「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」とは何を表す数値ですか?
甘辛と酒質
よくいただくご質問 - [Q&A]日本酒全般
日本酒の香味は、甘味、酸味、辛味、苦味、渋味といった成分が複雑にからみ合い、うま味や香りも一体となって構成されています。日本酒度・酸度・アミノ酸度などの分析値は、発酵中の成分の変化を管理するために簡易な測定法を使って導かれたもので、日本酒どうしを比較する際の目安となります。
日本酒度・酸度・アミノ酸度
日本酒度
甘辛を知るための目安となる数値で、水の比重をゼロ(±0)としたとき、酒の比重はいくらであるかを数値化したものです。糖分を中心とするエキス分が多い酒ほど重くなりマイナス(-)に、エキス分が少ない酒ほど軽くなりプラス(+)に傾きます。日本酒度のマイナスの数字が大きいほど濃醇で甘く、プラスの数字が大きいほど淡麗で辛い傾向にあるといわれます。しかし甘辛の感じ方は、日本酒度だけでなく酸度にも影響され、そのバランスによって微妙に異なります。
酸度
酒の味に酸味や旨味をもたらす有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)の量を相対的にあらわす数値です。日本酒度が同じ酒で比べると、酸度が高いと甘味が打ち消され辛くて濃く、逆に酸度が低いと甘くて淡麗に感じます。
アミノ酸度
酒のコクや旨味のもとになるアミノ酸の量を相対的にあらわす数値です。日本酒には、アルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれています。
▲ボーメ度浮標(上)と日本酒度浮標(下)、酒の比重により発酵の進み具合、エキス分の溶け具合を把握する
辛口酒・甘口酒は、どのように造り分けられるか
酒の甘辛は、発酵工程での糖化と発酵のバランスによって自在にコントロールすることが可能です。日本酒は、米のデンプンが麹の酵素によって糖化され、その糖が酵母によって順次アルコールに変えられていく「並行複発酵」により醸造されます。麹による糖化作用を強め、酵母によるアルコール発酵を抑えれば甘口となります。逆に、糖化を抑制しアルコール発酵を進めると、生成した糖分はほとんどアルコールに変わり、辛口の酒になります。
酒の成分と味わいの関係
その酒の甘辛を、きき酒で判定することは簡単ではありません。酒ききのベテランでさえ、酒の甘辛をはっきりときき分けることは、なかなか難しいものです。エキス分が同じ酒でも、酸が多ければ辛く感じ、逆に酸が少なければ甘く感じます。香りが高い酒はやや辛く感じます。ゴク味やコクと表現される複雑な濃醇味の影響によっても甘辛の感じ方は左右されます。さらに、人間の官能は、酒の温度や、きき酒の前に食べたものによって感じ方が異なってきます。熱燗、上燗、ぬる燗、あるいは冷やなど飲む際の温度の違いも甘辛の感じ方に影響します。同じ酒でも、甘いものを食べた後には酸っぱく辛いと感じ、酸っぱいものや辛いものを食べた後で飲むと甘く感じたりします。
日本酒度・酸度・アミノ酸度の数値により、どのようなタイプの酒かを推察することも可能ですが、例えば甘辛の感じ方は、その目安になると言われている日本酒度だけでなく、アルコール分、酸度や香気成分などにも影響されます。そのバランスによって、日本酒度だけを目安にした甘辛の推定と実際とは微妙に異なる点を考慮する必要があります。