社会・地域貢献活動地域活動

地域の清掃活動

月桂冠が創業350年を迎えた1987年春、記念事業として濠川(ほりかわ)堤の清掃を始めました。その後、地元団体、住民の方々の参加も見られ、年々広がりを見せるようになっていきました。こうした活動がきっかけとなり、行政の環境整備計画が促進され、濠川河畔の遊歩道の設置などにつながりました。伏見城の外濠だった濠川は、伏見城築城(1594年)の際、宇治川の水を引き込んで構築され、宇治川、淀川へとつながっています。

伏見城内に宇治川の水を引き込み、巨椋池に堤防を築くなど大改修が行われた。伏見城外堀の水流は、現在も濠川(ほりかわ)として残っている。伏見城下町図より(月桂冠大倉記念館・蔵)

2003年9月からは、京都市まちの美化市民総行動実行委員会(会長・大倉敬一・月桂冠相談役)が主催する、市民あげての美化活動に合流する形で、企業や自治会などと共に実施するようになりました。京都市街から南部の伏見を貫く幹線道路の油小路通りでの清掃活動にも、京都市まちの美化市民総行動として毎月参加するほか、本社の近隣を含む社屋周辺の清掃活動も実施しています。

本社近隣での清掃活動

酒蔵の街並み・景観の保持

  • 大倉家本宅(1828年、文政11年)、旧本社(1919年、大正8年)の保存
  • 月桂冠大倉記念館の公開(1982年)に先立ち周辺を環境整備
  • 景観に配慮した新本社(1993年、平成5年9月)の建設

月桂冠本社が所在する伏見では、豊臣秀吉が築城した伏見城の大手門から続く大手筋を中心に、城下町時代の街割りによって、現在の街路が形成されています。街中には伏見城の外濠だった濠川や合流する宇治川派流などの運河が巡り、観光船の十石舟や川沿いの遊歩道から、運河に沿って建ち並ぶ酒蔵群を望むことができます。

伏見夢百衆

月桂冠大倉記念館や隣接する内蔵酒造場のある南浜一帯は、かつては水陸交通のターミナルとして、三十石船が発着していました。伏見の酒は明治以降、鉄道網の広がりを大きな力として全国に市場を拡大していきます。商いの広がりと共に酒蔵の規模を拡大させ、川沿いの大名屋敷跡に次々と酒蔵を建てました。現在の月桂冠昭和蔵(京都市伏見区片原町)は紀州藩、大賞蔵(同・東堺町)は薩摩藩、また月桂冠情報センターは土佐藩(同・南浜町)の伏見屋敷でした。

現在も、月桂冠の本社一帯には、江戸・明治・大正・昭和・平成と各時代の建物が並んでいます。この一帯は、「京都美観風致賞・特別賞」受賞(1987年)、「京都市・都市景観賞・市長賞」(1994年)を受賞、京都市の「重要界わい景観整備地域」(1997年)にも指定されています。

環境省の「かおり風景100選」に「伏見の酒蔵」として選ばれました(2001年)。「豊かな香りとその源となる自然や文化などを将来に残し、伝えていく」ことを目的に全国から公募され、とくに優れた「かおり風景」として選ばれたものです。「伏見濠川の柳並木」が「京都市自然100選」(2000年1月)に、さらに、「遊歩百選(行ってみたい、歩いてみたい、日本の100か所)」のひとつに京都市伏見地区が選ばれました(主催・読売新聞、後援・総務省、環境省、国土交通省、農林水産省ほか、2002年8月)。特に酒の寒造りが最盛となる厳冬期には、蒸米や発酵によって醸し出される香りが酒蔵のあたりに漂い、酒どころの雰囲気が高まります。

2002年には京都市による景観整備の一環として、記念館に面した市道から旧本店にかけての電柱が地中化され、土色に近い色彩でカラー舗装が行われました。

また、経済産業省が認定する「近代化産業遺産」として、月桂冠から「月桂冠大倉記念館」と同館所蔵の「伏見の酒造用具」、「内蔵酒造場」「月桂冠旧本社」「月桂冠昭和蔵」などが2007年11月に選ばれました。近代化産業遺産は、幕末から昭和初期にかけて、地域の産業近代化や技術発展に貢献した施設を認定するもので、月桂冠の施設は「日本酒製造の近代化を牽引(けんいん)した灘・伏見の醸造業の歩みを物語る近代化産業遺産群」のひとつとして紹介されています。

これらの建物のうち月桂冠旧本社では、NPO法人・伏見観光協会が「おくつろぎ処・おみやげ処・あんない処 伏見夢百衆(ふしみゆめひゃくしゅう)」として、喫茶、土産販売・観光案内所を運営しています。大正時代の旧酒蔵(1914年築)は、飲食施設として利用されています(「京の台所 月の蔵人」、株式会社一休庵が運営)。

月桂冠本社界わいの景観
  1. ①大倉家本宅 1828年(文政11年)建造
  2. ②内蔵酒造場 1906年(明治39年)建造
  3. ③月桂冠大倉記念館 1909年(明治42年)建造
  4. ④月桂冠旧本社 1919年(大正8年)建造
  5. ⑤月桂冠本社 1993年(平成5年)建造
  6. ⑥濠川(ほりかわ)

地域観光の振興 NPO法人伏見観光協会に協力

酒どころとして知られる京都・伏見は京都盆地の南端に位置しています。京都駅から7キロほど南へ足を延ばせば、城下町・宿場町・港町として発展してきた歴史の面影を残す街並みを見ることができます。その魅力に触れていただこうと、NPO法人伏見観光協会では、豊かな水、歴史、酒蔵を核として観光の振興に取り組んでいます。観光船・十石舟、三十石船の運航、観光案内所・伏見夢百衆の運営(喫茶、土産販売)、酒蔵通り界隈の街路ライトアップ、日本酒まつり(きき酒、蔵開き)、地域の飲食店の魅力を伝える「伏見バル」の実施など、さまざまな事業を行っています。月桂冠は協会の運営に参画し、事業の実施にも協力しています。

十石舟と月桂冠内蔵

月桂冠が酒蔵群の一角で、1987年から一般公開する日本酒の資料館「月桂冠大倉記念館」や連なる酒蔵群は、「酒どころ伏見」観光のランドマークの一つとして知られるようになりました。月桂冠本社南側の当社敷地(記念館の東側)には、キリシタン大名・高山右近関連史跡「信仰の小道」が現存していることが、2015年、調査によりわかりました。また界わいには坂本龍馬が逗留した旅籠・寺田屋の遺址や伏見奉行所跡などが所在し、歴史探訪や散策などで多くの方々が京都・伏見を訪ねられています。

地域社会への感謝 創業380年記念事業として、「バスの駅」設置に協力

京都市バスの西大手筋[北行]停留所(京都市伏見区片原町)に隣接する昭和蔵工場の敷地に上屋やベンチを備えたバス待ちスペースを月桂冠が提供、2018年1月11日、『「バスの駅」西大手筋 お酒と水のまち 伏見』として新装したバス停留所が誕生しました。

これまで同バス停留所は、歩道が狭いため十分なバス待ちスペースがなく、上屋やベンチも設置されていませんでした。そこで、月桂冠が創業380年を迎えた周年の記念事業として、地域社会への感謝の思いから整備を進めました。バス待ちスペースの拡張と、上屋やベンチの新設などにより、より快適なバス停となりました。

「バスの駅」設置は、京都市交通局が推進している事業で、地域や民間事業者などの協力により、バス停留所に上屋やベンチ、バス接近表示器などを設置して、バス待ち環境の向上を目指す取り組みです。2014年度から実施されており、今回の設置で累計44箇所となっています。

「お酒と水のまち 伏見」に相応しい意匠を検討。「人が憩う新たな水の流れ」をコンセプトに、京の町並みをイメージする格子壁や間仕切り壁、水の流れを表現する舗道面の敷瓦、板塀が連なる伏見の酒蔵をイメージするデザインで構成した
2018年1月11日、完成披露式を実施し、「バスの駅」標識柱の除幕を執り行った(写真右から、京都市長・門川大作様、京都市公営企業管理者交通局長・山本耕治様、板橋地区女性会会長・高橋肇子様、月桂冠株式会社代表取締役副社長・葛西正昭

高濃度エタノール製品を提供

新型コロナウイルスによる感染症が拡大し手指消毒用エタノールが不足している状況において、月桂冠は、消毒用エタノールとして代替できる高濃度エタノール製品(アルコール濃度65%、1Lポリ容器詰)1,490本を京都市に寄贈しました(2020年5月20日)。

アルコールを扱う酒造会社として貢献できることはないかを検討、高濃度エタノール製品が手指消毒用エタノールの代替として利用可能になったことを受け、京都市と相談の結果、提供に至りました。この他、医療機関等への寄贈も行っています。

2020年5月26日、京都市役所北庁舎で執り行われた贈呈式では、京都市長の門川大作さん(写真中央)に、月桂冠・常務取締役製造本部長・秦洋二(同右)と同取締役営業副本部長・大倉泰治(同左)から製品を手渡し、市長からの感謝状を受領しました