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「飲酒すると太りやすい」と聞きますが本当ですか?
⇒酒だけでは太る要因にならない、いっしょに食べる肴やカロリーの総量を考えて

よくいただくご質問 - [Q&A]健康、成分、適量、カロリー

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酒類(アルコール分)を摂取すると、太るのではないかと危惧される向きがあるかもしれません。しかし、太る、太らないは総摂取カロリーの問題であり、酒の成分だけでなく、酒といっしょに摂る食事やつまみとの関係で考えなければなりません。アルコールには食欲増進作用があるため、食べ過ぎによる肥満にも注意しなければなりません。

酒だけでは太る要因にならない

酒の成分や機能の一面だけでなく、食事や運動も含めて栄養摂取を考えなければなりません。アメリカの医学者グルーショーらが、約1万人を対象に飲酒者の栄養素の摂取量を調べたところ、アルコール摂取量の増加は肥満とは結びつかないと結論されています。また、アルコールが太る要因かどうかを調べた研究では、食事中のエネルギー量を減少させ、アルコールでその分のエネルギーを補填しても体重は維持できず、太る要因にはならないことが確かめられています(糸川嘉則ら編『アルコールと栄養』光生館、1992年)。

いっしょに食べる肴やカロリーの総量を考えて

ただし、酒には食欲増進作用があるため、つまみを食べすぎると過剰なカロリーを摂ることにもなります。酒を飲んだ後に食べるお茶漬やラーメンもカロリーの総量を考えて、食べるかどうかを検討するのがよいでしょう。それ以前に、菓子やジュースなどの摂り過ぎにも注意してください。一日の摂取カロリーの目安は、「標準体重×25」以内です[標準体重(kg)は=身長(m)×身長(m)×22で算出できます]。

酒類では、アルコール度数の高いものほどカロリーは高く、日本酒1合、ウィスキーシングル2杯、ビール大1本が、それぞれご飯1杯分に当たります。
また日本酒の場合、糖分を1から2パーセント程度含んでいますが、「チューハイ」や「カクテル」の割り材にも糖分が含まれていることを知っておいてください。蒸留酒に糖分を10パーセントほど含むフルーツ果汁、清涼飲料で割って飲まれることになれば、その分、糖分の摂取量も増えてしまい、カロリーも高くなります。

酒と食事をバランスよく

アルコールを摂取することにより栄養素の代謝が変化します。酒だけを飲んでいては栄養素が偏ります。飲酒する際には次のような点に留意する必要があります。

  • タンパク質、脂肪、炭水化物の摂取量の比率が極端に変化しないようにする。
  • ビタミン、ミネラルを十分にとる。
  • 適量の飲酒にする。

このように、飲酒は適量にして、偏りなく栄養素を摂ることが重要です。たとえば刺身、焼魚、焼鳥、豆腐、納豆、菜っ葉など日本酒との相性が良い和食は、栄養素のバランスをとりやすく、酒の肴にするには理想的です。食品中のタンパク質やビタミンなどの栄養素は、肝臓へのエネルギー補給につながり、アルコールの分解も助けます。

酒のカロリー

アルコールは1グラムあたり、7.1kcal(キロカロリー)のエネルギーを生産します。糖質やタンパク質は4kcal、脂肪は9kcalとなっていますので、アルコールはかなり高い熱量を持っていることがわかります。
ちなみに各酒類の100ミリリットルあたりのカロリー(kcal)は、日本酒が105から110、ビールが40から70、ワインが80から100、焼酎が110から200、ウイスキーが225から250という値です。酒のカロリーの値は主にアルコール分に由来するため、アルコール度数が高いとカロリーの値も高くなります。
月桂冠の主な商品の100ミリリットルあたりのカロリーは、「上撰」が108kcal、「つき」が96kcal、「糖質ゼロ」が 79kcalとなっています。

糖尿病に「蒸溜酒は良いが、醸造酒は避けるべきだ」は俗説

「糖尿病に蒸溜酒は良いが、醸造酒は避けるべきだ」というのは俗説であり間違った情報です。なるほど、かつては食事療法で糖質の制限のみを言われ、蒸溜酒ならかまわないと認識されていました。最近の医学では、総摂取カロリーの制限が何よりも大切だとされています。「糖尿だからウイスキーにしてくれ」などという俗説に惑わされず、摂取したアルコールと食事をあわせたカロリー総量をコントロールすることが大事です。カロリー源としては、蒸溜酒のウイスキーや焼酎でも、醸造酒のワインや日本酒でも、アルコールの種類に関わらず差がありません。ただし、飲酒しても良いかどうかは医師の判断を仰いで下さい。

糖尿病は膵臓(すいぞう)のホルモンであるインシュリンが不足し、脂肪の分解が合成を上回ってしまうために起こる病気です。糖尿病の誘因としては遺伝的な要素もありますが、食べ過ぎや運動不足による肥満、ストレス、さらにカロリーの過剰摂取があげられます。

糖尿病や肥満を防止するにはエネルギーの摂取量を抑えること、適度に運動することが大切です。適量を考えた飲酒、健康な食生活、血液検査によるγ-GTPなどのチェックで身体の状態を確認することも大事です。

健康診断結果

酒の酸性度・アルカリ度と健康

食品は「酸性食品」と「アルカリ性食品」に分類されます。食品を燃焼させてできた灰分を水に溶解したとき、酸性を示すものを「酸性食品」、アルカリ性を示すものを「アルカリ性食品」といいます。米や麦などの穀物、肉や魚のような動物性食品は酸性食品に、野菜、果物、海草などはアルカリ性食品に分類されます。日本酒は「酸性食品」、ワインは「アルカリ性食品」ですが、いずれを飲酒しても体液の水素イオン濃度とは直接関係しません。

「酸性食品ばかり摂ると、pH(水素イオン濃度)がどんどん下がり体液が酸性になるのではないか」と思われがちですが、血液もほかの体液も酸性になる(pH7を下回る)ことはありません。 栄養学者の小池五郎博士は「毎日酸性食品ばかり食べ続けても、アルカリ性食品を食べ続けても体内のpHが変化することはない」と述べておられます。

人間の血液は動脈でpH7.4、静脈で7.35と弱アルカリ性を示します。血液が酸性化するといわれるように、運動などにより若干のpHの変動は見られます。例えば、呼吸を止めただけで乳酸が増えて中性(pH7)の方へ変化します。また、激しく運動した場合でも体液はpH7.26~7.28に変化しますが、直ちに体内の自動調節作用によって一定に保たれるようになっています。

【参考・引用文献】
  • キングスレー・エイミス、吉行淳之介・訳 『酒について』 講談社 1982
  • 栗山欣哉・大熊誠太郎 「アルコールの代謝と薬理作用(生体影響)」 『アルコールと栄養』 光生館 (1992年)
  • ジューニアス・アダムス(木下秀夫・訳) 『アルコール健康法』 光文社 1977
  • 田中潔 『アルコール長寿法 - 晩酌のすすめ - 』 共立出版 1985
  • 松木康夫 『百楽の長 酒と上手につきあう秘訣 - 毎日飲んで健康でいられる10ヶ条』 大和出版 1992
  • 斉藤義幸 「清酒の副産物の新しい生理機能」『日本醸造協会誌』 87(10) 705-710 1992
  • 光岡知足 『腸内菌の世界』 叢文社 1980
  • 太田剛雄、高木秀春、轟康一・岩野君夫、大場俊輝 「清酒中に存在する抗酸化物質」『日本醸造協会誌』 87(12) 922-926 1992
  • 澤野泰治 「グルタチオン含有清酒の開発」『清酒酵母の研究』 清酒酵母研究会 128-133 1992
  • 印南敏、桐山修八 『食物繊維』 第一出版 1982
  • 芦田優子、斉藤義幸、川戸章嗣、今安聰 「米由来の食物繊維の性質と機能」『日本農芸化学会誌』 66(8) 1233-1240 1992
  • 奥田拓道、前田信治 酒造副生産物(酒粕)に関する研究・報告書』 日本酒造組合中央会委託研究 1992
  • 清水章史、山田秀明 「清酒酵母を用いるアデノシルメチニオンの生産」『清酒酵母の研究』 清酒酵母研究会 163-168 1992
  • 阿部啓子、荒井綜一 「コメ種子のシステインプロテアーゼインヒビター・オリザシスタチン」『植物細胞工学会誌』 3 193-199 1991
  • 日本食品工業倶楽部・編 『食品の栄養と生体機能』 クリエイティブジャパン 1991
  • 逸見武光 「酒と精神医学」『東京大学公開講座・酒』 東京大学出版会 129-158 1976
  • 日本酒造組合中央会 「特集:酒と健康」『酒造情報』 1978
  • キリンビール(株)、キリンシーグラム(株) 『お酒と健康ABC辞典』 1996
  • 今安聰・編著 『秘められた清酒のヘルシー効果』 地球社 1997
  • 社団法人アルコール健康医学協会 『適性飲酒の手引き』 1991
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