全国新酒鑑評会と月桂冠
出品で培った酒造技術の蓄積で、全体の酒質をレベルアップ
清酒を知る - 清酒産業
全国新酒鑑評会は、全国規模で新酒の出来栄えを競い合う唯一のコンテストです。1911年(明治44 年)に第1 回が開催されて以来の歴史があり、今日まで続いています。全国の酒造家が、鑑評会を最高峰の目標として、技術の粋を結集して挑戦し、入賞酒の中でも特に優秀と認められたものに授与される「金賞」の受賞を目指します。現在、独立行政法人酒類総合研究所(旧・国税庁醸造研究所)と日本酒造組合中央会が共催し、毎年「日本酒フェア」として、一般公開で金賞酒・入賞酒のきき酒会が実施されています。酒愛好家、飲食・販売業者からの注目度も高いものとなっています。
第1回鑑評会(明治44年)で第1位
全国新酒鑑評会で、月桂冠は1911年(明治44年)開催の第1回鑑評会の第1位になり、その後も優秀な成績をおさめ、1929年(昭和4年)には1位から3位まで独占しました(現在、順位は公開されていません)。ほかにも出品した数々の品評会で上位に入賞し、品質第一を旨とする月桂冠の酒銘が全国に知られていきました。
第二次世界大戦後、月桂冠では全国新酒鑑評会への出品を長らく控えていましたが、昭和55酒造年度から再開、その年に「金賞」を受賞することができました。以来、月桂冠の各蔵から出品を継続し、金賞の延べ受賞数では群を抜いています。特に、平成3酒造年度と平成4酒造年度、平成8酒造年度など、出品した7蔵(大手一号蔵、大手二号蔵、昭和蔵、北一号蔵、北二号蔵、内蔵、灘蔵)全てが金賞を受賞したこともありました。
※酒造年度(BY=brewery year):7月1日から翌年6月30日までの1年間。
近年では、平成15酒造年度、平成19酒造年度、平成24酒造年度、平成26酒造年度、平成28酒造年度、平成29酒造年度、平成30酒造年度で、出品した4蔵(大手一号蔵、大手二号蔵、内蔵、昭和蔵)全てが金賞を受賞しています。
月桂冠の酒造りの特徴
月桂冠では1909年(明治42年)、清酒メーカーで初めてとなる研究所を創設しました。国の酒類研究機関である大蔵省醸造試験所が1904年(明治37年)に設立されたばかりで、当時、企業研究所としてはひじょうに珍しいものでした。月桂冠では研究所の創設により、いちはやく酒造りに科学技術を導入し、清酒の品質を向上させていく始まりとなりました。以来、研究所は常に主力酒蔵の構内にを置き、先端科学を実際の生産に応用するという体制を敷き、品質向上を目指してきました。その間、樽詰酒全盛の明治期には、びん詰酒の商品化に力を入れ始め、研究の成果により、防腐剤の入らない清酒の発売(1911年・明治44年)、清酒の光線による着色を防止する褐色びんの採用(1928年・昭和3年)などを進めました。
▲初代の大倉酒造研究所(現・月桂冠総合研究所)の建物(左側の洋館、撮影は大正期、現在の京都市伏見区下板橋町)。醸造りに科学的技術を導入し、清酒の品質を向上させていく始まりとなった
1961年(昭和36年)には、四季醸造蔵システムを備えた酒蔵を日本で初めて完成。以来、各流派の杜氏による寒造りと、年間雇用の社員による四季醸造との両輪で酒造りに取り組み、寒造りを担う各流派の杜氏たちと技を競い合いながら、社員への技術移転に取り組みました。現在では、杜氏に負けない技術を持った社員の酒造技能者が多数育っています。
全国新酒鑑評会への出品を続けるなかで、酒造りの基本を常に見直すと共に、試行錯誤しながら培ってきた酒造技術の蓄積は、月桂冠全体の酒質レベルを向上させるものとなっています。
月桂冠株式会社・近年の全国新酒鑑評会における金賞受賞歴
酒造年度 | 大手一号蔵 | 大手二号蔵 | 内蔵 | 昭和蔵 | 北蔵 (旧・北一号蔵、※注3) |
北二号蔵 (※注1) |
灘蔵 (※注2) |
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昭和55年 | ─ | / | ─ | ☆ | / | ─ | / |
昭和56年 | ─ | ☆ | / | ☆ | / | ☆ | / |
昭和57年 | ─ | ☆ | / | ☆ | / | ─ | / |
昭和58年 | ☆ | ☆ | / | ─ | ☆ | ☆ | / |
昭和59年 | ─ | ☆ | / | ☆ | ─ | ☆ | / |
昭和60年 | ─ | ─ | ─ | ─ | ☆ | ☆ | / |
昭和61年 | ☆ | ☆ | ─ | ─ | ─ | ☆ | ☆ |
昭和62年 | ─ | ─ | ─ | ─ | ☆ | ☆ | ─ |
昭和63年 | ☆ | ☆ | ─ | ○ | ☆ | ─ | ─ |
平成1年 | ─ | ☆ | ☆ | ☆ | ○ | ☆ | ─ |
平成2年 | ☆ | ☆ | ○ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ |
平成3年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ |
平成4年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ |
平成5年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ─ | ☆ | ─ |
平成6年 | 醸造試験所の東広島への移転により中止 | ||||||
平成7年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ─ | 休止 |
平成8年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ |
平成9年 | ○ | ☆ | ○ | ○ | ☆ | ☆ | ─ |
平成10年 | ☆ | ○ | ○ | ○ | ☆ | ☆ | ☆ |
平成11年 | ○ | ☆ | ☆ | ─ | ☆ | 休止 | ─ |
平成12年 | ☆ | ○ | ○ | ☆ | ☆ | 休止 | ○ |
平成13年 | ☆ | ─ | ☆ | ○ | ☆ | 休止 | ☆ |
平成14年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ─ | 休止 | 休造 |
平成15年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成16年 | ○ | ○ | ○ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成17年 | ─ | ☆ | ─ | ─ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成18年 | ─ | ─ | ○ | ─ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成19年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成20年 | ○ | ☆ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成21年 | ○ | ☆ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成22年 | ☆ | ○ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成23年 | ☆ | ─ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成24年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成25年 | ☆ | ☆ | ○ | ○ | 休造 | 休止 | 休止 |
平成26年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休止 | 休止 | 休止 |
平成27年 | ─ | ☆ | ○ | ☆ | 休止 | 休止 | 休止 |
平成28年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休止 | 休止 | 休止 |
平成29年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休止 | 休止 | 休止 |
平成30年 | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | 休止 | 休止 | 休止 |
令和元年 | ○(※注4) | ○(※注4) | ○(※注4) | / | 休止 | 休止 | 休止 |
令和2年 | - | ☆ | ○ | / | 休止 | 休止 | 休止 |
令和3年 | ○ | / | ☆ | / | 休止 | 休止 | 休止 |
令和4年 | ☆ | / | ☆ | / | 休止 | 休止 | 休止 |
令和5年 | ☆ | / | ○ | / | 休止 | 休止 | 休止 |
- 「☆」は金賞受賞、「○」は入賞、「─」は入賞せず、「/」は出品せず。
- 平成6酒造年度の鑑評会は、醸造研究所移転のため中止。
- 酒造年度(BY=brewery year):7月1日から翌年6月30日までの1年間。
- ※注1:北二号蔵は平成11酒造年度から醸造を休止しています。
- ※注2:灘蔵は平成15酒造年度から醸造を休止しています。
- ※注3:北蔵は平成26酒造年度から醸造を休止しています。
- ※注4:令和元酒造年度の鑑評会は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、金賞酒を選定する決審が中止になりました(予審の結果をもって入賞酒のみを決定)。