月桂冠が考えるサステナビリティ

人 材働き方や会社としての取り組みを進化させていく

SDGsの掲げる持続可能な開発目標は多くの部分で人権が関係しています。基本理念の一項目に「HUMANITY」(社員の知識、能力の向上に努め、一人ひとりがその個性にあわせて充実した人生を送ることを助ける)を掲げる当社としては、SDGsに掲げられた人権に関わる思想は大事なものと考えています。

月桂冠は昔から社員を大事にする社風があり、家族的な会社だとも言われます。会社の長い歴史の中で、人を大事にすることが、持続的な事業活動に必要なことだと考えられてきたからでしょう。社員のセーフティーネットとして、メンタルヘルスケアや、各種の支援プログラム、休業補償制度などが手厚いことなどにも、それが表れています。

一方で、この数十年で社会情勢は大きく変化し、SDGsで提唱されている、多様な働き方でさまざまな人材が自身の能力を発揮できる社会の実現が求められています。そのような社会の実現に貢献し、未来に向けて事業を継続していくために、今の良い風土を維持しながら、時代に即した新たな取り組みを進めていかねばなりません。そのことが、社会に生きる人たちや、社員を大事にすることにも繋がると考えています。

地 域京都・伏見のランドマークとして、「来てよかった」を提供し続ける

当社は江戸期の創業以来、地域や社会からの恩恵を受けながら事業を継続し、380年を越える歳月を永らえてきました。現在も京都・伏見の創業の地に本社を置き、日本酒を中心とする製品の製造・販売に勤しんでいます。創業の地の一角で、その歴史と現在を集約して展示し、いわば月桂冠の象徴とも言える博物館「月桂冠大倉記念館」を公開しています。

月桂冠大倉記念館は、明治期建造の酒蔵を活用して1982年に開館、1987年に一般公開を開始し、現在では、京都・伏見の観光や文化探訪に欠かせないランドマークとして親しまれるようになりました。隣接する内蔵酒造場を含む明治期の酒蔵群、安土桃山時代に形成された城下町以来の街路や水路のたたずまいの中で、京都・伏見の酒文化を伝えていくその存在そのものが街の活性化につながり、そのことに資する施設として継続するには、常に向上していくことが必要だと考えています。この記念館を維持していくためには、酒蔵の建物を含む景観はもちろん、地下水や酒蔵群に沿って流れる濠川の水辺の環境など、記念館エリア全体を保全していくことが必要です。さらに、常時お客様が入られる施設である点や収蔵文化財の保全を考え、防火・防災への対策も進めています(耐震補強や展示内容更新、見学順路の変更を実施し、2020年12月18日、リニューアルオープン)。

記念館に来られるお客様のお知りになりたいことはそれぞれで、伏見や月桂冠の歴史、日本酒の製造工程や文化的な側面、商品の味わいについてなどさまざまです。世界での日本酒への関心の高まりから、在外在日含む外国人のお客様の来館も得るようになり、外国語での対応が必要になる場面も増えています。そのような中、記念館ではスタッフによるおもてなし向上のための研修を行うなど、日々の地道な改善を行っています。今後も、すべてのお客様に「来てよかった」と満足して帰っていただける施設であり続けられるよう、新しいアイデアを取り入れながら、時代にあわせて進化させ続けていきたいと考えています。

環 境社会的責任にもとづく製品づくりを目指して

SDGsでは、世界中の全ての企業に、それぞれの本業を通じて目標達成に取り組むことが求められています。
月桂冠は、2008年に環境マネジメントシステムを導入、トップマネジメントによる環境方針のもと、毎年達成目標を定め、廃棄物や資源使用量の削減などに継続的に取り組んでいます。毎年の環境目標には、SDGsの目標「つくる責任つかう責任」などを明記し、環境への取り組みを通じて、SDGsの目標達成に貢献することを全従業員に周知しています。製造部門は特に環境に対する影響が大きいことから、トップダウン、ボトムアップ、部署横断的プロジェクト、SDGsの研修会など、あらゆる方向からムダ・ロスをなくす活動に取り組み、環境負荷低減をすすめています。

近年は、包装容器、特にプラスチック廃棄物の増大が大きな問題となっています。月桂冠が使用している酒の容器や包装はびん・紙が主体ですが、お客様と一緒に、ガラスびんや紙パックなどのリサイクルに取り組むこともサステナビリティにつながると考え、商品設計にその思想を積極的に取り入れています。

国際的に企業のSDGsへの取り組みが求められる今、従業者一人一人が企業としての社会的責任を自覚し、月桂冠の基本理念「QUALITY・CREATIVITY・HUMANITY」のもと、新しい視点・アイデアを生かした環境保全活動を目指しています。

マーケ
ティング
これからも日本酒文化を持続・発展させていく

サステナビリティや環境に対して、当社では環境配慮した商品・サービスを取り組んでいます。2020年10月に発売した「純米」(1.8Lパック)では、容器に森林認証紙(PEFC認証紙 ※)を使ったり、印刷の一部に植物由来のライスインキを使用しています。また、紙パックをリサイクルした紙を用いて商品を入れる箱や手提げ袋にも利用したりしています。「カップ」のガラス使用量を17%削減、その軽量化分に相当するお酒10mLを増量したカップ詰めの商品や、酒造りで得られた酒粕を肥料として土にかえして栽培した滋賀県産米を使用したお酒も造っています。

※PEFC森林認証プログラム(Programme for the Endorsement of Forest Certification)により評価、認証されたもの。持続可能に管理された森林からの原材料および管理材が使用されている。

商品づくりにおいて、今後検討できることとして、例えば、プラスチック系の包装資材をできるだけ使わないようにすれば、その使用量の削減にも繋げることも可能になります。サステナビリティや地球環境の保全に資するという視点で、小売業やその先のお客様のご要望も含め、今後の変化に注目し、適切に対応できるよう準備を進めなければなりません。

サステナビリティという観点では、日本酒が今後も飲み続けられ、文化として維持されていくことにつながる活動が大事だと考えています。これまでにも例えば、地域あげての「日本酒まつり」、各地で実施されるきき酒会など各種イベントへの参加や、ウェブやSNSを含む様々な媒体によるプロモーションを通じてお客様とコミュニケーションを深めることで、日本酒や月桂冠を身近に感じていただき、日常の中に取り込んでもらえるよう働きかけてきました。そのことが、日本酒を通じた日本の佳き文化の啓発となり、持続そして発展にもつながっていくことになればと考えています。

調 達良い時も悪い時もお互いさまで共存共栄

主原料の米、包材など製品づくりに必要な多種多様な資材を調達することも、私共の大切な業務です。計画どおりに資材が入荷されなければ、製造だけでなく出荷・販売などさまざまな業務に支障が出るため、漏れのない調達が重要になります。逆に、安全を求め過ぎて過剰発注になっては、廃棄資材を発生させてしまうので、関係部署どうしで情報交換しあいながら、適正数量の発注に努めています。

月桂冠は、原材料の仕入先や、包材メーカーとお互いに助け合いながら、良好な関係を連綿と築いてきました。特に農産物であるお米は1年に1回しか生産(収穫)できず、さらに天候により生産量や出来栄えが左右される特殊な資材と言えます。常に自分の都合だけを押し通すのではなく、お互いに融通しあい、良い時も悪い時もお互いが助け合えるパートナーの関係を構築することで、安定的な調達を継続してきました。近年では、いくつかの産地とは米の契約栽培にも取り組み、付加価値の高い原料米の調達も実現しています。

企業活動にも、「誰一人取り残さない」というSDGs の考え方が当たり前に求められる時代です。そのような中では、自分だけが良ければいいのではなく、みんなで良くなる・幸せを共有するという「共存・共栄」の考え方が、いっそう重要だと考えています。

物 流ホワイト物流推進に取り組む

「商品を注文したら手元に届く」、この当たり前を支えているのが物流です。私共メーカーの事業継続にとって物流は、製造や営業と同様に重要な役割を担っているといえます。しかし今、社会の物流システムが、崩壊の危機に直面しています。労働条件や高齢化のためにトラックドライバーが減少してきているためです。このような状況の打開に向けて2019年3月、政府は「ホワイト物流推進運動」と題した物流改善の取り組みを発足、物流事業者と荷主企業の約6,300社に参加を呼びかけました。ねらいはドライバーの労働環境改善と日本全体での物流確保で、各企業に取り組み内容を明示した「自主行動宣言」の提出と賛同表明とを促すものです。月桂冠も2019年10月2日、「ホワイト物流推進運動」への賛同を表明しました。

実は月桂冠はこれまでにも、先駆けて様々な物流確保の取り組みを積み重ねてきました。例えば、運送会社との協力により、全国の物流中継地への蔵置所の設置や、鉄道やフェリー輸送を取り入れるモーダルシフトの推進、必要十分な長めのリードタイム設定などです。これら実施済みの取り組みと共に、今後も物流事業者に協力していくという姿勢を、①「物流の改善提案と協力」②「パレット等の活用」③「幹線輸送部分と集荷配送部分の分離」④「船舶や鉄道へのモーダルシフト」⑤「運送契約の書面化への推進」⑥「荷役作業時の安全対策」の6項目のホワイト物流・自主行動宣言として政府に提出しています。

物が運べないと、メーカーだけでなく、卸売業、小売店、消費者の皆様にしわ寄せが及んでしまいます。現在の危機的な状況を打開し、物流体制を維持していくために、今後も物流改善に取り組んでいきたいと考えています。