環境への取り組み「米から酒へ・酒から米へ」循環型の農業と酒造り

四半世紀にわたるサステナブルな取り組み、酒粕を肥料として栽培した米で日本酒を醸造

JR東海道線(琵琶湖線)沿いに立つ、酒粕有機肥料使用米栽培地区をPRする看板(滋賀県彦根市稲枝地区、稲枝駅南側)

月桂冠は、JA東びわこ・稲枝地区(滋賀県彦根市)と、循環型の農業と酒造りに1996年から取り組んでいます。酒粕を主体にした有機質肥料を用いて稲を育て、収穫した米で酒を造り、酒粕を肥料として再び土に返し、稲を育てるという「米から酒へ・酒から米へ」の循環を繰り返すもので、地球環境の保全を始め持続可能な社会への一助となるサステナブルな取り組みを、四半世紀にわたり連綿と進めてきました。

稲枝地域の農家は、従来から、琵琶湖の水質への影響を少なくするために、有機質肥料の割合を高めるなど、環境への配慮に取り組んでいました。一方、月桂冠では、酒造りの副産物である酒粕の用途開発に取り組んでいました。その中から、新たなアイデアとして酒粕を肥料とした米作りと酒造りへの取り組みが生まれました。

酒粕から粒状に加工された肥料と、その肥料を用いて生育中の稲

肥料は、酒粕を乾燥・粉砕して、肥料会社で粒状に加工し、稲の生育・栽培のために最適化されたものを使います。酒粕には、米由来のデンプンのほか麹や酵母由来のタンパク質、繊維質などの有機物が多く含まれており、特にタンパク質中の窒素成分が栄養素として稲の生育に活用されます。田んぼの土作りにも稲わら、もみ殻など有機物が用いられています。酒粕肥料を用いるメリットとして、土壌で徐々に、タンパク質由来の窒素成分がアンモニア態窒素などへ分解されながら栄養となっていくため、土壌の負荷を減らすことができます。さらには周辺河川や琵琶湖への影響も少なくできることがわかりました。この循環型農業では化学肥料を一切使わず、農薬も通常と比べて50%以上削減していることから、栽培された米は滋賀県の「環境こだわり農産物」に認定されています。

「第12回 京都環境賞」 特別賞(企業活動賞)を受賞

2015年2月6日、京都市役所(京都市中京区)で行われた表彰式にて、京都市長の門川大作さんから、月桂冠・生産管理部の小島泰弘(前列右から3人目)に表彰状が授与された(写真提供:京都市)

酒造りにより生じた酒粕を肥料として稲作に活用する循環型の農業と酒造りへの取り組みに関して、JA東びわこ稲枝酒粕米部会が、2007年、農林水産省「第13回環境保全型農業推進コンクール」で大賞(農林水産大臣賞)を受賞しました。また、2015年には、環境の保全に貢献する先進的で優れた活動を京都市が表彰する「第12回 京都環境賞」特別賞(企業活動賞)を月桂冠が受賞(活動名:「酒粕から米へ・米から酒へ」京都伏見の循環型酒造り)、長年ににわたる活動の継続性、酒造りと酒米栽培とを循環させるという斬新さなどが認められ、高く評価されました。