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左から、大吟醸(720mLびん詰)、山田錦特別純米(同)、特撰(同、本醸造)▲特定名称酒の数々。左から、大吟醸(720mLびん詰)、山田錦特別純米(同)、特撰(同、本醸造)

吟醸、純米、本醸造とは、どのような酒ですか?
香り・コク、特定名称の各製法で生み出される特徴ある酒質

清酒を知る - さざまな酒のタイプ

「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」は特定名称酒と呼ばれ、それぞれの呼称を商品に表示するための原料・製造方法などの条件が定められています。各製法には特徴があり、「吟醸酒」は、4割以上精白(精米歩合60%以下に)した白米を原料に用い、低温(5~10度ほど)で長期間(およそ30日以上)発酵させるなど、特別に吟味して製造します(吟醸造り)。「純米酒」は、米・米こうじ・水を原料に製造し、醸造アルコールは使用しない酒です。「本醸造酒」は、3割以上精白(精米歩合70%以下に)した白米を原料に用いて造ります。製法による特徴が酒質に表れ、多くの商品では、吟醸酒は華やかな香りと淡麗ですっきりした上品な味わい、純米酒は旨味やコク、ふくよかさなどの特徴が強く出た比較的濃醇なタイプ、本醸造酒は純米酒に近い風味を持っています。

吟醸、純米、本醸造とは?

「吟醸酒」とは

フレッシュで華やかな香りと繊細な味わいを特徴とする日本酒です。多くは、すっきりした淡麗な味わいで、のどごしは滑らかですが、中には濃醇で奥深い味わいを持つ味吟醸と呼ぶタイプもあります。
吟醸酒は、米を重量にして4割以上(精米歩合60%以下に)削った白米を原料に用い、低温で長期間発酵させていきます。この製法を「吟醸造り」といいます。
吟醸酒の中でも、米を5割以上(精米歩合50%以下に)削ったものは「大吟醸酒」と表示されています。醸造アルコールを使用しないものは「純米吟醸酒」、その中で「大吟醸酒」に当てはまるものは「純米大吟醸酒」と呼びます。

吟醸造り専用の優良酵母の選抜や、原料米の処理、発酵の管理から、びん詰・出荷に至るまでの高度な吟醸造りに関わる技術が開発され、それが普及することによって商品化が可能となりました。高度精白米によって酵母に対する栄養分をわざと不足させ、また低温で発酵させるなど、酵母にとってきびしい条件の中で製造します。発酵途上で数多くの高級アルコールを生成させ、それらが酸と結合して、デリシャスリンゴやバナナのようなくだものを思わせる独特の芳香をもった数多くのエステルが生成されます。このフルーティーで華やかな香り(吟醸香)が、吟醸酒を特徴づけるものとなっています。吟醸酒のフルーティーな芳香と繊細な風味を楽しむために、「冷やして」または「ぬる燗」でお召し上がりいただくことをおすすめします。

「純米酒」とは

米、米こうじ、水を原料にして製造した日本酒です。醸造アルコールを使用しないため、旨味やコク、ふくよかさなどの特徴の強く出た、濃醇タイプの酒が多く見られます。純米酒の多くは濃醇な酒ですが、最近では酒造技術の進歩により、コクのあるタイプから軽快ですっきりしたソフトなタイプまで、さまざまな酒質の純米酒が商品化されています。

純米酒には以前、「精米歩合70%以下」(玄米の表層を重量にして30%以上削り取る)との製法の要件がありましたが、2004年1月1日からは精米歩合に関わらず、米とこうじ米だけを原料にした清酒であれば、特定名称の「純米酒」が表示できることになりました。このことにより、精米歩合ごとの特徴を生かした純米酒が商品化されています。

「本醸造酒」とは

純米酒に近い香りと風味を持ち、しかも純米よりも淡麗でまろやかな日本酒です。米の外側を3割以上(精米歩合70%以下)に削った白米を原料に用いて造ります。4割以上(精米歩合60%以下)に削った白米を用いるものは「特別本醸造酒」と表示しています。味のバランスを整えるために用いる醸造アルコールの添加量は、原料に用いる白米の総重量の10%未満と、普通酒に比べ少ない量となっています。

おちょこ

特定名称を表示するための条件

吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの各呼称を商品に表示するための、原料や製造方法などの条件が、「清酒の製法品質表示基準」として定められています。たとえば、使用原料(3等以上に格付された玄米)、精米歩合、こうじ米の使用割合(白米重量の15%以上)、香味等の要件、吟醸酒・本醸造酒では醸造アルコールの使用量(白米重量の10%以下)などが定められています。
このような条件で造られた商品に、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」などの名称が表示されているのです。これら特定名称酒以外のものは「普通酒」「一般酒」と呼んでいます。

特定名称 水以外の使用原料 精米歩合 こうじ米使用歩合 その他の要件
吟醸酒 米、米こうじ
醸造アルコール
60パーセント以下 15パーセント以上 吟醸造りをしたもので、固有の香味及び色沢が良好なもの
純米酒 米、米こうじ 15パーセント以上 香味及び色沢が良好なもの
本醸造酒 米、米こうじ
醸造アルコール
70パーセント以下 15パーセント以上 香味及び色沢が良好なもの

次の5つの特定名称については、一定の要件下で表示が認められています。

特定名称 水以外の使用原料 精米歩合 こうじ米使用歩合 その他の要件
大吟醸酒 米、米こうじ
醸造アルコール
50パーセント以下 15パーセント以上 吟醸造りをしたもので、固有の香味及び色沢が良好なもの
純米吟醸酒 米、米こうじ 60パーセント以下 15パーセント以上 吟醸造りをしたもので、固有の香味及び色沢が良好なもの
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50パーセント以下 15パーセント以上 吟醸造りをしたもので、固有の香味及び色沢が良好なもの
特別純米酒 米、米こうじ 60パーセント以下
または特別な製造方法(要説明表示)
15パーセント以上 香味及び色沢が良好なもの
特別本醸造酒 米、米こうじ
醸造アルコール
60パーセント以下
または特別な製造方法(要説明表示)
15パーセント以上 香味及び色沢が良好なもの

以上、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」「大吟醸酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「特別純米酒」「特別本醸造酒」の8種類以外は特定名称酒の表示として認められていません(たとえば「純米特別大吟醸酒」や「本醸造特別酒」など) 。

特定名称以外の清酒の容器・包装に特定名称の表示をしたり、特定名称に類似する用語を表示することはできません。但し、類似する用語でも特定名称の酒に該当しないことが明確にわかる説明(8ポイント以上の大きさの活字で、類似用語に近接する場所に表示)がされている場合は表示が可能です。

上記要件のほか、特定名称酒に共通して適用される条件は次のとおりです。

  • 農産物検査法により、3等以上に格付けされた玄米、またはこれに相当する玄米を精米して使用する。
  • 醸造アルコールについては、アルコール分95パーセント換算で、白米重量の10パーセントを超えないものに限る。
  • すべての特定名称酒において、精米歩合を原材料名と近接する場所へ1パーセントきざみで表示する。

「清酒の製法品質表示基準」の制定・改正

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づき1989年11月に定められ、1990年4月から適用されました。2003年10月、特定名称酒の要件に「こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合)15パーセント以上」を追加する、純米酒の製法品質要件から「精米歩合70パーセント以下」(玄米を30パーセント以上削り取る)を削除する、すべての特定名称酒において、原材料名と近接する場所へ精米歩合を1%きざみで表記する、など基準の一部が改正され、2004年1月から適用されています。

【参考・引用文献】
  • 国税庁 『「清酒の製法品質表示基準」の概要』 (2003年10月)