研究内容
デフェリフェリクリシンに調理時の肉の臭みを抑える効果
麹菌育種や米麹の製造工程を工夫することで、デフェリフェリクリシン(Dfcy)を高含有する日本酒を醸造可能としました。また、Dfcyを高含有するモデル料理酒には、調理時に発生する不快臭(ヘキサナールなど)の抑制効果があることを明らかにしました。
[1]Dfcy高含有日本酒の製造
麹菌Aspergillus oryzaeが生産する環状ペプチドであるDfcyは抗酸化活性を有します。そのことに着目し、食品加工や美白効果などDfcyの機能性を探索してきました。一方、製麹方法を工夫することによりDfcy高含有米麹を製造することができました。また、それを用いることにより、Dfcy高含有日本酒も醸造することができました。
[2]Dfcy高含有モデル料理酒による消臭試験
そこで、Dfcyの畜肉調理時の肉の臭み抑制効果を調べるため、エタノール水にDfcy濃度が0-1000 mg/Lとなるように添加し、Dfcy含有モデル料理酒を作成しました。このモデル料理酒を、豚ミンチに対して重量比15%となるよう混ぜ込んだ後、加熱(105℃、15分)調理しました。各加工サンプルの生臭さ評価を官能試験(5段階評価)で行った結果、Dfcy濃度依存的に生臭さが顕著に抑制されていました(図1)。この生臭さの抑制には、ヘキサナール等の発生抑制が関わっていることも分かりました。
麹菌が生産するDfcyを高含有する日本酒を畜肉の調理に用いることで、ヘキサナールなどの不快臭抑制効果が期待できます。

学会発表
- デフェリフェリクリシン高含有清酒の調理効果 ~畜肉調理時の不快臭抑制~、日本醸造学会大会(2018)
○柏原宏行、冨田麻理絵、戸所健彦、福田克治、堤浩子、秦洋二 - デフェリフェリクリシン高含有清酒による畜肉調理時の不快臭抑制効果、日本調理科学会(2018)
○柏原宏行、戸所健彦、福田克治、堤浩子、秦洋二 - デフェリフェリクリシン高生産麹菌の製麹と応用、日本醸造学会大会(2017)
○伊出健太郎、柏原宏行、大澤麻水、戸所健彦、福田克治、堤浩子、秦洋二
(掲載日:2018年11月7日)