月桂冠総合研究所
研究内容
美と健康の研究

米麹に含まれるデフェリフェリクリシンに抗酸化作用を確認!

老化の原因の一つである酸化。月桂冠は、清酒醸造で使われる米麹に含まれるデフェリフェリクリシン(Dfcy)に、生活習慣病、慢性疾患、老化、がんなどの原因となる活性酸素種を消去する抗酸化活性があることを明らかにしました。人体にはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)などの活性酸素を消去する酵素やアスコルビン酸(ビタミンC)、α-トコフェノール(ビタミンE)等の抗酸化物質があり、これらの働きで体内の活性酸素は除去されます。Dfcyは、既知の抗酸化成分であるアスコルビン酸やフェルラ酸と同様にDPPHラジカル消去活性を示し、フェルラ酸と同等のSOD様活性を有していました。
米麹を摂取することで、体内の活性酸素種を減少させ、疾病のリスクを低減させる可能性も期待されます。

米麹

米麹に含まれるデフェリフェリクリシンとは

清酒醸造で用いられる米麹に含まれるデフェリフェリクリシン(Dfcy)は、麹菌によって生産される環状のペプチドです。2分子のセリン(Ser)、1分子のグリシン(Gly)および3分子のアセチル化されたヒドロキシオルニチン(Aho)、これら6つのアミノ酸で形成されている環状ペプチドです。清酒の着色物質として1967年に醸造試験所・蓼沼先生らにより単離同定されました(図1)。

図1 デフェリフェリクリシンとは
図1 デフェリフェリクリシンとは

Dfcyが鉄と結合して生成するフェリクリシン(Fcy)は清酒の着色物質なので、無色透明であることが求められる清酒には、このFcyは不要な物質でした。これまでDfcyとFcyを減少させる研究がなされてきましたが、月桂冠は逆転の発想によりDfcyとFcyについての機能性の研究を行ってきました。これまでに、鉄と結合したFcyに鉄欠乏性貧血の改善効果があることを見出しました。
一方、鉄が結合していないDfcyの有用性については明らかになっていませんでした。そこで、本研究ではDfcyの抗酸化活性について検討することとしました。

デフェリフェリクリシンの抗酸化活性

まず、Dfcyのスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)様活性を測定しました1)。キサンチンオキシダーゼを用いた反応系では活性酸素(O2-)が発生し、それをSODが分解します。Dfcyにラジカルを消去するSOD様活性があるか試験し、既知の抗酸化剤であるフェルラ酸やアスコルビン酸と比較しました(図2試験1)。その結果、Dfcyはフェルラ酸と同程度のSOD様活性を有することが示されました。
次に、DPPHラジカル消去活性を試験しました1)。DPPHはそのラジカルにより青紫色になります。Dfcyを用いて測定したところその着色が弱まり、Dfcyにはラジカル消去活性があることが明らかとなりました。既知の抗酸化剤であるフェルラ酸・アスコルビン酸とDfcyとを比較したところ、同様にDPPHラジカル消去能を有することが示されました。

図2 Dfcyの抗酸化活性
図2 Dfcyの抗酸化活性

本研究では、デフェリフェリクリシンに抗酸化能があることを明らかにしました。デフェリフェリクリシンまたはデフェリフェリクリシンを含む米麹を摂取することで体内での活性酸素種を減少させ、生活習慣病、慢性疾患、がんなどのリスクを低減させることが期待できます。

学会発表

  • 麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(4) -デフェリフェリクリシンの抗炎症および抗酸化効果-、日本農芸化学会大会(2012)
    ○入江元子、福田克治、秦洋二、市川寛*、内藤裕二*、吉川敏一*(月桂冠・総合研究所、京都府立医大*)

特許

  • 特許第5384697号、【発明の名称】抗炎症剤及び抗酸化剤

参考

  • 1) 抗酸化活性測定法については、上記特許を参照。

(掲載日:2016年12月14日)