米麹に含まれるデフェリフェリクリシンに美白効果を確認!
シミの原因であるメラニン。月桂冠は、清酒醸造で使われる米麹に含まれるデフェリフェリクリシン(Dfcy)の機能性研究を行ってきました。米麹には、古くから美白作用があることが知られていましたが、米麹に含まれるDfcyの美白効果については知られていませんでした。本研究レポートでは、マウス細胞試験とヒト皮膚モデル試験においてメラニン抑制効果と美白効果を見出したことを報告します。Dfcyは細胞試験において、ビタミンEより強いメラニン抑制効果を示し、さらにビタミンCよりも強い美白作用を示しました。
デフェリフェリクリシンを肌に塗布して美白になるだけでなく、摂取によっても美白になる可能性もあります。
米麹に含まれるデフェリフェリクリシンとは
デフェリフェリクリシン(Dfcy)は、清酒醸造で用いられる米麹に含まれおり、麹菌によって生産される環状のペプチドです1)。Dfcyが鉄と結合して生成するフェリクリシン(Fcy)は着色物質なので、無色透明であることが求められる清酒にとって、このFcyは不要な物質でした。これまでDfcyとFcyを減少させる研究がなされてきましたが、月桂冠は逆転の発想によりDfcyとFcyについての機能性研究を行ってきました。これまでに、鉄と結合したFcyに鉄欠乏性貧血の改善効果があることを見出しました。
一方、鉄が結合していないDfcyについては抗酸化活性があることを明らかにしてきました。そこで、本研究ではDfcyの美白効果について検討しました。
[1]Dfcyのメラニン生成の抑制効果
Dfcyのメラニン生成抑制機能を確認するために、マウス培養細胞を試験に用いました。Dfcy、ビタミンE、水(対照)などを加え培養を行い、メラニンの生成を目視で確認しました2)。メラニンによる着色の結果を図1に示します。
対照では、茶黄色のメラニン生成が観察されたのに対し、Dfcyを200ppm添加した区分では、茶黄色にはなりませんでした。この結果から、Dfcyはマウス細胞試験でメラニン生成抑制効果があることが明らかになりました。また、「DfcyはビタミンEよりもメラニン生成抑制効果がある」こともわかりました。
[2]生体に近いヒト3次元皮膚モデルでのDfcyによるメラニン生成の抑制効果
さらに、ヒト皮膚に近い評価システムであるヒト3次元培養表皮モデル細胞を用いて、Dfcyのメラニン生成抑制効果を評価しました。Dfcy、ビタミンCと水(対照)を細胞に添加し、培養後に色素沈着(メラニン生成)、産生メラノサイト(メラニンを産生した細胞)、および、細胞の生存を確認しました。
図2に示すように、DfcyはビタミンCよりも、強く色素沈着およびメラノサイトの産生を抑制しており、特にDfcy 1000ppmではメラノサイトは確認されませんでした。以上のことから、「DfcyはビタミンCよりも強い美白効果を示す」ことが明らかとなりました。
また本試験では、Dfcyを水に分散させて添加したのみにもかかわらず、美白効果を示したことから、Dfcyは3次元培養表皮細胞内に浸透して効果を発揮したと考えられます。このことから、Dfcyはヒトの皮膚においても美白効果が期待できます。
本研究では、デフェリフェリクリシンに美白効果があることを科学的に明らかにしました。デフェリフェリクリシンは皮膚に浸透し、メラニン生成を抑制して美白効果を示すことから、化粧品・入浴剤として、肌に作用させるだけではなく、米麹を摂取することによっても美白になる可能性も示唆されました。
学会発表
- 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(5)-培養細胞および皮膚モデルにおけるデフェリフェリクリシンの美白効果-、日本農芸化学会大会(2012)
○大浦新、堤浩子、秦洋二(月桂冠・総合研究所)
特許
- 特許第5943543号、【発明の名称】メラニン抑制剤およびその用途
参考
- 1) デフェリフェリクリシンについて
2分子のセリン、1分子のグリシンおよび3分子のアセチル化されたヒドロキシオルニチン、これら6つのアミノ酸で形成されている環状ペプチド。清酒の着色物質として1967年に醸造試験所・蓼沼先生らにより単離同定されました。 - 2-3) 試験条件については、上記特許を参照。
(掲載日:2016年12月14日)