酒粕の分解物に抗酸化ペプチドが含まれることを確認!
老化の原因の一つである酸化。月桂冠は、清酒醸造で得られる酒粕のプロテアーゼ分解物(酒粕分解物)に、抗酸化活性があることを明らかにしました。その強さは、肝臓など体内で抗酸化の役割を担うペプチド「グルタチオン(GSH)」に匹敵するものでした。また酒粕分解物から抗酸化活性を有するペプチド17種類を同定することができました。
酒粕にはタンパク質を多く含んでおり、体内でプロテアーゼによってペプチドやアミノ酸にまで分解されて吸収されることから、酒粕を摂取することにより体内での抗酸化による効用が期待されます。
酒粕分解物の新たな機能性
月桂冠はこれまで、酒粕分解物に血圧上昇抑制活性(アンギオテンシン変換酵素阻害活性)、健忘症抑制活性(プロリルエンドペプチダーゼ酵素阻害活性)があること、またそれらに関与するペプチドを見出だしてきました。今回は、酒粕分解物の新たな機能性として、抗酸化活性に着目して検討を行いました。
酒粕分解物の抗酸化機能
まず、酒粕を酵素であるプロテアーゼで分解し、酒粕分解物を調製しました。得られた酒粕分解物について、リノール酸自動酸化抑制(抗酸化活性)、SOD様活性(活性酸素除去能)およびDPPH消去能(ラジカル消去能力)について試験を行い、酒粕分解物の抗酸化活性を測定しました1)。そのうち、リノール酸自動酸化抑制のデータのみを記載しますが、強力な抗酸化ペプチドであるグルタチオン(GSH)と同程度の抗酸化活性を、酒粕分解物は有していることが明らかとなりました(図1)。
次に、酒粕分解物をゲル濾過と逆相クロマトグラフィーで分離し、17種類のペプチドのアミノ酸配列を決定しました。そのうち代表的なペプチドの抗酸化活性は図1に示すように、グルタチオンと同程度の抗酸化活性がありました。
酒粕分解物とそれに含まれる7種類のペプチドに、グルタチオンと同程度の抗酸化活性があることを明らかにしました。酒粕にはタンパク質を多く含んでおり、体内でプロテアーゼによってペプチドやアミノ酸にまで分解されて吸収されることから、酒粕を摂取することにより体内での抗酸化による効用が期待されます。また、酒粕分解物は機能性食品などへの応用が期待されます。
学会発表
- 酒粕ペプチド中に含まれる抗酸化ペプチドの同定、日本栄養・食糧学会(2010)
○堤浩子、大浦新、秦洋二(月桂冠・総合研究所)
特許
- 特許第5474369号、【発明の名称】抗酸化剤及び肝機能障害抑制剤
参考
- 1) 酒粕分解物の調製方法は、上記特許記載を参照。また、リノール自動酸化試験は、津志田ら、日食工誌、41(9)、p611-618(1994)の方法を参照。
(掲載日:2016年12月14日)