
料理と日本酒を合わせるときに重要なのが「マリアージュ」という考え方です。
料理と酒、お互いの良さが調和し、新しい美味しさを生み出すことを指します。
私たちは「相性の良さを科学的に導き出す」方法の研究を進めてきました。その基本になるのが「マリアージュの方程式」です。
マリアージュでは料理と日本酒の「濃さ」が近いことがポイントです。
以下のステップで、料理と日本酒を合わせていきましょう。
まずは、上の表を元に素材・調味料・調理法で料理の「濃さ」に点数を付けます。
味の薄い食材や油を使わない調理法、酸味を主とした味付けなど、軽快な料理は点数が低く、逆に油で揚げたり、煮込んだりなど、濃厚な料理は点数が高くなります。ここには一部の食材や調味料しか記載していませんが、味わいの「濃さ」が点数の目安になります。薬味を使って点数を調整することも可能です。
続いて、日本酒の「濃さ」にも点数をつけます。
日本酒の点数化には「日本酒度※」を使います。日本酒度がプラスになるほどボディの軽い日本酒となり、点数は低くなります。逆に日本酒度がマイナスであるほどボディが濃厚であるため、点数が高くなります。また飲む温度を調整することでも点数を加減することもできます。
※日本酒度は日本酒のアルコール度数が15度の時の大まかな目安の数値です。
最後に上記で計算した料理と日本酒の点数を比較します。この点数が近いほど、調和がとれた良いマリアージュといえるのです。
月桂冠では上記の表に掲載している食材や調味料以外にも、多くのペアリングデータを蓄積しています。ぜひペアリング詳細ページを併せてご覧ください!
とんかつは豚肩ロースという食材(+2点)を、パン粉揚げ(+3点)で調理するため、合計5点の料理です。
ここにレモンを絞ると(-1点)、合計4点の料理になります。料理の味わいが軽くなるため、日本酒も味わいが軽いものと合わせやすくなります。酸味が揚げ物の油をさっぱりさせ、日本酒の柔らかな甘みが調和して、全体の味わいが一層引き立ちます。
また塩(+1点)をつければ、合計6点の料理になり、中くらいのボディの日本酒と好相性です。脂の甘味と日本酒の香味が、どちらも程よく感じられます。
またタルタルソース(+3点)を使えば、合計8点の料理になるので、より濃醇な味わいの日本酒と一緒に楽しむことができます。濃厚なタルタルソースに甘口酒のボリューム感が寄り添うことで、料理とお酒の両方をより贅沢に感じられるのです。
他にもとんかつソース(+3点)をかけると、合計8点の料理となります。合わせたい日本酒が中くらいのボディ(6点)のものだった場合は、日本酒の温度を調整してみるのも一手です。ぬる燗(+2点)にすると合計8点の日本酒になり、濃厚な料理とも合わせやすくなります。
さらにマリアージュの魅力は、理論的な「方程式」をベースにしながらも、自分の感覚で楽しめる点にもあります。研究結果に基づく指標をヒントにしつつ、「この料理にこのお酒を合わせてみたい」という自由な発想でぜひ試してみてください。


