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稲荷から桃山を歩く

稲荷から桃山を歩く

伏見稲荷から伏見桃山の界隈には、京阪線・近鉄線・JR線などの鉄道や幹線道路の経路が集中し、現代の交通の要衝としてアクセスも良好です。京都駅からは、JR奈良線(桃山駅)や近鉄京都線(桃山御陵前駅)で十数分の近場となっています。2016年3月にはバスの新路線が開通、京都駅から伏見稲荷大社を経て、酒蔵の街の中心となる伏見桃山や中書島を結んでおり、京都南部の観光に便利です。自然散策を兼ねて、徒歩で周遊することも可能で、街中から少し足を延ばし、京都盆地東南部のなだらかな山々をハイキングすれば、豊かな自然に触れることができます。

トレイルコース「伏見・深草ルート」

京都盆地をぐるり周回するハイキングコース「京都一周トレイル」の一つとして、「伏見・深草ルート」が2014年新設されました。このルートは、稲荷山から深草、藤森を経て、酒蔵の街・伏見桃山を結ぶ、9.5キロ、約4時間の徒歩コースです。『京都一周トレイルコース公式ガイドマップ東山』に、その経路が紹介されています(発行:京都一周トレイル会、問合せ先:京都市産業観光局観光MICE推進室)。

次に「伏見・深草ルート」の主な名所を紹介します(【括弧】内は、『京都一周トレイルコース公式ガイドマップ東山』上の「トレイル標識・番号」と対照しています)。

伏見稲荷大社と稲荷山【F35】
京都市伏見区深草薮之内町

千本鳥居をくぐりながら、稲荷山の「お山詣り」で峰々の神域を巡った後、桃山方面に向かいます。山を下っていくと、のどかな田園や竹林、住宅街が続きます。

伏見稲荷大社と稲荷山
伏見稲荷大社と稲荷山

大岩神社【F20⇒F19】
京都市伏見区深草向ケ原町

大岩街道から、朱の鳥居を目印に大岩神社の参道に入ります。山腹に建つ神社前では、日本画家の堂本印象デザインの彫刻による鳥居が目をひきます。しばらく山道を進み大岩山展望所へ向かいます。

大岩神社

※なお、2015年11月の踏査時、大岩神社前では台風の影響による倒木が見られました。最新の情報、現地の注意表示などを確認し、山歩きを実施してください。

大岩山展望所【F18】
京都市伏見区深草向ケ原町

京都方面から伏見、さらに、はるか大阪市内の高層ビル群を望むことができます。

大岩山展望所

古御香宮(ふるごこうぐう)【F15の北西側】
京都市伏見区深草大亀谷古御香町

豊臣秀吉が伏見城を築城した際、大城郭からは鬼門の方位に御香宮神社を移しました。その場所が現在、「古御香宮」として神域となっています。

古御香宮(ふるごこうぐう)

八科峠(やじなとうげ)【F13】
京都市伏見区深草大亀谷敦賀町

京の街から伏見・藤森を経て、六地蔵・宇治方面に抜ける一本道(墨染通り)。峠のあたりに「右京みち」「左六ぢぞう」と記された石碑が建ち、古くからの街道であることを留めています。麓の藤森神社あたりの平地からは高台となっています。

八科峠(やじなとうげ)

黒田長政の下屋敷跡【F12】
推定地、京都市伏見区深草大亀谷敦賀町

戦国武将・黒田官兵衛の長男である長政の屋敷跡参考地として石碑が建っています。

黒田長政の下屋敷跡

伏見北掘公園【F11⇒F8】
京都市伏見区桃山町大蔵

伏見城北側のお濠の遺構を利用して造成された公園です。徒歩道が堀の内側を周回し、堀の底部に小川が流されています。

伏見北掘公園

伏見桃山城【F7】
京都市伏見区桃山町大蔵

豊臣秀吉時代の伏見城を偲ばせる伏見のシンボルとして1964(昭和39)年建設された模擬天守閣で、周辺は公園となっています。

伏見桃山城

桓武天皇陵【F5の北側】
京都市伏見区桃山町永井久太郎

桓武天皇は、長岡京を784(延暦3)年造営、794(延暦13)年に平安京へ遷都した。京都の創生にゆかりの深い天皇。

桓武天皇陵

伏見桃山陵【F5⇒F4途上の参道を東へ進む】
京都市伏見区桃山町古城山、同町駿河

伏見城のあった古城山の辺り。1912年に崩御された明治天皇の陵墓となっている。上円下方墳(円形の墳丘を方形の台座に載せた形)で、方形の一辺は60メートル以上と大きい)。この御陵の前からは、南側に宇治市方面を一望にできます。

JR桃山駅【F3の南東側】
京都市伏見区桃山町鍋島

JR奈良線の京都駅から4つ目の駅。1895(明治28)年開業。伏見桃山陵の最寄り駅として、多くの御陵参拝者を迎えた歴史があります。上写真は昭和6年の桃山駅の様子、伏見の酒が貨車に積み込まれ全国へ出荷されていきました(1931制作の月桂冠PR映画『選ばれた者』より)。下写真は現況。

JR桃山駅
JR桃山駅

御香宮神社【F2】
京都市伏見区御香宮門前町

伏見全町の総氏神。安産の神様とされる神功皇后を祀る。「御香宮」の社名は、香りのよい水が湧き出し、この水で病気が治癒したとの伝説がもとになっています。この御香水に「水かけ占い」のおみくじを浸すと運勢が浮かび上がります。水にまつわるお宮さんならではの趣向。

御香宮神社
御香宮神社

伏見桃山【F1】
京都市伏見区京町三丁目

御香宮前から西へ進めば、近鉄桃山御陵前駅の高架下、京阪線・伏見桃山駅の踏切を経て、アーケードの商店街に至ります。この東西に走る大手筋商店街を含め7つの商店街が集積するこの界隈は、日中、人波が絶えることのない賑やかさがあります。商店や飲食店が多数集まり、ハイキングの程良い疲れも癒してくれるでしょう。

伏見桃山
伏見桃山

歴史舞台を彷彿とさせる街・伏見桃山

伏見桃山を訪ねれば、歴史の面影を残す街並みに触れることができます。現在の街路は、16世紀末頃からの城下町の街割りによって形成されています。伏見城の外濠だった濠川や合流する宇治川派流などの運河が街中を巡り、川沿いには遊歩道が整備されています。歴史的な見どころも多く、キリシタン大名でありローマ法王庁から福者として認定された高山右近ゆかりの史跡や、旅籠・寺田屋の遺址、伏見城大手門の遺構が神門として残る御香宮神社、江戸期に行政と司法を担当した伏見奉行所の跡などが点在し、激動の歴史舞台を彷彿とさせます。

酒蔵、濠川、十石舟
▲伏見城の外堀りだった濠川ごし望む月桂冠内蔵酒造場の風景は、伏見観光のランドマークとして親しまれている。観光船の十石舟や川沿いの遊歩道から酒蔵群の眺望を楽しめる。

大手筋界隈

大手通りの御香宮神社前から西側は「大手筋」と呼ばれ、伏見桃山の中心街を東西に貫いています。アーケードの商店街を中心に、商店や飲食店が軒を連ねる賑やかな界隈となっています。

大手筋から、南側への路地を進むと酒蔵群に行き当たります。その中には、江戸期(1828年)建造の酒蔵兼居宅、大倉家本宅が、月桂冠本社の西側に隣接して居様を見せています。鳥羽伏見の戦い(1868年)で多くの町家が焼失した中、大倉家本宅は辛うじて羅災をまぬがれ今日に受け継がれています。その南側、白壁土蔵に杉焼板を側板としてめぐらした内蔵(うちぐら)酒造場(1906年建造)から続く一角に、月桂冠大倉記念館を公開しています。伏見酒の歴史を学び、きき酒や酒造りの見学を楽しめるとあって、海外からのお客様にも人気のスポットとなっています。

おやかまっさん
▲大手筋商店街のアーケードを東から入ってすぐのところで、からくり時計の「おやかまっさん」が華やかに時を知らせている。午後1時から7時まで正時ごとに計7回、酒どころ伏見を象徴する酒蔵を描いた大扉が開くと、写真の上・左から下へ、饅頭食い、千利休、牛若丸、森の石松、豊臣秀吉、伏見城、千姫、花笠行列、坂本竜馬、新撰組、酒造りなど、伏見ゆかりのキャラクターが酒樽の中から舞いながら登場する。

館内には、京都市の有形民俗文化財に指定された酒造用具類6,120点の中から約400点を、酒造りの工程ごとに常設展示するほか、月桂冠創業からの歴史を物語る史料や酒器類を展示しています。中庭を挟んで隣接する内蔵酒造場には、ミニプラント「月桂冠酒香房」(さけこうぼう)を設けており、記念館のオプション見学コースとして、モロミが発酵する様子をガラス越しに見学できます(前日までに、月桂冠大倉記念館への予約が必要、蒸米や仕込みなどの作業は不定期に行うため見学できない場合がある)。

月桂冠大倉記念館の館内
▲月桂冠大倉記念館は明治期(1909年)建造の酒蔵を改装し、1982(昭和57)年開設、1987(昭和62)年に一般公開以来 250万人目のお客様を2015年3月17日にお迎えした。

酒どころ伏見

酒蔵を活用した記念館や飲食店が集中する界隈、月桂冠大倉記念館前の南北の通りは「酒蔵通り」とも称されています。街路は土色に近い色彩のカラー舗装が施され、遊歩道やレトロ調の電灯を設置、電柱を地中化するなど景観に配慮して整備されており、その昔ながらの風情を残す佇まいを、街歩きをしながら楽しめます。

酒造りは現在も連綿と続いており、伏見酒造組合には20社を越える酒造会社が所属しています。清酒の寒造りが最盛となる厳冬期には、米を蒸し、もろみが発酵することによって醸し出される香りがあたりに漂い、酒の街ならではの趣をたたえています。

記念館前の通り

酒蔵付近には柳並木、しだれ桜、ソメイヨシノ、ゆきやなぎ、あじさいなど、折々の自然が人々の目を楽しませてくれます。水辺をたどりながら近隣の史跡を探訪できます。

春から秋にかけては、観光船の十石舟、三十石船が就航しています。十石舟は、月桂冠大倉記念館西側の舟付場を出発し、公園として再生された三栖閘門を折り返します(三栖閘門:宇治川と濠川との4.5メートルほどの水位差を一定にして船を行き来させるようにした運河。1929年=昭和4年に建設され、1960年代頃にはその役目を終え、現在は観光船の船着き場となっている)。

濠川を航行する十石舟

(伏見探訪「稲荷と桃山」に関する参考文献)

  • 京都平安文化財『伏見城跡(指月城)発掘調査 現地説明会資料』(2015年6月20日)
  • 京都一周トレイル会 『京都一周トレイルコース公式ガイドマップ東山』 京都市産業観光局観光MICE推進室 (2014年11月)
  • 林屋辰三郎 『桃山』 京都桃山ライオンズクラブ (1976年10月15日)
  • 伏見稲荷大社付属講務本庁 『神奈備 稲荷山、祈りの山』 別冊大伊奈利 第2版(2015年5月15日)
  • 山本真嗣・編 『再版 伏見鑑上下巻』 桃高史学研究部 (1974年4月1日)
  • 山本真嗣 『伏見くれたけの里』 京都経済研究所 (1988年)
  • 山本真嗣 『京・伏見歴史の旅』 (新版) 山川出版社 (2003年)

当コーナーに使用した意匠は、伏見稲荷大社(京都市伏見区深草藪之内町)、御香宮神社(京都市伏見区御香宮門前町)の許可を得て、月桂冠が撮影した画像を含んでいます。

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