歴代最高のおいしさ！？糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒の開発
～長年の研究で、ついに満足できる味わいのWゼロの日本酒を醸造できました！～

開発の背景

昨今の健康意識の高まっていること、直近のコロナ禍での在宅勤務などにより運動不足になりがちであることから、糖質オフやゼロの飲食品の売れ行きが好調です。他方、単に糖質を低減するだけでなく、さらなる機能性強化や、おいしさを追求した低糖質の飲食品の開発が求められています。例えば2020年にはビールで初めて糖質ゼロが上市され好評であるなど、機能性だけでなくおいしさを兼ね備えた本格的な醸造酒が開発されています。
月桂冠では、他の本格的な醸造酒（ビールやワイン）に先駆けて、2008年に日本初の糖質ゼロ日本酒を開発・上市してきました。発売以来、糖質ゼロ醸造の新たなノウハウを蓄積し、地道な品質向上を継続するなど、年々、製法を改良し味わいを高めてきました（糖質とプリン体を低減した主要な商品の項を参照）。また、プリン体ゼロの日本酒も開発し、2017年に上市して同様に改良を行ってきました。そこで、これらの技術を更に進化させ、満足できるおいしい糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒の開発に取り組みました。

これまで開発した技術の概要と開発の取組み

糖質を低減する醸造方法には、糖質スーパーダイジェスト（GSD）製法と、後味すっきり製法という2つの方法をこれまで開発してきました。糖質であるデンプンは米麹由来の酵素などによりグルコースにまで分解され、それを酵母が発酵します。従って、発酵が進めばデンプンとグルコースを含めたその分解物の総量は減ることから、糖質の総量も減ることとなります。しかしながら、日本酒の発酵工程ではグルコースにまで分解できないことも多く、それを主に解決する方法がGSD製法となります。このGSD製法の技術のポイントは、米麹由来の酵素などを工夫することで「デンプン由来の糖質をほぼ全てグルコースに分解すること」にあります。もちろん、グルコースに分解できたからと言って、必ずしも酵母が全て発酵するわけではありません。そこで、後味スッキリ製法の技術で、糖質の分解と共により効率よくグルコースを発酵させることにより、糖質を徹底的に低減させます。これらの2つの製法によってグルコースなどの糖質を極限まで減らした超辛口の「糖質ゼロ」日本酒を醸造することができます。
他方、プリン体ゼロ日本酒は、新たに開発したプリン体カット（特許）製法により実現できました。一般的な日本酒の仕上げ工程でも、プリン体を減らすことはできるものの、同時に味わいの成分も減ってしまいます。プリン体カット製法では、日本酒の仕上げ工程を工夫することで、味わい残しつつプリン体だけを減らすことができました。
今回は、これら3つの製法を組み合わせることで、おいしい糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒の開発に挑戦しました。

開発の結果

今回の開発に当たって、GSD製法、後味スッキリ製法、プリン体カット製法の3つの製法を組み合わせて検討を行いましたが、そのままでは”味わいのある”糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒を醸造することができませんでした。特に糖質ゼロの日本酒は、淡麗な味わいのため、プリン体を無理に減らすと満足できる味わいとなりませんでした。そこで、より多くの味わいを残すために、発酵から貯蔵までの工程を総合的に見直すことで、糖質・プリン体を共にゼロにしつつも味わいのある日本酒を開発できました。数多くの試行錯誤と醸造試験を繰り返し、ようやく満足のいく”味わいのある”糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒を醸造することができました。試作した糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒の満足度を評価したところ、市販の糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒よりも30%も満足度が高いことが分かりました（図（A））。また、市販酒は1口目と比べて3口目の満足度が下がっていることから、だんだん飽きてくることがわかりました。それに対し、試作した糖質ゼロ・プリン体ゼロは、1口目と3口目の満足度がほとんど変わらないことから、「続けて飲みたくなる味わい」であることが示されました（図（B））。糖質ゼロ・プリン体ゼロは、ビールでも評価基準とされるドリンカビリティ（飽きずに飲み続けられるかという指標）が高いとも言える結果です。さらに、客観的な感情を測定できると言われる脳波計で、飲酒時の気分を測定したところ、市販の糖質ゼロ・プリン体ゼロ日本酒よりも「好き」「ワクワク」が向上していることから、満足度が向上している結果と一致しました。