技術革新・酒文化継承への取り組み酒文化・発酵文化

お酒の史料館「月桂冠大倉記念館」の公開

月桂冠大倉記念館(1987年から一般公開)
月桂冠酒香房(1997年開設)

月桂冠大倉記念館は、京都・伏見の酒造り発展の歴史、酒造りや酒の文化を紹介する史料館です。明治期(1909年=明治42年)建造の酒蔵を改装し、1982年(昭和57年)に開設しました。「京都市指定有形民俗文化財」の酒造用具類のうち約200点を、酒造りの工程ごとに常設展示するほか、創業からの歴史を物語る史料を展示、酒造り唄が館内に流れ、かつての酒蔵の雰囲気を再現しています。ご見学後にはロビーで、吟醸酒など季節ごとのさまざまなお酒のきき酒ができます。

当初は会社に来訪されたお客様などにご見学いただいていましたが、創業350年にあたる1987年(昭和62年)5月15日から一般公開しました。一般公開以来、2002年度(平成14年度)に来館100万人を突破、同年度から年間10万人を超えるお客様にお越しいただくようになりました。2011年(平成23年)には200万人目、2018年(平成30年)には300万人目のお客様をお迎えしました。

2020年には、耐震補強を含むリニューアルを実施、体験型の要素を加えるなど展示内容を刷新、月桂冠の挑戦と創造のスピリッツを感じる空間として、酒蔵探訪をたっぷり楽しんでいただけます(2020年12月18日にリニューアルオープン)。

四季醸造のミニプラント「月桂冠酒香房」(1997年=平成9年開設)は、記念館に隣接する内蔵酒造場内で、年間を通じてモロミが発酵している様子を、ガラス越しにご見学いただけるようにした施設です。

酒造り唄の保存

「月桂冠酒唄保存会」による酒唄(さかうた)の披露。酒造りの作業によってリズムが異なり、何度唄うかによって時間を計る役割もあった

酒造りの作業時に歌われてきた酒造り唄を保存し、酒文化を広く知っていただくことを目的に「月桂冠酒唄保存会」の活動を行っています(1975年=昭和50年、同好会としてスタート、1981年=昭和56年、保存会結成)。酒造り唄は、もともと杜氏や蔵人が故郷で従事する農業・漁業・畜産業・林業などの仕事の中で唄い継がれてきた作業唄が元になっていると言われています。酒造りでは、各工程の作業にリズムを与え、短い歌詞を何番まで唄うかによって適当な作業時間を計るとともに、心をひとつに士気を高めるなどの役割がありました。

近年では、お祝いの席など各種の催しで、米を水洗いする際の「洗米場唄」(かしばうた)、もと(酒母)造りのための「もとすり唄」「千本づつき唄」、「櫂入れ唄」(かいいれうた)、酒造り唄をアレンジした「祝い樽入場の唄」「鏡開き唄」などをご披露することもあります。当社では、酒屋男の心がこもった酒造り唄を歌い継ぐことで、酒造りの心意気を伝えています。

京都市内小学校で環境学習の出前授業

京都商工会議所の「小学生への環境学習事業」の一環として、月桂冠総合研究所では、2007年度から地元京都の小学校への出前授業を行っています。同事業の「科学する心」を養うという主旨から、当社の特徴を生かし、「はっこうで食べ物をおいしくする」「はっこうが地球をすくう」をテーマに授業を進めています。小学生にとっては、まだ馴染みの薄い「発酵」についての学習をベースに、日ごろよく耳にして関心の高い「環境」へと発展させるもので、「はっこう博士」に扮した研究員が説明します。

授業の最後には「卒業試験クイズ」を実施。正解者には「はっこう博士認定バッジ」を進呈している

発酵食品とその原料の組み合わせを考える「はっこう食品探し」のコーナーでは、当社が準備した手作りの「食品トランプ」を使ってグループ学習に取り組んでもらいます。その中で、発酵食品は微生物を利用してつくることや、微生物の働きで食品がおいしくなることを学びます。エネルギーを発酵の力でつくるバイオエタノールを紹介するコーナーでは、真剣に耳を傾け、ノートに記述するなど、小学生の地球環境問題への関心の高さをうかがわせます。

この取り組みを10年間継続してきたことに対して、京都市教育委員長から感謝状(写真右)、京都商工会議所(事業主催者)から感謝盾(同左)を受領しました(2017年3月)。月桂冠総合研究所では、これからも、「環境学習」出前授業を通じて、子供たちの「科学する心」を育てる活動に貢献していきます。

「米から酒へ・酒から米へ」循環型の農業と酒造り

米から酒へ、酒から米へ
JR東海道線(琵琶湖線)沿いに立つ、酒粕有機肥料使用米栽培地区をPRする看板(滋賀県彦根市稲枝地区、稲枝駅南側)

月桂冠は、JA東びわこ・稲枝地区(滋賀県彦根市)と、循環型の農業と酒造りに1996年から取り組んでいます。酒粕を主体にした有機質肥料を用いて稲を育て、収穫した米で酒を造り、酒粕を肥料として再び土に返し、稲を育てるという「米から酒へ・酒から米へ」の循環を繰り返すものです。
稲枝地域の農家は、琵琶湖の水質への影響を少なくするために、従来から有機質肥料の割合を高めるなど、環境への配慮に取り組んでいたことから、新たなアイデアとして酒粕を肥料とした米作りと酒造りに取り組むことにつながりました。
この取り組みが、2015年2月6日、京都市主催の「第12回 京都環境賞」特別賞(企業活動賞)を受賞しました(活動名:「酒粕から米へ・米から酒へ」京都伏見の循環型酒造り)。1996年以来18年にわたる活動の継続性、酒造りと酒米栽培とを循環させるという斬新性などが認められ、企業活動賞として選考されました。「京都環境賞」は、環境の保全に貢献する先進的で優れた活動を表彰するもので、平成15年度から毎年実施されています。

米作りと酒造りの循環から生まれた商品を、1999年に初めて商品化、2004年以降、「厳選素材純米」として販売
酒粕活用実証圃で生育途上の稲(上)と、その収穫の様子

肥料は、酒粕を乾燥・粉砕し、肥料会社で粒状に加工されたものを使います。酒粕には、米由来のデンプンのほか麹や酵母由来のタンパク質、繊維質などの有機物が多く含まれており、特にタンパク質中の窒素成分が栄養素として稲の生育に活用されます。田んぼの土作りにも稲わら、もみ殻など有機物が用いられています。

これからも循環型社会に貢献できるよう取り組みを進めます。

月桂冠ホームページ「お酒の博物誌」に酒情報を掲載

「お酒の博物誌」では、酒の種類や製造工程を解説した「醸す技を知る」、「飲み方・使い方」、酒との正しいつきあい方をまとめた「飲酒の心得」、「酒産業史」、「酒文化探求」など、日本酒にまつわる情報を掲載しています。このコーナーは、1997年度(平成9年度)、「消費者教育教材資料表彰・優秀賞」(財団法人・消費者 教育支援センター)を受賞しました。

『月桂冠社員の酒粕レシピ』を監修

「月桂冠社員の酒粕レシピ」

日本酒の副産物である酒粕を、日々、食卓で楽しく活用していただこうと、酒粕料理のレシピ本『月桂冠社員の酒粕レシピ』を監修し、株式会社メディアファクトリー(現・株式会社KADOKAWAメディアファクトリーBC)から発行しました(2012年11月30日、B5版・96ページ、ISBN:978-4-8401-4898-6)。

酒粕は味噌や醤油と同じ発酵食品であり、万能調味料として身近に置いて、和・洋・中のさまざまな料理のほか菓子・ドリンクなどに幅広く使えることを計74のレシピにより紹介しています。酒粕を料理に少し加えるだけで味わいに深みが増して美味しくなり、発酵で生じた多様な成分を摂り入れることができます。レシピは、月桂冠社員が自ら実践してきた料理をはじめ、社員が家族に学んだ知恵、友人・知人にリサーチして得た情報などをもとに作成、料理研究家・樋口秀子さんの協力により、わかりやすくまとめています。

地下水保存活動

酒蔵の井戸(月桂冠内蔵)

「伏見酒造組合」および、伏見の酒造技術者の集まり「伏見醸友会」の活動として、地下水の保存に取り組んでいます。地下水の挙動についての研究、醸造用水の分析や地下水位測定などの調査を実施し、酒造りにも用いる地下水をきれいな状態で保つことに努めています。

京都盆地の地下には「京都水盆」と呼ぶ琵琶湖に匹敵するほどの大きな水がめが存在し、211億トンもの水を貯えていると関西大学の楠見晴重教授が発表されました。この水がめは南部に行くほど深く、京都盆地の南端に位置する伏見の辺りで、水の層が最も厚いと言われており、水の豊かさを裏付けるものとなっています。

日本酒による乾杯の推進

近年、日本酒による乾杯の推進を通して、日本文化・伝統の持つ素晴らしさを見直し促進しようとする動きが見られます。当社では、伏見酒造組合の一員として、日本酒による乾杯の推進に取り組んでいます。

京都市では、「清酒の普及の促進に関する条例」が施行されました(京都市条例第32号、2013年1月15日)。京都市、日本酒を生産する事業者、市民が協力して、<伝統産業である清酒による乾杯の習慣を広めることにより,清酒の普及を通した日本文化への理解の促進に寄与する>ことを目的としています。「乾杯条例」とも称され、乾杯の機会に日本酒を用いることが奨励されています。古くから酒にまつわる産業が集積し、酒どころとしての一面を持つ京都で、日本酒で乾杯することを象徴として、日本文化と伝統産業の振興を呼び掛けています。

「乾杯条例」は、全国の地方公共団体の中でも京都市が初めて施行したものです。京都市の条例を参考に、その後、いくつかの都市で同様の条例化の動きが見られます。

伏見酒造組合や「日本酒がうまい!」推進委員会による、美味しい飲み方の普及活動

伏見酒造組合の一員として、日本酒まつりの開催、期間限定バーなど、伏見の酒を楽しんでいたくための企画に参画しています。

また、京阪神の灘・伏見の酒造8社(白鶴酒造・日本盛・宝酒造・辰馬本家酒造・大関・月桂冠・菊正宗酒造・黄桜)では、「日本酒がうまい!」推進委員会として共同で、日本酒の美味しい飲み方の普及に努めています。季節ごとの日本酒の楽しみ方について、おいしい燗酒のコツの紹介や、夏には日本酒ロックによる飲み方の推奨、「立冬は鍋と燗の日」としてPRするなど、市場への提案活動を実施しています。