端のがん研究で麹菌が活躍中!

糖鎖を認識して特異的かつ可逆的に結合するレクチンは血液型の研究をはじめ、がん細胞の表面糖鎖の研究など細胞生物学関連分野で広く利用されています。その起源は、植物・微生物・キノコ・無脊椎動物・脊椎動物・ウィルスなど、あらゆる生物に広く分布することが明らかとなっています。 月桂冠総合研究所は、清酒麹菌Aspergillus oryzaeからフコース特異的レクチンを発見しました。糸状菌でのレクチン発見例はほとんどなく、今回A. oryzaeから単離されたことは、レクチンの機能性研究において非常に興味深いと考えています。

<研究キーワード:レクチン、フコース、検出試薬、ガン/癌、麹菌 (Lectin, Fucose specific, cancer, Aspergillus oryzae)>

研究テーマ 麹菌フコース特異的レクチンの解析と大量生産

【実験目的】

清酒の商品価値を著しく低下させる要因の1つに着色があります。代表的な清酒着色物質としてはフェリクリシン(Fcy)(図1)が古くより広く知られています。このFcyはシデロフォアの1種で、A. oryzaeが産生する無色のデフェリフェリクリシン(Dfcy)と鉄分が結合することで清酒を赤橙色に着色させます。

我々は、清酒中からFcyを除去することを目的に、Fcyに親和性を持つタンパク質をA. oryzae菌体内からスクリーニングすることにしました。なぜならA. oryzae菌体内にはFcy トランスポーターやFcy合成酵素といったFcyと親和性を持つと考えられるタンパク質が存在し、それらを固定化したカラムに清酒を通すことで、Fcyを分離・除去できると考えたからです。(図2

図1 Ferrichrysin (Fcy)

図2 The Strategy of Removal of Fcy in Sake

【実験結果および考察】

Fcyに特異的に結合する物質をスクリーニングするため、Fcyを活性化エポキシセファロース6B(アマシャム バイオサイエンス(株))にカップリングさせ固定化カラムとしました。このカラムに鉄存在(Fe(+))、鉄非存在(Fe(-))、それぞれの条件下で培養したA.oryzae抽出液を段階的に溶出させ、SDS-PAGEを行いました(図3)。その結果Fe(-)に特異的なバンドが検出され(矢印)、これをFAP(Ferrichrysin Affinity Protein)と名づけました。

図3 SDS-PAGE Analysis of Eluacts of Column Chromatography Immobilized with Fcy

FAPの部分アミノ酸配列からPCR増幅断片を得、全塩基配列を決定した結果、4つのイントロンに分断され、310アミノ酸残其をコードしていることが判明し、本遺伝子をfleAと命名しました。
fleAのホモロジー解析の結果、驚くべき事にキノコの1種であるヒイロチャワンタケのフコース特異的レクチンをコードする遺伝子と最も高い26%の相同性を示し、FAPがレクチンの1種である可能性が示唆されました。

FAPの特性解析を行うため、fleA遺伝子を麹菌液体培養高発現プロモーターであるmelOプロモーター支配下で高発現させました。当社の開発したこのタンパク質高生産システムを用いる事で、野生株の約1000倍量のFAPを生産させることができました。fleA高発現菌体抽出液のSDS-PAGEから、fleA遺伝子産物は分子量約35,000であることが判明し、菌体内可溶性タンパク質の大部分を占めていることがわかりました(図4)。

図4 SDS-PAGE Analysis of the Cell-Free Extract from Transformant

ウサギ赤血球凝集阻害活性から、fleAはレクチンをコードする遺伝子であることが明らかとなりました。また、各種糖類を用いた赤血球凝集活性試験から、フコースにのみ特異的に結合するレクチンであることが判明しました。(図5

図5 Hemagglutination Assay of fleA Gene Product Using Rabbit Erythrocytes

フコースを含む糖鎖は、生体中で様々な生理機能を持っていると考えられます。例えば、人体においてフコースが転移した糖鎖は、ルイス式血液型やガン関連抗原エピトープの重要な指標とされています。
我々は、麹菌フコース特異的レクチンが、糖鎖生物学研究の重要なツールに成り得ると考えています。
その根拠の1つとして、京都大学大学院 生命科学研究科 山本憲二教授との共同研究の結果、肝細胞癌患者由来のα-フェトプロテイン(AFP)と健常者由来のAFPを識別できることが明らかとなっています(Data not shown)。清酒醸造からヒントを得て単離されたフコースレクチンが、最先端のガン研究に役立つ日も近いと考えています。

なお、本レクチンは東京化成工業(株)を通じて、2003年10月より発売されています。

【学会発表】

  • 麹菌Aspergillus oryzae由来フコース特異的レクチン遺伝子のクローニングと大量分泌発現、分子生物学会、2000.12
    森谷敏康、○石田博樹、秦洋二、川戸章嗣、杉並孝二、安部康久
  • A. oryzae由来フコース特異的レクチンの各種プロモーターによる効率的分泌発現とその利用法の検討、農芸化学会、2001.4
    ○石田博樹、森谷敏康、秦洋二、川戸章嗣、杉並孝二、安部康久、今安聰
  • A. oryzaeのフコース特異的レクチンの解析と大量生産、糸状菌分子生物学コンファレンス、2001.11
    ○石田博樹、森谷敏康、秦洋二、川戸章嗣、杉並孝二、安部康久

【論文】

  • Molecular cloning and overexpression of fleA gene encoding a fucose-specific lectin of Aspergillus oryzae, Biosci. Biotechnol, Biochem., 66(5), 1002-1008 (2002) H. Ishida, T. Moritani, Y. Hata, A. Kawato, K. Suginami, Y. Abe, S. Imayasu

(掲載日:2004年9月1日)
(改訂日:2013年4月3日)

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