月桂冠総合研究所
研究内容
お酒の研究

さまざまなシーンで楽しめるスパークリング清酒の開発
~そのまま冷やして飲んでもおいしく、様々な料理との食相性も良い二刀流への挑戦~

図 うたかた

開発の背景

市販されているスパークリング清酒と呼ばれる発泡性の清酒(スパークリング日本酒あるいは発泡性日本酒などとも呼ばれる)の多くは、炭酸感とその甘さから、あまり清酒(日本酒)にあまり馴染みのない方からも評価が高いです(図参照)。しかしながら、フードペアリングやマリアージュのような、料理とあわせて飲むことを前面に打ち出したスパークリング清酒の開発は、ほとんど行われてきませんでした。そこで、お酒だけでも楽しめ、かつ幅広い料理と相性が良いスパークリング清酒の開発を行うこととしました。

研究と開発

研究の結果、スパークリング清酒のおいしさは甘みと酸味がポイントであること、特に料理との食相性のよさは、甘すぎずキレも良いことが重要とわかりました。そこで、甘さと酸味のバランスが最適で、冷やして飲むとおいしい酒質を実現するため、以下の3点にこだわり、オリジナル酵母やオリジナルの発酵方法の開発を進めました。

  • 冷やすとよりおいしく感じる酸(有機酸)を増やすこと。
  • フルーティで飲みやすく感じる吟醸香を増やすこと。
  • お酒だけでも楽しめ、料理との食相性にも適するように絶妙なバランスの炭酸を含むこと。

そのまま飲んでもおいしく、料理との食相性の良さを両立させるのに、4年の開発期間を要しました。

結果

一般的な清酒やこれまでのスパークリング清酒に含まれる多くの酸は温めておいしい酸でしたが、今回の開発品は、温めておいしい酸と冷やしておいしい酸が1:1に近い割合のスパークリング清酒にしました。冷やしておいしく感じる酸は、果物によく含まれる酸です。フルーティな吟醸香との相乗効果で、より爽やかな味わいに仕上がりました。100%お米由来のほどよい甘さで(図参照)、甘酸っぱさとすっきりとした飲みやすさが実現しました。適度な炭酸刺激とかろやかさが得られるよう、炭酸ガスの注入量をコントロールし、お酒だけでも楽しめ、料理との食相性も高いスパークリング清酒が完成しました。糖分や発酵による成分が豊富な甘酸っぱさゆえ、きめ細かい泡が持続し、グラスに注いだ後も楽しめるスパークリング清酒です。

図 甘辛濃淡 テイストマップ
図 甘辛濃淡 テイストマップ

研究員からのおすすめの飲み方

開発したスパークリング清酒は、もちろんお酒だけで飲んでも甘酸っぱくておいしいですが、10度以下に冷やすと、よりおいしくお楽しみいただけます。
また、開発したスパークリング清酒は、様々な料理との相性が抜群です。一例として、ハンバーグと合わせると、ハンバーグの芳醇さをより引き立てることがわかりました(結果はこちら)**。フライドチキンと合わせると、フライドチキンの油っこさを感じにくくなり、チキンの旨味をより引き立て、スパークリング清酒の酸味が加わることでベストなバランスのおいしさになることがわかりました**。さらに、研究員も驚いたグリーンカレーのスパイシーさやチーズケーキのリッチな風味とも相性がよく、ぜひお楽しみいただきたい組み合わせです。その他、海老チリ、スモークサーモンなどとも組み合わせることをおすすめします。

**TDS法(Temporal Dominance of Sensations)による。TDS法とは官能評価方法の一つで、味覚の時間経過を数量化し、「味わいの変化」を測定することができる評価方法。

図 **TDS法(Temporal Dominance of Sensations)による。TDS法とは官能評価方法の一つで、味覚の時間経過を数量化し、「味わいの変化」を測定することができる評価方法。