月桂冠総合研究所
研究内容
お酒の研究

音楽で香りの高い日本酒を醸造!? -ONKYO x月桂冠総研究所 共同研究-

研究背景

音楽を聴かせて醸造させた日本酒やワインなどの醸造酒が多数商品化されていますが、詳細な研究はなされていません。ワイン醸造では音波の振動により酵母が活性化して発酵が早く進むこと1)、日本酒醸造では超音波によって発酵が効率よく進むことが報告されています2)。また、後述する音波を振動に変える装置(以下、加振器)を用いた日本酒醸造でも発酵が進むことが知られているものの、特定の香味成分が増加したという報告はありませんでした。
そこで本研究では、日本酒における好ましい特定成分の増減をコントロールできる “音楽醸造”の可能性に着目し、特定の音波を発酵タンクに聴かせた時の日本酒の成分への影響を調べることとしました。

4種類の個別音波を聴かせた日本酒醸造と香気成分分析

特定の音波をスピーカーから醸造タンクに聴かせても振動が伝わりにくいため、ONKYO社が開発した加振器(音波を振動に変換できる装置)をステンレスタンクに装着し、日本酒を醸造しました。この加振器を取り付けたタンクはスピーカーと同じように音を出すことから、“スピーカーそのもので日本酒を醸造した”と言った方がイメージに近いかもしれません(下図参照)。

図 加振器を取り付けたステンレスタンクでの日本酒醸造

ヒトの可聴域(20-20,000 Hz)から適切な4つの音波を選択し、音波を聴かせながら日本酒を醸造したのち香気成分測定しました。下記にバナナのような香りである酢酸イソアミルと、リンゴのような香りのするカプロン酸エチルの濃度への影響を示します。

グラフ1 酢酸イソアミルの量*
グラフ1 酢酸イソアミルの量

*:音波を当てていないControlを1とした相対値

グラフ2 カプロン酸エチルの量*
グラフ2 カプロン酸エチルの量

*:音波を当てていないControlを1とした相対値

音波をあてることで、多少の増減はあるものの音波によっては1.2倍近くに増加することが明らかとなりました。そのほか、糖や有機酸量についても若干の変化が観察され、音波の違いが発酵成分を増減させることを明らかにしました。
狙った成分のみを増加させることについては詳細な研究が必要ですが、“特定の音波をバランスよく含む楽曲を作曲して聴かせる”ことによって、望ましい香味をもつ“音楽醸造”日本酒ができる可能性は十分にあると言えます。

学会発表

加振条件下における清酒醸造の発酵経過の解析、○浅井良樹1)、根来宏明1)、石田博樹1)、北川範匡2)、定家弘一2) (1月桂冠、2 ONKYO)、日本醸造学会大会(2023)

ニュースリリース

オンキヨーと月桂冠との共同研究「音楽醸造の可能性検証」を2023年度日本醸造学会で発表(2023年10月3日:ニュースリリース)

参考文献

(掲載日:2023年10月16日)