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冷酒の楽しみ方 冷やして、氷を浮かべてオンザロックで

冷酒の楽しみ方
冷やして、氷を浮かべてオンザロックで

飲み方・使い方を知る - 酒のたしなみ方

「冷酒」と「冷や」

「冷酒」と言えば、冷たく冷やして飲む日本酒のことを指します。一方で「冷や」という言葉もよく使われ、「燗酒」に対して「温めない酒」を指して用いられています。もともと、「常温の酒」を指して使われてきましたが、1950年代から1970年代にかけて冷蔵庫が家庭で普及していき、その後、生酒など「冷やして飲む酒」も多く商品化されるようになったことから、「冷や」の範疇に、冷やして飲む酒も含むようになったものと思われます。

冷やして飲んで美味しい酒の代表は「生酒」「吟醸酒」です。生酒・生貯蔵酒のフレッシュさ、吟醸酒のフルーティーな香りと淡麗な味わい、それぞれの酒の持ち味を楽しむために冷やしてお召し上がりいただくことをおすすめします。モロミを荒ごしした「にごり酒」、醸造して間もない「しぼりたての酒」には、麹ばなと呼ぶ刺激的で荒々しい新酒香があり、これらは冷やして飲むのに適しています。冷蔵庫で冷やすだけでなく、氷を入れてオンザロックでも日本酒を楽しむことができます。

きき酒で確かめて、お好みの飲み方で

「いい酒は冷やして飲む」というような観念が一時期ブームのように浸透し、燗に適した酒まで冷やしてしまう傾向があったようです。冷やすか燗にするか、どちらで飲めば美味しいかは酒の成分(分析値)だけでは何とも判断できません。香りや味わいなど酒の特性にあわせて、さらにはお召し上がりになる方のお好みに合うかどうかという点も大事です。きき酒によって、冷やすか燗にするか、どちら向きの酒かを確かめてみることも必要です。

オンザロックで日本酒を楽しむ

夏場の気温が高くなる時期には、氷を入れてオンザロックの日本酒で涼感を楽しめます。オンザロック用の商品も発売されており、氷が溶けだして酒の温度が低くなっても、水っぽさや苦みを感じさせないよう、甘味や旨味など味わいのバランスを整えるなどの工夫が施されています。
夏場の涼をとるだけでなく、冬場に人気の鍋料理にもマッチします。熱々の鍋料理で火照った口の中を、氷で冷やした清涼感のある日本酒でクールダウンさせることで、次の一口も美味しく楽しめます。月桂冠の調査によると、年間を通じて日本酒に氷を入れて飲む意向が見られ、鍋料理には冷やした日本酒を合わせるのが良いと考える方も多数おられることがわかりました。
日本酒のオンザロックには古い歴史があります。『日本書紀』には「氷室(ひむろ)の氷、熱き月に当たりて、水酒に浸して用ふ」とあり、山中から切り出した 氷を氷室に埋めておき、夏に都へ運び出し、氷を入れて酒を楽しんでいたようです。氷室跡は、奈良時代の長屋王邸宅跡から発見された木簡をもとに近年発掘されています。

【参考・引用文献】
  • 日本酒造組合中央会ホームページ

昭和初期の冷用酒

「冷用」をうたったびん詰清酒が売り出されたのは、昭和初期ごろから。月桂冠の昭和9年度『壜詰積送簿』には「冷用月桂冠7dl壜詰1/2打(6本)入10函」と記帳されており、これが初見。

当時のチラシには「冷用美酒月桂冠は、最新式冷凍装置の昭和蔵で、月桂冠イースト(酵母)によって新たに夏向きのお酒として醸出せられた純粋の生一本。実に待望久しき冷用酒、美味芳烈…」と、熱のこもったコピーが続きます。「召し上がり方」は「井戸に釣るか、冷蔵庫へ」とし、「御下物(酒肴)は別に要らないが、果物などは結構でございます」と、斬新な楽しみ方も紹介されています。

冷用酒をアピールする昭和初期のチラシ▲冷用酒をアピールする昭和初期のチラシ。別のチラシには、床几(しょうぎ)の上で冷酒を楽しむ様子が描かれており、当時から、夏場に涼をとるため、冷やして酒が飲まれていたことが伺える

冷酒販売用冷蔵庫

昭和初期、酒を冷やして飲むために、冷酒用の冷蔵庫が小売店あるいは料飲店の店頭で使われていたようです。「冷用美酒・月桂冠」と、冷やしてうまい酒であることを積極的にPRしていました。夏でも燗があたりまえの時代のこと、さぞかし注目を集めたことでしょう。

外側は槇材で囲い、その内側は真ちゅう板で保護。内部にはホーロー製の容器(約10リットル)が据え付けられ、板とホーローのすき間に氷を入れて冷やす仕掛け。ホーローの底部は外側のガラス管につながっていて液面がわかるようになっています。冷えた酒はこのガラス管の下部にあるコックから取り出し、氷が溶けてくると一方のガラス管で水位がわかる仕組みになっています。

冷酒販売用冷蔵庫▲冷酒販売用冷蔵庫。ふたをした高さ75㎝、直径34㎝

夏場の需要をねらった冷用の酒はその後も売り出されましたが、本格的に開発されたのは「シルバー月桂冠」(1976年)からです。その後、常温流通の生酒(1984年)、生貯蔵酒、そして今日では吟醸酒や「冷酒」と名のつく商品など、多くの商品が上市され、冷やして楽しまれるようになっています。